美しさの魔法
10歳の誕生日、私はおじいさんから魔法を受け継いだ。
それは美しさを求める魔法。
誰もを魅力し、目を止めて、安らぎを与えるもの。
「さあ、ほら、あなたの指や頭は知っているはずだから、安心するといいよ」
丸い30cmもあろう透明な玉の中には、澄んだ海の様な綺麗な青がボーッと光っていた。
角度を変えればグリーン、また角度を変えれば黄色。
それを観て、私に微笑みかける白髭のいかにも魔法使い、と言ったおじいさんは、どうやら私のひいひいひいひい…おじいさん。
らしい。
「手をかけて、ほら」
おじいさんは、私の手を優しく握って透明な玉へ近づけた。
私はその後どうすればいいのかは知らない。
「わ、私何をすればいいの?」
「何でも出来る、君がやりたいことをすればいいんだ」
おじいさんは何も戸惑う事もなく、私を優しい目で見ている。
おじいさんから目を離して、私は目の前の玉へ視線を写した。
綺麗な玉を、両手で覆うように囲み込む。
少しずつ少しずつ光が強くなって、玉の中の光の色がクルクルと変わる様になった。
フワッと何かが弾けるように、玉の中に色とりどりの鮮やかな小さな花が咲いた。
「美しいしい、君の心は本当に美しい」
おじいさんは嬉しそうにそう言った。
「魔法とは、つまり素晴らしいモノだ。何でもできる。だからこそ何でもしてはいけない。覚えておきなさい」
「・・・はい、おじいさん」