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新たな人生の門出?

 気が付くと烈央は、木に寄りかかって寝ていたようだ。

 目の前には平原が広がっており、その向こうには森があるようだ。


「んっ・・・」


 軽く体を伸ばすと、思わず声がこぼれる。


 立ち上がって周囲を見渡すと、自分の背後にも森が広がっているので、ちょうど平原と森の際に生えている気に寄りかかっていたようだ。


 周囲に生物はいなさそうなので、危険はなさそうだ。


 自分の様子を確認すると、薄汚れた服を着ている。

 麻か何かだろうか。

 天然素材の布でできた布は、簡易な縫製で作られた安物のようで、裾がほつれたりもしている。

 その上、埃や泥で汚れているので、恐らく(はた)から見たらかなりみすぼらしいだろう。


 腰には剣がベルトに通してある。

 青銅製だろうか。

 飾り気もない両刃の直剣で、長さは1mほどだろうか。

 きちんと手入れがされているようには見えず、かなり刃も傷んでいるように見える。


 手に取ってみると、それなりの重さがあるが問題なく振れるようだ。

 日本にいた頃の烈央であれば、この重さの剣を振り回すのは少し厳しかったかも知れない。


 腰には、布でできた小さな袋も下げられており、中には数枚のコインが入っていた。

 100円のような銀色の硬貨が2枚、10円のような茶色の大きめの硬貨が5枚入っていた。

 こちらの世界のお金のようなので、そのまま袋に戻しておく。


 そう言えば、インジスウェイがメニューが使えると言っていたはずだ、と思いだしたが、使い方が分からない。

 とりあえず、それっぽい言葉を言ってみる。


「メニュー。」

「メニューオープン。」

「システムメニュー。」

「メニューコマンド。」


 どれも反応しない。

 音声認識ではなく、ジェスチャーかも知れない、と思い、左右それぞれの手で、色々と振ったりしてみるが、これも何も起きない。


 むむむ、と腕を組んでどうしたものか悩むが、メニューが使えるはず、という事以外の情報がない。


 思わず天を仰ぐと、視界の端に矢印がある事に気付く。

 何だろう?とそこに意識を集中すると、メニューウィンドウが視界に広がる。


  ステータス →

  スキル   →

  戦技    →

  魔法    →

  称号    →

  アイテム  →


 おお、ちゃんとメニューが開いた。

 視線判定か、思考反応なのだろう。

 順に中身を確認してみようと、ステータスに意識を向けると、勝手にサブウィンドウが出てきた。


 名前: レオナルト(星野 烈央)

 種族: 魔族/エルフ

 位階: 2

 魔力: 383

 腕力: 119

 体力: 82

 俊敏: 19

 知力: 85

 精神: 50



 どうやら、こちらの世界での名前はレオナルトと言うらしい。

 種族が、魔族/エルフとなっているが、これは何だろう?

 魔族の中のエルフなのか、魔族とエルフのハーフなのか。

 と、また上に表示用のウィンドウが表示され、ハーフである事が判明する。


 位階は、どうやらレベルの事らしい。

 レベル2だと、まだ何も鍛えていないに等しいだろう。

 魔力がMP、腕力等はそれぞれ攻撃力や防御力等に影響するパラメータのようだ。


 次にスキルだ。


 スキル: 武神の加護、簡易鑑定、生命力自動回復、片手剣術


 武神の加護があるので、これがインジスウェイがくれた加護のようだ。

 これのお陰で生命力自動回復がついて、腕力等のパラメータが上がっているみたいだ。

 片手剣術は、インジスウェイがくれた「おまけ」だろう。

 生命力自動回復は、HPが時間で回復するもの、というイメージでいいようだ。

 簡易鑑定は、アイテムや魔物の情報がある程度見えるものらしい。


 試しに、腰にある片手剣を鑑定してみると、劣化した青銅の剣と表示された。

 どうやら、劣化しているらしいとガックリする。


 戦技は、武器を使って繰り出せる必殺技のようだが、魔力を消費したりはしないらしい。


 最初からいくつか使えるようだが、増やし方は分からない。


 スウィフトスラッシュ:

  素早く切りつける攻撃。射程と実行時の俊敏にプラス補正。

  利用可能武器種:片手剣


 ワイドスラッシュ:

  広範囲に横薙(よこなぎ)に斬りつける攻撃。射程と攻撃力にプラス補正。

  利用可能武器種: 片手剣、大剣、大斧、大刀


 双刃:

  1回の斬りつけで2回の斬撃が発生する攻撃。

  利用可能武器種: 片手剣、大剣


 クロスブレード:

  十字に斬りつける攻撃。攻撃力にプラス補正。不死者に特効。

  利用可能武器種: 片手剣、大剣、短剣


 2回攻撃まであるけど、13回攻撃とかもできるのだろうか。

 1対1(タイマン)じゃないと、とてもじゃないけど使えなさそうだけど。


 試しに剣を振ってみたけど、特に技名を叫んだりするような恥ずかしいことをしなくても、イメージすれば発動するらしい。

 もちろん、発動するに相応しい行動、つまりワイドスラッシュなら水平方向に剣を振っていないと発動はしないようだ。


 魔法は、何も乗っていなかった。

 どこかで覚えてきたりしないといけないのかも知れない。


 称号は2つ乗っていた。

 基本的な扱いはスキルと同じようで、パラメータに対して何らかの補正があるようだ。

 違いはよく分からないが、スキルは何らかの能力をプラスし、称号は実績等で付くボーナスのようなものだろうか。


 称号: 剣士、魔王


 剣士の称号は、インジスウェイからもらった「おまけ」のお陰だと思う。


 しかし、この魔王ってのはなんだ。

 勇者に討伐される運命にある、定番のアレだろうか。

 各種パラメータに恩恵があることは分かったのだが、なぜこれが付いているのかが分からない。

 これもインジスウェイのくれたおまけなのかどうか。


 考えても分からなさそうなので、次に行く。


 最後のアイテムだが、これは空だった。

 手持ちとして片手剣があるはずだが、これは乗っていない。

 インジスウェイが言っていたストレージはこれの事だろうが、使い方が分からない。


 片手剣を手に持ち、ストレージに収納、と念じてみる。

 すると、片手剣がフッと消える。

 もう一度アイテムストレージを見ると、中に劣化した青銅の剣があった。

 これもイメージによって収納ができるようだ。


 さすが異世界、すごいな、などと考えながら、剣を取り出す事をイメージすると、目の前に先ほどの剣が出現する。

 これは便利そうだ、とレオナルトは満足気に(うなず)いていた。



 ◇ ◇ ◇



 さて、これからどうしようか、とレオナルトは迷う。

 手にはボロい剣しかなく、水や食料もなく、それを買うためのお金もない。


 どこに向かえばいいのだろうか。

 地図があればいいのに、と何気なく考えると、視界の隅に地図が表示された。

 と言っても、目に見える範囲の一部だけが出ているようで、平原と森があるのが分かるだけだ。


 もう少し広域地図に、と考えると地図が広域のものに切り替わる。


 地図の北の方に川があり、その更に北に人工物のようなものがありそうだった。

 そこに街がありそうなので、とりあえず北に向かうことにしよう。


 森の中は視界が悪く、何かがいても対応できない可能性があるので、少し森から距離をとりつつ北に向かって歩き出す。

 やがて視界に小川が入ると、ほっと安心する。

 それほどの距離もなく、街にいけそうだ。


 突如、左手にある森のほうからガサゴソと物音がする。

 レオナルトは、剣を抜き放ち警戒する。


 現れたのは、大きなウサギだった。

 体長が50cmくらいはあるだろうか。

 茶色の体毛に覆われていて、ウサギの特徴である耳はけっこう長い。

 ウサギを注視すると、鑑定が働いたのかプレーリーヘアという名前で、位階は2のようだ。


 獰猛な動物でなくて良かった、と気を抜いた瞬間ウサギが一気に飛び掛かってくる。

 ウサギは噛みつこうとしていたようだが、それは何とか躱すものの、思いっきり体当たりをされた形となる。

 無理な体制で躱したこともあり、突き飛ばされたように転がるが、なんとかすぐに立ち上がって、ウサギが再度突撃してくるのを警戒する。

 体当たりをくらった左腕がものすごく痛い。


 実際にはただの打撲程度だし、レオナルトの生命力や防御力からすると大したダメージではない。

 それに剣を持つ右手ではなかったので、然したる影響はないのが現実だ。

 しかし、異世界にきていきなり攻撃を食らってしまったレオナルトには、この痛みは恐怖であった。

 今すぐにでも逃げ出したかった。


 しかし、今逃げ出せば、おそらく背後からこのウサギに攻撃され、殺される。

 直感的に感じ取ったレオナルトは、やるしかないんだ、と自らを奮い立たせる。


 きちんと戦う意思を持って剣を向けた時、自然と剣の動かし方が分かった。

 長年やってきた空手の形をうつように、どう剣を振るえばいいのかが分かる。

 再度飛び掛かってきたウサギに対し、それを迎え撃つような形でウサギの頭に向けて、上段から剣を振り下ろす。

 ザシュという感触と共に、ウサギの頭が少し斬り裂かれている。

 残念ながら、イメージした通りの剣の動きに体がついてこなかったため、思ったより剣の速さが出ず寸前で躱されたのだ。


 しかし、頭に思い浮かぶ通りに剣を振るえば勝てる、そう感じたレオナルトは、今度は自分から斬り掛かる。

 ウサギも躱そうとするが、その動きに対してどう対処すればいいのか見える。

 イメージに従い剣を振るうと、青銅の剣はウサギの首筋に吸い込まれ、半ばまで食い込んだところで止まる。


 首筋を斬られたプレーリーヘアは、それが致命傷となり断末魔をあげて息絶える。

 ウサギの死体を前に、なんとか勝てたという思いでいっぱいのレオナルトは、緊張の糸が切れたようにその場にへたり込む。

 まだ痛む左腕に顔を(しか)めながら、せっかく異世界に転生できたんだからもっとイージーモードにしてほしかったとぼやくのだった。


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