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出産祝い
シゲールはアンナのほっぺたをつつきながら、子守唄を歌っている。
「うさぎさんうさぎさん、なんでお耳が大きいの、お母さんの声をよく聞くためよ。うさぎさんうさぎさん、どうして前にしか進めないの。それは前だけ向いて生きていくためよ」
「にいちゃん!お客さんだよー!」
「うん」
家の外に出ると、あの人がいた。
「あなたは……」
「出産おめでとう。これ、お母様に。産後は食べて力をつけないといけないから。家の裏で育ててた野菜と果物がとれたの。卵は近所の人からもらったわ。川原で釣りもして、結構魚も釣れたし、お裾分けよ」
「あ、ありがとう。でも、いいの」
「いいよ。1人じゃ食べきれないから」
魚はすぐに調理できるように丁寧に処理され、とれたての野菜と果物と卵は川の水で冷やされ、しっとりと冷たくなっていた。
「美味しそう」
「台所借りていい?作るよ」
あの人は外にある台所に立ち、手際良く料理を作る。
普段では見たことがない料理が並ぶ。
やっぱり外国の人なんだなと思った。