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プロローグ
雷が轟き、雨が激しく降る真夜中のこと。
家の中から男が出てくる。
稲妻が山の間を走ったのと同時に男は叫んだ。
「俺の家に石英の子が生まれたぞ!」
石英の子。
100年に一度生まれる、別名神の供物。
髪と肌が白く、瞳が青い。とにかく色素の薄い子。
そして、その子は14歳になった最初の満月の日に村の人々に殺され、食べられてしまう。
そうすることにより幸福と長寿が訪れる。
石英の子が生まれた家は名誉とされ、村の長と同じくらいの立ち位置になる。
男は雨の中、へその緒を切ったばかりの赤ん坊を天に掲げた。
あたりが真っ白になるくらいの雷鳴が響く。
「神よ!俺の息子だ」
赤ん坊はギャアギャアと泣いていた。