表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石英の子  作者: 彼岸花
2/9

廃墟の女

石英の子はシゲールという名前を授かり、13歳になった。

「シゲール、川へ水を汲みに行っといで」

大きな桶を二つ渡され、母さんは妹たちの昼寝に付き添っていた。

川までは少し歩くので身重の母にはつらい。父親は今山羊や鶏の世話で忙しい。

桶を二つ持ち、川へ向かった。


***


川は浅く、膝が浸かる程度だが、川幅が大きく、水切り遊びにはちょうどいい。

二、三個石を拾い、投げた。

石が水面を小気味良く跳ねていく。

パシャンパシャンパシャンパシャン。

シゲールは水切りがうまい。

ひとしきり遊んだ後、桶に水をいっぱいにして、家に帰った。


「シゲール!何してんだよ」

「何って水汲みだよ」

「遊ぼうぜ。最近、変な女が住み着いてる屋敷があるんだよ。肝試しに行ってみようぜ!」

「やめとけよ」

「その女、髪が黒くて目も黒い。悪魔みたいなやつなんだって長が言ってた。だから、その屋敷に行っちゃいけないんだって!」

「じゃあ、行かないほうがいいんじゃないか?」

「シゲールはまじめなんだから」

「よせよ。俺は帰る」

「あー?逃げるんだ?今度からお前をよわむシゲールって呼んじゃうぞ」

「こいつ……っ!行くぞ」

「そうこなくっちゃ」

一旦水が入った桶を適当な場所に置いて行く。


***


森の端に大きな屋敷が見えてきた。

見たこともないくらい立派な家。

貴族って奴が住んでそうな。


「お、俺さ、ちょっとションベンしてくる。そこで待ってろ」

シゲールはひとり取り残された。

キイ……と二階の窓が開き、女の姿が見えた。

黒く、長い髪。黒い服を纏っている。その代わりに肌は白い。瞳は黒曜石のように艶やかな色をしている

シゲールと目が合い、女はうっすらと微笑んだ。

風がふわり、と二人の間を横切った。


女は家の中に引っ込んだ。

「ごめんシゲール、やっぱ帰ろうぜ」

少年はシゲールの背中を押して帰る。

その二人の姿を窓越しに女は見ていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ