ペコの気持ち01
ツンデレワンコ注意報。
ペコの気持ち01
『私はビーグル犬の子犬。まだ名前は決まってないわ。みんなワンちゃんとか呼んでいくけど、どうでもいいわ。』
「お母さんこの子欲しいよ。」
『今日も来たわね。最近この子私のことを見ていくのよね。私はもう少ししっかりと世話ができる子じゃないとお断りなのよ。』
「ダメよ。その子は結構大きくなるから、こっちのチワワならいいわよ。」
『ふん、悔しくないんだからね。こっちから願い下げなんだから。』
「かわいい。この子ならいいの?今日からうちの家族だよ。」
『抱っこされてしっぽフルなんて私にはできないわ。全くみんな何考えてるのかしら。』
「キュンキュン(またあのビーグルの子チワワに負けたみたいだね。)」
「クーン(この前ポメラニオンの子にも負けてたよ。一番の古株だね。)」
「ワンワン(うるさいわよ。聞こえてるんだから。)」
『ムカつくわ。私は相手を選んでるの。誰にでも貰われていくような子たちと一緒にしないでほしいわ。』
「君、一人ぼっちなの?」
『え?誰かしらこの子。初めて見るけどなんだか温かそう。』
子犬の前には小学六年生くらいの女の子が立っていた。
ゲージの中で子犬と触れることができるコーナーなのだが、一匹と一人だけがそこにいた。
「ボクも今一人なんだ。最近心友ができたけど、二人以外には中々仲良くできなくってね。」
「キューン」
『え?私がこんな声出しちゃうなんて、今のは無しよ。私は媚びたりなんかしないんだから。』
「そっか、君もボクのこと分かるんだ。ボクと一緒にいたら不幸になっちゃうかもしれないんだ。それでもいい?」
そう言うと女の子は子犬を抱きあげた。
『なに言ってるのかしらこの子。
確かに他の人とは何か違う雰囲気があるけど、すっごく純粋な心が見えるわよ?』
「えへへ。ホントに可愛いね。是非うちの子になってくれないかな?」
『なんだか知らないけど、別にあなたならいいわよ。
しょうがないから家族になってあげるだけなんだからね。』
「ありがと、ボクって動物みんな大好きなんだけど、動物ってみんな勘が良いからボクでも良いって言ってくれる子少ないんだ。」
犬と人間の違いなのだろう。
理性が働くゆえに見ることができないところも、犬には見えるのかもしれない。
「お母さん。この子にするわ。名前も今決まったわ。」
「もっと選ぶと思ったけど早かったわね。」
「うん。この子を見た瞬間この子しかありえないってわかったの。」
「そう、名前が決まったって言ったけどなんて言うの?」
「ペコだよ。」
『ええええ?ペコ?なんでそんな名前になるのよ。
私にそんな平凡な名前つけるんじゃないわよ。もっときらびやかな名前はないの?』
ペコと名付けられた子犬は目を潤ませているが女の子は気付かない。
「ペコ、君はボクの運命の犬だから。きっと大切にするから仲良くしてね。」
『もう決まっちゃったのね。まぁいいわ。仕方ないから仲良くしてあげるわよ。』
「そうだ、自己紹介がまだだったね。ボクは蟹津秋だよ。
ペコも蟹津ペコだから、秋って呼んでね。」
『天然かしら?犬の声帯じゃ人の言葉なんて話せないわよ。』
ペコは秋の口を舐めてしっぽを振った。
「一人ぼっちでいたのに甘えんぼさんなんだね。今度からは家族に甘えて良いんだよ。」
『甘えたんじゃないわよ。挨拶よ挨拶。
秋ちゃんには教育が必要ね。犬のことをしっかり覚えてもらわなくちゃ。』
「秋、帰るわよ。」
「はぁい。」
そのあと秋と好美はペコを引き取るために店員に話をつけ料金を払うと、車で家に向かった。
「お母さん、コンビニによってくれない?カメラ持ってきたのにフィルムが入って無かったの。」
「あら。ごめんなさい。この前運動会の時に全部使って忘れてたわ。」
「ペコの記念写真を撮るからお願いね。」
『綺麗にとらなかったら承知しないんだから。』
「ペコならきっと可愛く(・・・)撮れるわよ」
『まぁ子犬の時はそれで我慢して上げるわ。大人になったら綺麗に撮るのよ。』
「ほんと可愛いなぁ。」
秋はそう言うとペコに頬ずりをはじめ、ペコが家族に加わった嬉しさを目一杯表現した。
『ま、悪くはないわね。これからお姉さんにしっかりついてくるのよ。』
「ボクにもやっと妹ができたんだね。」
『私がお姉さんに決まってるでしょ。』
ペコの肉球が秋の顔に当たるとくすぐったそうにしていた。
まだ子犬のペコの柔らかい肉球では秋にダメージを与えることはできない様だ。
『まぁいいわ。これからよろしくね秋ちゃん。』
このワンコ、ツンデレ過ぎる気がするんですが・・・
再転の姫君のカテゴリのツンデレはあくまで秋のキャラのはずなのですが、秋よりツンデレな気がします。
まぁ、飼い主に似ると言いますし、というかこの話の場合ツンデレがツンデレを見つけて意気投合?
と、とにかくペコとの出会いでした。今後もペコはお気に入りなのでちょくちょく本編の方でも出てくるかと思います。