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7日目

エリの心は日ごとに複雑になっていった。


(なんで、私はこの子のことばかり考えてるんだろう)


家に帰っても、夫のタカシの顔が上滑りする。

仕事の話、子供の学校の連絡、晩御飯。

それらをこなす自分の身体だけが機械のように動き、

心はどこか別の場所にいた。


たとえば、ファミレスの裏口にいるときの自分。

タクヤの何気ない言葉に、笑ってしまったあの瞬間。

何もかもを忘れていられた、わずかな時間。


(もし、タクヤがもう来なくなったら?)


ふと浮かんだその考えに、

胸の奥が締め付けられた。

あり得ないと思っていたはずの感情が、

現実の重さを帯びてきていた。


一週間が過ぎ、二週間目に入った頃。

エリは、15分間を「会うのが怖い」と思う日もあれば、

「今日はどんな顔で来るだろう」

と期待してしまう日もあることに気づいた。


タクヤは、何も焦らなかった。

告白した翌日も、翌週も、ただ隣に座って、

エリの話に耳を傾けていた。


「最近、笑うようになりましたね、エリさん」


ふとタクヤが言った。

エリは驚いた。自分では気づいていなかった。

けれどその言葉に、何かがほどけた気がした。


(私、笑ってたんだ)


(この子の前でだけ)


エリは、はっきりと自覚し始めていた。

夫の隣で感じる「虚しさ」と、

タクヤの隣で感じる「温もり」の違いを。


だが、だからこそ踏み出せない。

彼は若すぎる。純粋すぎる。

自分が傷つけてしまうのではないかという恐怖が、

心を踏みとどまらせていた。


そんなとき、彼女は決断する。

このままでは踏ん切りがつかない。

だから...もし夫が浮気してくれたら、

自分の中の「罪」を正当化できるのではないかと。


しずか「聞いてもらえる?内職やってる会社が

     今月いっぱいで潰れるらしいんよ」


(そういえばタカシが経理出来る人探してたな...)


エリ「タカシ~なんか紹介出来る所ないん?」


(私何言ってんの...しずかさんをタカシに...)


無意識の行動だったが、

ずっと何かの切っ掛けを探してた気がする


浮気を誘導するという行為に、正義はなかった。

けれど、エリにとってそれは

自分を解放するための前進だった


旦那が浮気するのを心待ちにするの?

私…おかしくなってる…

まあ、そんな事になるわけ無いし…


もし、そんなことになったらわたし…

まあ、宝くじでも買ったようなものよ。


期待と言い訳…エリの心は混沌としていた





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