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加護によるチート?

 街中を見物しながら、通りを歩いていく。

 建物は木造で平屋が多い。

 それほど(しっか)りとした造りに見えないのは、気温が温かいのと地震もないのだろう。


 商店を構えているのは少なく、食品などは店の前に屋台のように並べて販売しているようだ。

 値札やポップのようなものはほとんどないので分かりにくいが、食料品を見る限りはだいたい銅貨1枚が100円くらいのようだ。


 街中を歩いている人は、みな自分と同じような肌の色の人だった。

 恐らくここは魔族の住む街なのだろう。


 街を眺めながら進んでいくと、3階建ての建物が見えてきた。

 確かに他にないので、あれが冒険者ギルドなのだろう。


 建物の中に入ると、右手に受付と思われるカウンターがあり、左奥に大きな掲示板があって、何かがたくさん貼り出されている。

 おそらくあそこに依頼が書いてあるのだろう。

 何人かが掲示板を眺めている。

 右奥には食堂のようになっていて、食事をしている人が何人かいた。


 受付の手が空いているお姉さんに、声をかけてみる。


「すみません、冒険者になりたいんですけど。」

「あ、はい新規登録の方ですね。少々お待ちください。」


 パタパタと走っていき、上司と思われる人と少し会話をすると、すぐに戻ってきた。


「それでは、私が手続きをしますので、こちらへどうぞ。」


 促されるまま、入ってすぐ右側にあった階段で2階にあがる。


「それでは、ここに掛けてお待ちください。」


 階段を上ってすぐの広間に幾つかあるテーブルの一つに促され、椅子に腰掛けて待つ。

 1つの部屋に入っていくと、門番の詰め所で見たような板と、羊皮紙を何枚か手に戻ってきた。


「では、まず最初に犯罪歴がないか、確認させてもらいますね。」

「はい、分かりました。」


 言われる前に、板の上に手を置く。

 同じように宝石が青く光るが、出てきている文字数は門の時より多いようだ。


「レオナルトさん、16歳ですね。犯罪歴は問題ありません。」


 どうやら名前や年齢まで出ていたようだ。


「剣士の称号をお持ちなので、冒険者としてこの先活躍できそうですね。」


 お姉さんがにっこり微笑んでくる。

 取り立てて美人という訳ではないが、純朴そうな可愛らしさがあり、つい見惚れてしまう。


「えーと、すみません。何か失礼な事言っちゃいました?」

「あ、いえ、なんでも。」


 見惚れていた事に気付き、顔を赤くして(うつむ)いてしまう。

 お姉さんもその態度で、レオナルトが何を思っていたのか気付いたようで、顔を赤くしてしまっている。

 見た目通りに純粋な子のようだ。


「え、えっとですね。レオナルトさんはまだ位階2なので、しばらくは位階を上げながら、薬草採取やコボルドのような弱い魔物を狩っていった方がいいと思います。」

「コボルドですか。ゴブリンやプレーリーヘアより弱いんですか?」

「そうですね、ゴブリンなら4くらい、プレーリーヘアなら6くらいは位階があった方がいいですね。」


 あれ、もうどちらも倒してしまったけど、加護のお陰なのかな。


「えーっとですね、この街にくる途中で、ゴブリンとプレーリーヘアを倒してきたんですけど、何かまずいでしょうか。」

「まずくはないですけど…本当ですか? もし討伐証明をお持ちなら、ギルド証を発行した後に受け付けますけど。」

「あ、ぜひお願いします。皮も引き取ってくれたりします?」

「もちろんです。」

「良かった、手持ちがあまりなくてどうしようかと。」

「宿でしたら、ギルドから安くていい所を紹介しますよ。」


 心配していたことが分かったのか、宿を紹介してくれるそうだ。

 このお姉さんいい人すぎる。


「あと、もし興味があるようでしたら、魔法の適正も調べることができますが、どうしますか?」

「えーと、タダだったらぜひ。」

「もちろんいつでも無料ですよ。と言いたい所ですが、無料なのは登録時だけなんです。それじゃ、用意しますね。」


 お姉さんが、金属板を持って先ほどの部屋に戻っていき、別の金属板を持ってきた。


「これで、魔法に適性があるかどうか、ある場合にどの属性に適性があるのか調べられるんですよ。」


 若干ドヤ顔でお姉さんが説明してくれる。

 気持ちは分かるけど、すごいのはお姉さんじゃなくて、この板だよね。

 さすがにそのツッコミはせず、言われるがままに板にはめてある石に手を置く。


 すると、石から7方向に延びていた線が順に光だす。

 赤と紫とグレーが線の端まで、他の青、緑、茶、白、グレーがその少し手前まで光っている。


 キレイだなーと眺めていると、お姉さんがワナワナと震えだす。


「ちょ、ちょ、ちょっと待っててくださいね。」


 お姉さんがパタパタとどこかに走っていく。

 何かがまずかっただろうか。


 しばらくすると、お姉さんがものすごくきれいなお姉さんを連れて戻ってきた。

 肌の色が違うから、魔族ではないようだ。


「マウラ、この子が報告のあったレオナルトくんなの?」

「はい、そうです。」


 お姉さんの名前はマウラと言うらしい。


「あの、すみません。何か僕悪い事しましたか?」

「ううん、違うのよ。突然でごめんなさいね。私はここのギルドマスターのオルタンス。よろしくね。」

「あ、はい。よろしくお願いします。」

「じゃ、レオナルトくん。悪いけど、もう一度ここに手を置いてもらっていいかな。」


 オルタンスに言われて、もう一度手を置く。

 結果はもちろんさっきと同じだ。


「あら、本当ね。レオナルトくん、あなたは7属性の全てに適性があるから、たぶんどんな魔法でも使えるようになるわ。」

「あの、それはすごいんでしょうか?」

「ええと、そこからね。まず、魔法は使える人が限られているの。だいたい100人に1人くらいかしらね。」


 おお、魔法ってそんなにレアな能力だったんだ。


「さらに、その中で冒険者や兵士として実用できるレベルの魔法が使えるのが、更に10人に1人くらいね。」


 これで、1,000人に1人ね。


「さらにさらに、たいていの人は使える属性が限られていて、たいていの人は1つの属性だけ。たまに2個や3個扱える人もいるけど、7つ全てなんて人は本当に少ないの。」


 これでどれくらいの割合になったんだろう。


「具体的には、各国の宮廷魔導士の3割いればいいくらいね。あ、宮廷魔導士ってのは国が抱え込んでいる魔法使いのことで、魔法が使える人の中でも本当に優秀な人たちね。」


 うーん、何万人に1人とかってレベルになったのかも。


「えーと、ものすごく珍しい、ってことでしょうか。」

「簡単に言うとそうなんだけど、それじゃ伝わらないくらいすごい珍しいの。」

「何かまずかったりしますか? その宮廷なんちゃらに拉致されたりとか。」

「さすがにそこまではないと思いたいわね。バレたら勧誘くらいは覚悟しないといけないかもね。」

「うーん、面倒そうですね。」

「そうね、宮仕えが夢でないのなら、面倒なのかも。」


 オルタンスが若干呆れているようだ。

 そういう問題じゃないだろ、とでも言いたいのだろう。


「できれば、ギルドとしては冒険者を続けてもらうのがいいんですけどね。」


 オルタンスが少し威圧気味に言ってくるので、思わずビビってしまう。


「は、はい。そうですね。」

「ギルドマスター! レオくんを(いじ)めないでくださいよ。」

「レオくん・・・?」


 あれ、マウラさんにそんな風に呼ばれるほど仲良くなったつもりはないけど。

 ここは触らぬ神に祟りなし、かな。

 オルタンスも(いぶか)し気な視線をマウラに送るが、気付いていないようだ。


「有料だけど、初級と中級の魔法書はギルドでも読めるから、気が向いたら習得してみるといいわ。」


 あー、やっぱりタダで覚えるのは無理だったか。

 オルタンスの一言で少しがっかりする。


「はい、お金に余裕が出来たら・・・。」

「もうゴブリンに勝てるのならすぐですよ!」


 マウラが根拠もなく応援してくれる。

 純粋すぎて、こちらが気恥ずかしくなってしまう。


「マウラ、もう一度鑑定結果を見たいから持ってきてちょうだい。」

「はいっ。」


 マウラがまたパタパタと部屋に行き、最初の板を持ってくる。


「何度もごめんなさいね。もう一度お願い。」

「はい、別に何度でも大丈夫ですけど。」


 そう言うと、手を板に置く。

 光るのも変わらずだ。


「やっぱり・・・あなたエルフの血も流れているのね。」

「えっ、魔族じゃないんですか?」


 マウラが驚いているが、オルタンスにはバレていたようだ。


「はい、魔族とエルフの血が流れているらしいんですが、その自分の生い立ちを知らないもので。」

「あ、ごめんなさいね。辛い事を聞いてしまったかしら。」

「いや、本当にただ知らないだけなので大丈夫ですけど。」

「なら、いいわね。魔族とエルフで扱える属性が違う傾向にあるのよ。それで、レオナルトくんは、両方の血が流れているので、全属性が扱えるのかも知れないわ。」

「なるほど、それじゃ混血なのはいいことなんですね。」


 お陰で魔法でヒャッハーできるかも知れないのだ。


「そうとも言えないのよ。特に魔族は、他種族との混血を嫌う人が多くてね。人族やエルフ、獣人に対しての差別はほとんどないけど、魔族との混血だけは許さないって人が多くて。」


 なんと。

 まだ苛められる生活なのだろうか。


「あまり表立ってはないかも知れないけど、一部の裏社会に近い奴なんかは、気を付けた方がいいわね。」

「はあ、そう言われてもどう気を付ければいいのか。」

「それはそうね、でもできるだけ警戒はしておいた方がいいわ。」

「分かりました。ありがとうございます。」


「さて、次は試験をしないとね。」


 オルタンスさんの笑みが怖い。


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