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男の子
小さな寝床で赤ちゃんがすやすやと眠っている。
その横では母が赤ちゃんの手を指で触っている。
「可愛い」
赤ちゃんの周りには兄弟がキラキラした目で赤ちゃんを見ている。
「そんなに囲まれちゃ、赤ちゃんが恥ずかしがっちゃうよ」
シゲールはその横で優しく微笑みながら聞く。
「名前はどうするの?」
「シゲールが付けて」
一瞬、黒髪の女の姿がよぎった。
「アンナってどうかな?」
「アンナ……アンナね」
今日からあなたはアンナよ。
と言いながらアンナにキスをした。
「でも、あの子どんな子かしら?」
「?」
「あの子よ。黒髪の子」
心臓がドキン、と跳ね上がる。
「僕も、あの人のことよく知らないんだ。でも……」
「あら」
「どうしたの?」
ふふふ。と母さんは笑う。
「いつまでも、男の子のままじゃいられないのね」
「どういうこと?」
「いずれ、わかるわ」
シゲールは首を傾げた。