トレーニングの成果を試すため、いざ、一打席勝負!(打者視点)
※第6回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞参加作品です。キーワード『トレーニング』
「秋田ぁ!今日こそ打ってやるからな!」
俺、大野豊は、18.4m先のマウンドにいる女に話しかける
女の名前は秋田恵。小、中学校と同じチームで野球をやってきた、旧友で球友だ。
小学生の頃から、お互いのトレーニングの成果を試すために月に一度、河川敷でこうやって一打席勝負をしている。
「そんなこと言って、高校入ってから君、全然勝ててないよ……ね!」
投球動作に入りながら挑発してくる恵。
頭に血が昇りそうになるが、その状態で勝てるほどコイツは甘い相手じゃない。心は熱く、頭の中は冷静に……
「うるせー!」
パシーン
な、何とか打てた。
今月も必死にトレーニングしといて良かった。
けど……柵越えはまだまだ遠い。
「あーあ、とうとう負けたちゃったか」
「……いや、今のは深い外野フライだ、俺の負けでいい」
「え、いいの?やったー!じゃあ、またハンバーガー奢ってもらうね」
無邪気に笑う恵。
これで9連敗だ。高校に入ってからは全敗。
ただ、これにはカラクリがある。俺は飛ばない竹バットを使っているし、多少いい当たりでもアウト判定にしているんだ。
この勝負で竹バットを使うことようになったきっかけは、中学校卒業の時。
中学の後半から俺に殆ど勝てなくなった恵が、卒業を期に、この一打席勝負は終わろうと言ったんだ。
そこで言ってやった。
『通算成績で勝ち逃げは許さん。ハンデとして飛ばない竹バットを使うし、負けたら奢ってやるから続けろ』
ってな。
まあ、元々高校からは一打席勝負は竹バットで行う予定だったしな。
特に理由はないけど
小学生の時に恵が
『好きなタイプ?竹バットで私からホームラン打てるくらい野球が上手な人かなぁ』
なんて言ってたのは、全然関係ないけど!
ただ、まあ今回も負けは負けだ。
仕方ない、奢ってやる。一緒に飯を食べながら、次こそはホームランを打てる様に色々と情報収集してやる。
あくまで野球のための情報収集だぞ
別に、一緒に食事したいわけじゃないんだからな!
そうだ、ホームランを打ったあかつきには、チョコレートでも作らせてやる。
毎月奢ってるし、その時は嫌とは言わせねーぞ
……今、おれの顔が顔が赤くなっているのは、負けて悔しいからに違いない。
普段、ぜんぜん女扱いしていないしな
恵が可愛い女子だとか、全然意識してないんだからな!
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