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6日目

あの日。

タクヤの真っ直ぐな眼差しが、

エリの胸にまっすぐ突き刺さった。


「……エリさんが、好きなんです」


声が、思った以上に震えていなかったのが印象的だった。

彼は、冗談を言っているわけではなかった。

むしろ、真剣さが過ぎて――怖かった。


エリは、少し笑って返した。

「ありがとう。でも……そういうのは、

年上の女に、てか人妻言うときには

気をつけなきゃダメだよ?」


タクヤはそれ以上何も言わなかった。

ただ、俯いて頷いただけ。


(ああ……ごめん)


心の中でつぶやいた。

本当は、あんなに軽く流せるほど、

動揺していなかったわけじゃない。


心臓はひどく早く脈打っていた。

あんな真っ直ぐな好意を向けられたのは、

何年ぶりだっただろう。


カズ「ほれみろ、フラれた~」

なぜかほっとした顔


タクヤ「いいんだよ、何も変わらないよ…」

フラれてもずっと好きな気持ちは変わらない


カズ「お前がいいなら良いんだけど…

真っ直ぐな奴だなぁ…猪突猛進って言うの?

将棋で言うと香車だな」


タクヤ「じじくさいぞ、カズ…同い年のくせに」

友達との軽口で気が楽になる


(好きでい続けたら、そのうちに振り向いてくれないかなぁ)


それからの15分が、エリにとっては「試される時間」になった。

いつも通りに振る舞うふりをする自分と、

タクヤの視線に、少しだけ胸が騒ぐ自分が、毎日戦っていた。


笑顔の裏で、心は波打っていた。

「人妻で、年上で、子持ちの私に

……本気で恋なんてしないでよ!

いったい何歳離れていると思っているの...」


そう思っていたのに、

タクヤの態度は変わらなかった。


休憩の缶コーヒーを2本買って、何も言わずに1本を差し出す彼。

寒い日に、上着を脱いで貸そうとしてくる彼。

仕事終わりの疲れを察して、黙って隣に座ってくれる彼。


(優しいな……)


気づけば、タクヤの気配を探している自分がいた。

何も言わずに横にいてくれるその距離が、

今のエリにはちょうどよかった。


タカシとは違う。

いや、夫婦と他人の違いではない。

“関係の軽さ”でもなく、“誠実さの質”が違った。


タクヤの手が、少しだけエリの指先に触れた日。

エリはふいに手を引いた。

でもその夜、自分の手をじっと見つめていた。


(……この手、覚えてる)


ほんの一瞬の触れ合いなのに、体が忘れられなかった。

もう何年も消えていた体の火照り...


タカシによって完全に消えていた性欲の火種

今はまだ薄い煙が立ったぐらいの事だが

大火事の最初の始まりも同じ最初の起点...



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