13日目
布団の中に入っても考える事は
タクヤの事ばかり、そのうち眠りに落ちた…
夢の中で、エリは何も着ていなかった。
水の中のような静けさ。
肌には涼しさではなく、
温かな湿度がまとわりついていた。
そこはベッドでも、現実の部屋でもない。
ただ、タクヤの肌の匂いだけが、
どこかから漂っていた。
細い指先が、自分の胸をなぞる。
なぜ触れられているのか、
どうしてそうしているのか、
夢の中では何も疑問に思わなかった。
(これは……わたしの欲望?)
後ろから、彼の手がそっと腰に触れた。
驚く暇もなく、唇が首筋にふれた。
ちゅっ、と小さな音がして、
ゾクリと身体が震えた。
やめて、と言えなかった。
言いたくなかった。
柔らかく絡む舌、喉を這う唇、
そのすべてが心地よく、罪で、快感だった。
脚を少し開かれるたび、
肌と肌の間に溜まった熱が、
吐息とともに溢れていく。
見えないはずのタクヤの瞳が、
自分の奥を見透かすように感じられた。
ふいに、自分から身体を反らし、
後ろへと倒れていった。
彼の腕に包まれながら、
柔らかな舌が胸元に吸いつき、
乳首を舐める感触が、現実よりもリアルだった。
その舌の感触が、
目覚めた後の胸にも、
ずっと残っているようだった。
唇が重なった。
舌が触れた。
ああっ…
喘ぎが漏れた。誰も聞いていないのに、
恥ずかしくてたまらないのに、
その声は夢の中でどこまでも透き通って響いた。
その瞬間――
腰の奥で、小さな破裂音のようなものがした。
(ダメ……こんなの、もう……)
けれどタクヤの囁きが耳に届いた。
「……全部、俺にちょうだい」
エリは夢の中で泣いた。
欲望の中で、罪悪感が波紋のように広がっていく。
でもそれ以上に、彼に触れてほしいという衝動が、
全身に満ちていた。
目を覚ました時、
ショーツの奥が濡れているのが分かった。
薄明かりの中、エリは仰向けのまま目を閉じる。
(わたし…欲情してる…)
でもそれは恐怖ではなかった。
むしろ、解放だった。
小さな火種だったものに火が起きた
彼に抱かれることへの罪と、悦び。
その境界線が、夢の中で曖昧になり
朝になっても、なお戻ってこなかった。