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第3章〜運命の人があなたならいいのに 現実はうまくいかない〜①

 一学期の期末テストが終了すると、いよいよ、オレたち高校生にとって、もっとも、待ち遠しい季節がやって来る。

 夏休みとその直前の数週間が、一年を通して、もっともワクワクする時期だということは、リア充な生徒たちばかりでなく、オレのような非リア充・三冠を達成しているような生徒ですら例外ではない。


 まして、今年は、その最初の時期に、夏祭りへの参加という大きなイベントが待っているのだ!


 結局のところ、自分のような非リアな人間にもこうしたイベントごとには、年齢相応にワクワクする感情があるのだというに驚きつつも、オレは、テスト明けの週末を心待ちにしていた。


 この二週間ばかりの間は、テスト前とテスト期間中ということもあり、ひばりヶ丘学院・演劇部の舞台を観劇した日の夜から、ワカ(ねえ)とは、話しが出来ていない。

 一方で、夏祭りへの参加が決まった直後、オレを人気の少ない昇降階段に呼び出した名和立夏(めいわりっか)も、あの日以降、妙なちょっかいを出したりしてこなかったので、その点については、安心してテスト期間を過ごすことができた。


 こうしたことと、ゲームプレイを封印した効果もあったのか、一学期の期末テストは、学年最上位とまでは言わないまでも、クラス内ではそれなりに上位に位置する満足いく結果で終えられた。


 良い結果すぎて目立つことはなく、逆に追試験の恐怖に怯えることもない、心穏やな気持ちで一学期の残りの期間を過ごすことが確定したオレは、気分上々で、夏祭り当日を迎えられる。

 期末テストが終わってから、夏祭りまでの短い期間、小田先輩が作成したグループLANEは、活況を呈していた。


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 小田栄一

 

 ところで、女子は当日、どんな

 服装で夏祭りに来るんだ?

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 たいせ〜

 

 先生!それについては、ボクから

 提言があります!

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 長洲さつき


 なんでしょう?

 言ってみたまえ、久々知くん

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 たいせ〜


 安西先生!

 女子の浴衣姿が見たいです_| ̄|○

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 長洲さつき


 いや、普通にキモくて無理だわ

 女子、どう思う?

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 葉月


 私も、必死すぎるはちょっと・・・

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 浦風弥生


 同じくです

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 小田栄一


 後輩よ、女子はこう言ってるが?

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 たいせ〜


 なんかこうして 

 ハッキリと拒否られたらさ―

 悪い やっぱ辛えわ 

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 立花宗重


 そりゃ、辛えでしょ

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 小田栄一


 ちゃんと言えたじゃねぇか

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 立花宗重


 聞けて良かった

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 たいせ〜


 みんな どうもな

 オレ おまえらのこと好きだわ

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 葉月


 盛り上がってるところ悪いけど……

 それ、ナニかのセリフなの?

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 長洲さつき


 葉月、ゲームヲタのオトコどもの

 戯言は無視しておきな

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 浦風弥生


 はい、スルー推奨です

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 夏祭り直前は、こんなLANEが流れていたが、陰キャラ・ゲームファンとして、中学・高校生活を過ごしてきた自分にとって、学内の他の生徒たちと、(オンライン上とは言え)こんな会話が楽しめるとは思ってもいなかった。


『F◯12』の主人公・ノ◯ト……いや、我がクラスの委員長・久々知大成(くくちたいせい)のセリフではないが、「オレ おまえらのこと好きだわ」と、本気で叫びたい気分だ(もちろん、叫ばないけど)。

 学内での立ち位置やキャラクターも、出身中学も異なる自分を普通に受け入れてくれるノリの良さに、彼らのコミュニケーション能力の高さを感じざるを得ない。


 最初は、腹黒いクラスメートに対する憤りから起こした行動ではあったが、いまは、上坂部や久々知、小田先輩たちとともに、遊びに出かけられる、ということが純粋に楽しみに思えてならなかった。


(これで、上坂部と久々知の仲が少しでも縮まってくれれば……)


 と、当初の目的を思い出しながら、そう考えながらも、残念なことにLANEのメッセージの流れから、女子三名の浴衣姿が拝めないことには、少しばかり(いや、実際にはかなり)無念さを感じながら、夏祭りを迎えることになったのだが――――――。


 その当日、集合場所である阪神浜崎(はんしんはまがさき)駅の駅前で、オレは、驚くべき光景を目にすることになった。

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