ペコの気持ち07
ペコの気持ち07
「ワンワン。」
「ニャーニャー。」
今、蟹津家では庭にいる犬と、ベランダの端でくつろいでいる猫が対話をしている。秋たち家族はしらないが、ペコとジジは昼間誰もいない時にこうして会話をすることはよくあることなのだ。
『毎日家の中で、秋ちゃんに撫でてもらっていいわよね。』
『この前も、秋ちゃんが一緒に寝てくれたよ。』
『まぁ、お姉ちゃんだから、それくらい譲ってあげるわよ。私も昔は一緒に寝たりしたけど、卒業したのよ。』
『そうなんだ。お姉ちゃんはやっぱりカッコ良いね。』
『解ればいいのよ。』
『ところで、最近高校にはいってから、友達が来なくなったよ。』
『中学の時は、いろんな友達が来て遊んでくれたものね。』
『うん。最近は司お兄ちゃんと麻美お姉ちゃんくらいしか来ないんだもん。』
『そうね。前に高校の友達と一緒に和美ちゃんだったかな?あの子は来たけど、他の子は忙しいのかしら?』
実際は、鈴や浩太は帰りに寄ったり、休日に少し来るには微妙な距離があり、電車通学になった二人は中々自転車で蟹津家に来ることができなくなっているだけなのだ。
それに比べて、司や麻美は家も近いため、休日にちょっとした時にちょくちょく遊びに来ている。
『一応電話とかは来てるみたいだよ。この前も鈴って子と電話してたもん。』
『そうなの。ちゃんと友達を大切にしてるのね。』
『あとね。お姉ちゃんが言っていた天敵はいっつも来るよ。』
『また、前みたいに甘えたんじゃないでしょうね?』
『ごめんね。秋ちゃんが抱っこして天敵さんに撫でて良いよって言ったんだもん。』
『ダメよ。あの男にだけは心を開いちゃダメなのよ。あの男は、秋ちゃんを奪う悪い男なんだから、前にも話したでしょ?』
『うん。お姉ちゃんとデートに出かけている時に邪魔したり、とにかくすっごい悪い人なんでしょ?』
『そうよ。あの竜って男は本当に極悪人なんだから。』
ペコの中での竜という人物が完全なる悪役になっているが、それは単なる嫉妬であって、竜がペコに対して悪さをしたことなど一度もない。
『ねぇねぇ。じゃあ、秋ちゃんはあの司っていう男の子と結婚するの?』
『ば、まだ早いわよ。秋ちゃんはまだ高校生なんだから、誰とも結婚しないの。』
『そうなんだ。天敵さんと司さん以外の男の子で秋ちゃんとすっごく仲がよさそうな子っていなかったから、司さんと結婚するんだと思ってた。』
『まだまだおこちゃまね。司くんと麻美ちゃんは付き合ってるのよ。だから、結婚するのは司くんと麻美ちゃんなの。』
『そうなんだ。あれ?じゃあ、天敵さんと秋ちゃんが結婚するんじゃないの?』
『そうなのよね。』
『悪者に秋ちゃんが取られちゃうよ。』
『それはダメよ。私たちは秋ちゃんを悪いものから守らなきゃいけないわ。あなたも竜が来たら、ひっ掻いてあげなさい。』
『ええ?引っ掻くと、ご飯がもらえなくなるんだもん。』
『そ、それもそうね。じゃあ、とにかく秋ちゃんと竜を近づけないように、秋ちゃんにまとわりつくのよ。』
『解ったよ。秋ちゃんは絶対に守って見せるね。』
こうして、ワンニャンワールドによる会話は、今日も秋の話題ばかりで終わるのだった。
『私だって、秋ちゃんにまとわりつきたい・・・』