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8日目

しずかさんがタカシの経理をやりだして一か月

全然変化無し...そりゃそうだよね...

普通はそうだよ...


数日後...


あれ...なにこの空気...

わたしが他人でこのふたりが夫婦みたいな感じ...


これってもしや...証拠を確保しなきゃ!

急に想像が現実味を帯びて来て狼狽する


ん~やっぱり気のせいか残念...えっ残念!

わたし望んでるの...二人が関係を持つ事を...


浮気してて欲しく無い…イヤしてて欲しい

ん~ダメ元でラストもう一回...


しずかの声(もう…もう我慢出来ない…

入れてください…オチソポください…

もう入れて~)


タカシの声(しずかのオマソコ最高~)


「やっぱり...」嬉しくないけど嬉しい...もー複雑...

でも、うわっ…しずかさんエグい


今度、タクヤ君が誘って来たら...

その時はわたし...


再生ボタンを止めた時、

エリの胸には怒りも悲しみもなかった。

むしろ、不思議なほど冷静だった。


ただ、一つの鎖が静かに外れた。

それだけだった。


次の日の帰り道。

エリはファミレスを出て、自転車を押しながら

タクヤの家の前で足を止める


(何やってるんだろ、私……)


でも、どこかでわかっていた。

“会いたい”のではなく、“帰りたくない”のだと。


タカシのいる家には、もう心が置かれていない。

その確信が、エリの足取りを止めた。


翌日。


15分の時間。

エリの表情がいつもと違うことに、

タクヤはすぐに気づいた。


タクヤ「エリさん……なにかあったんですか?」


少し、間を置いてからエリは答えた。


エリ「……録音してたの。家で...

夫と、しずかさんが……やっぱり、ね」


静かな声だった。

タクヤの表情が一瞬強張りかけたのを、エリが制した。


エリ「いいの。なんかもう……

怒る気にもなれなかった。

たぶん、そうなってくれるのを、

どこかで望んでたのかもね。」


エリは真っ直ぐタクヤを見る…


風が強かった。髪が乱れて、

エリの顔がよく見えた。


エリ「タクヤくん...まだ気持ち...変わってない?」


タクヤは驚いたように、

でもすぐに目を見つめ返した。


タクヤ「変わるわけないです。毎日、

ここでエリさんに会うために生きてます」


彼の目は、もう少年ではなかった。

まっすぐで、でもどこか切実だった。


エリは、視線をそらさなかった。


エリ「……ありがとう。まだ怖い。

でも...今日だけは、ちょっと甘えたい」


彼女の手が、タクヤの手に重なる。

指先が少し震えていたけれど、

タクヤはその手を強く握り返さなかった。

ただ、静かに包み込むように添えた。


そして、その15分の終わり際。

ふとした間に、彼女の頬が近づく。


タクヤが息をのんだ瞬間――

エリが、そっとキスをした...


ほんの一秒の口づけ...

けれど、それは1ヶ月分の迷いが解けた、答えだった。


タクヤは、何も言わなかった。

言葉なんていらない。

この15分が、本当に意味を持つようになった瞬間を、

ただ抱きしめるように味わっていた。


エリの胸の奥にあった、

“してはいけない”という罪の意識が、

“していいのかもしれない”という希望に変わっていく。


そして、彼女の中の本当の恋が、

ようやく始まろうとしていた。



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