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『王様と私』〜リチャード様Ver.〜 エミリアside

「・・・マーガレット・・・可愛かったね・・・。」

「いや・・・あれは『美しかった』だ・・・。」


魂が抜かれたかのように呟く、オジサン二人(リチャード様とロイド様)を横目で見つつ、私はマーガレットちゃんとリカルドの乗った馬車を見送った。


・・・確かに、淡いブルーのドレスで着飾ったマーガレットちゃんは、女神の様に美しかった。

だがね、隣に立つ、我が旦那様のリカルドもすごーーーくカッコよかったって事を、ここでお伝えせねばなるまい!あの女神の隣に並んでも消して色あせない美貌・・・まさに、私の旦那様は最高なのだ!!!


「あーーー・・・いいなぁ。僕も夜会に行きたい。」


サロンに戻りながら、リチャード様が呟いた。


「あれ?リチャード様って、夜会とかお好きでしたっけ?」


「んー・・・?・・・そーでもない。社交とかメンドイし。・・・着飾ってチヤホヤされたい、ただそれだけ。・・・ロイドは、夜会って好き?」


「私もあまり好きではないな。・・・社交より、ダンスが嫌だ。」


サロンにやって来た私たちはソファーに座る。


「えー・・・可愛いご婦人方と二人きりで密着できるし、僕はダンスって好き。」


リチャード様はうっとりと呟く。


「さすが、リチャード様。二人きりになれるとか、密着とか・・・セクハラだ。」

「本当に最低だな。さすがプレーボーイ。ボーイにしてはずいぶんと中年だが。」


私とロイド様が呆れた様にそう言うと、リチャード様はムッとして言い返して来た。


「・・・あのね。僕が女性とダンスを好むのにはちゃんとした理由があるんだよ!」


「女性がお好きって理由ですよね?」


「そ、それはそうなんだけど・・・。・・・その・・・夜会とか、女性といないと・・・やたらと男性に口説かれるんだよね、僕。女性と二人っきりで密着して踊っていれば、そんな気持ち悪い目には遭わずに済むだろ?・・・ちゃんとした理由だよ。」


・・・さすが『総受け』体質。


「・・・お前、そんなに男にモテるのか?」


ロイド様が驚いた様に尋ねるが・・・いや、お前はリチャード様のメインヒーロー側だから。

ちょいちょいヤバい感じ出してきてますよね?・・・ロイド様?!今の所、リチャード様はお父様エンドで確定っぽいですけど・・・ロイド様エンドも十分可能性としてあったんですからね!!!


「・・・モテる。何故か知らないけど・・・すごく。」


「だから・・・ご婦人方と遊び歩いていたのか?」


「んー・・・それは違うよ。もちろん僕がご婦人方と遊びたいからに決まってるだろ?!・・・でもさー、正直、男に口説かれるのはキツイよ。前もチラって話したけど、知らない国の王様にプロポーズされた時は・・・泣きそうだったよ。」


・・・!!!

あれか・・・!確かマーガレットちゃんによると、幼馴染枠のお父様、ショタ枠のロイド様に続くロイヤル枠のヒーロー!


「・・・お前の事だ、気を持たすような何かやらかしたんだろ?」


「ええ?!してない。してないよ。本当に何もしてないんだ・・・。じゃあ、二人にその話、してあげるね。あれはね、たしか10年くらい前の事で・・・。」


リチャード様はそう言うと、知らない国の王様とのプロポーズ話をしはじめた。


◇◇◇


昔から、夜会って言うと僕はエリオスとユリアと三人で参加する事が多かった。・・・僕たちって仲良し幼馴染だからね。カジュアルな夜会だと、その時お付き合いしている人を誘う事もあったけど、正式なものは大体、三人で出るのがデフォルトだったんだよねー。


その日の夜会は、よく知らない国から来た王様一行の歓迎会みたいなのだった。だから夫婦参加が基本の正式なヤツだったんだけど、僕は独身だし、生憎ユリアは行かなかった。

確か、エミリアちゃんか、ユリウス君・・・もしかしたらリカルドがお熱を出したとか、そんなんで「私は行かないわ。」ってユリアが言ったんだと思う。


「えー。ユリアが行かないなら、僕も行きたくないよ。」


僕は、夜会に行きたくなくてゴネた。

だって面倒くさいし、エリオスと二人きりだと、面倒な事になるから。


「リチャード、お前はこの国の侯爵なんだ。他国からの賓客を招いての夜会だ。さすがにサボれないだろう。」


こういう時のエリオスは優しくない。

大抵はマトモな正論を言ってくるんだよね。ムカつく事に。


「・・・だけど、ユリアだってこの国の伯爵夫人だろ?」


「だが、あくまで夫人だ。俺が行くのだから問題ない。」


・・・なんだよソレって感じだよね。

僕は誰と結婚しても、ずーっと侯爵だ。正直、面倒くせーなって思ったよ。


「あーあ、僕もエリオスの嫁にして貰いたかった・・・。あ、いやエリオスが僕の嫁?僕のクイーンだし・・・。とにかく、そうしたら、僕もサボれた。」


僕がそう言うと、エリオスは苦笑していた。


結構、本気だったのにさ。

・・・だって、エリオスが僕の旦那さん、もしくは嫁になってくれたら、侯爵家とか面倒は全部押し付けて、楽できるのにって思ったんだよ。

・・・まぁ、その時に、『あ、リカルドいるじゃん!あいつにサッサと侯爵家を押し付けちゃお!』ってアイデアが閃いちゃったんだけどね。


で、しゃーないユリア抜きで夜会に行った訳。


まぁ、エミリアちゃんもロイドも良くご存知だとは思うけど、正式な夜会って、超がつくほど詰まんないんだよね。なんか偉い人が長々と挨拶したり、カッチリしたクソ詰まんないダンスを形式ばって踊ったりさ。


もちろん、夫婦同伴が基本だから、女性に声をかけたりも出来ないし。それに、女性だけで夜会に来るなんて事はないから、男が余るんだよね。・・・で、そうなると、何故か僕は男に口説かれちゃう訳。


一応さ、エリオスが追っ払ってくれるけど、軍でお仕事してるエリオスは、結構お知り合いが来てたみたいでさ、まぁ、警備関係も軍で仕切ってるし当たり前っちゃ当たり前なんだけど、ちょいちょい話しかけたり、話しかけられたりして、僕から離れるんだよね。そうすると、あっという間に言い寄られちゃうんだ。


・・・いつもはユリアもいるから、そうはならないんだけど、その日はとにかく酷かった。

ホントもうね、次から次・・・って感じだったよ。


そしたら、それを見てたエリオスがさ・・・。


「リチャードは俺というものが有りながら、随分と口説かれて、浮気者だな。」


そんな事を言ったんだ。・・・まぁ、ムカつくよね。


てかさ、男に口説かれて『浮気者』ってナンだよって感じだろ?・・・まぁ、実際のとこ僕は浮気者ではあるんだけどさ・・・でも、男だよ?男?酷い言い様じゃない?!


「僕が浮気者なら、エリオスはアバズレじゃない?僕はさ、向こうが勝手に口説いてくるの。だけどさ、その理屈でいったら、君は随分と僕以外の男に話しかけたりしてたよね?・・・つまり君は、自ら男を漁る、アバズレだよ!」


僕がそう言うと、エリオスは怒った。そうしたらさ、喧嘩だよね、喧嘩。・・・浮気者vsアバズレの不毛な戦いだよ。


で、頭に来た僕はエリオスに「君とはもう、さようならだよっ!!!」って怒鳴って、もう帰る事にしたんだ。一応、顔は出したし、侯爵の義務は果たしたろ?だから、馬車を呼んで貰って、玄関にある待合室でボーっと待つ事にしたんだ。人は居ないし、あそこってボーッとするには最適なんだよね。


それで、待合室に行ったらさ、後ろから褐色の肌の見知らぬ男が走ってやって来て、僕に聞いたんだ。「もう帰るの?」って。エキゾチックな顔立ちのイケメンさんだったかな。まぁ、男の顔なんて興味ないから、もう忘れたけど。・・・あ、これが知らない国から来たご一行の一人だなって、直ぐに分かったよ。


「そう。帰る。・・・僕、夜会嫌いだし。」


「・・・私も夜会は苦手なんだ。」


「ふーん。じゃあ、馬車が来るまで僕といる?君って賓客って奴だから、帰れないんだろ?ここさ、ボーッとするのに最適なんだよ。」


そう言って、僕は隣の座る長椅子の隣を勧めたんだ。

ほら、僕も一応、侯爵だし?この国の代表として、どっかの国の人に優しくしなきゃって思ったからね。


で、僕たちは椅子に座ってしばらくボーッとしてた。


そしたらさ、そいつがいきなり僕に言ったんだ。


「結婚して欲しい。」


・・・はぁ?

どうして横に座ってボーッとしてるだけで、プロポーズされたの、僕?しかも、相手は男だよ?意味わかんなすぎて、混乱するよね。で、混乱してたら、いきなり壁ドンされたんだよ。壁ドン。・・・やるなら分かるけど、何が悲しくて、僕は男にそんな事されなきゃいけないんだよ。


てかさ、やられてみて分かったんだけど、あれさ、なんか怖いよ。マジで泣きそうになったもん。・・・で、恐る恐るその男に言ってやったんだ。


「・・・あのー。男同士で結婚は無理だと思うよ?」


「・・・私は国王だ。私が決めたら何でも叶う。私の妃に迎えたい。」


・・・げ、こいつ王様か。

しかし・・・妃ってなんだよ。妃って。僕、男だって。

その場合、正しくは王配とかじゃね?・・・僕はそう思ったね。


「えっと、嫌だよ。」


そうしたらさ、その男・・・つまり、王様が言ったのさ。


「・・・先程、お前は男と揉めていたろ?あの男と付き合っていたんじゃないのか?・・・喧嘩して別れたんだろ?ならば、私にチャンスをくれないか・・・私は、あの男よりお前を大切にする。一国の王妃(クイーン)になりたくはないか?どんな贅沢もさせてやる・・・。一目ぼれなんだ・・・。」


・・・どうやらさ、僕とエリオスは付き合ってたって思われてたみたい。それで、男がOKだって勘違いされたんだ・・・。つまり、男に壁ドンされて、プロポーズされたのは、すべてエリオスのせいだったんだ・・・。


これに気付いたら、ハラワタが煮え返るくらい、ムカついたね。これはもう・・・エリオスに責任とってなんとかしてもらわなきゃって思ったよ。


だから、叫んだ。すごくデカい声で!


「エリオスーーー!!!今すぐ来ないと僕、マジでキングに取られちゃうからねーーー!!!かーなーりーピンチですよーーー!!!」


・・・って。


で、そしたらさエリオスが慌てて出て来て、なんか王様と僕をかけて決闘騒ぎになっちゃった訳。

・・・他にも沢山人が出てきちゃってさ、大騒ぎだよ。


怖かったからさ『エリオス、絶対勝って?これは、完全にチェックかかった状態だよ?!』って縋ったら、無駄に鍛えてて、悪どいエリオスは、ダーティーな戦い方で、サクッと王様を叩きのめしてくれたんだよー。マジで助かった。


エリオスが王様に決闘で勝ったからね、これで晴れて僕はエリオスのものって事になったんだ!やっぱり僕のクイーンは頼れるよね!


・・・でもさ、その王様さ、いつまでも未練がましく僕を見つめているんだ。だからね、王様に言ってやったんだ。


「あのね、僕もキングだから、君のクイーンにはなれないんだよ?・・・ちなみに、僕のクイーンはエリオスなんだけど・・・。結婚して、子供もいるから、エリオスが欲しいってのも、ダメだよ?」


王様には釘刺しておかないと。この人、男の人が好きみたいだし、エリオスもダメだよって。

そうしたらさ、驚いて僕たちを見つめるんだ。・・・いやいや、この年齢だよ、結婚してる人、多いでしょ?・・・王様の国は晩婚なのかな?


「結婚・・・してるのか?・・・しかし、子供はどうやって・・・。」


「えっ?王様、子供の作り方、知らないの・・・?・・・あのね、男女が愛し合うと出来るんだよ。コウノトリもキャベツ畑も違うからね?・・・あ、男同士も無理だよ。」


王様は年の割に何も知らないみたいだった。もしかしたら、そういうのもあって僕にプロポーズしちゃったのかも・・・。そしたら、王様はエリオスと僕をマジマジと見つめて言ったんだ。


「そうか・・・君のクイーンなのか・・・。異国とは、こうも違うのだな。君のように美しい男がいるんだ、逆もあるのかも知れないな・・・。」


・・・ってさ。

ちょっと酷いよね?・・・確かにエリオスは僕には劣るけど、そこまで不細工じゃないと思うんだよね?!鍛えてるし、とってもカッコいいよね?!


だからさ、もう頭に来て、エリオスを引き摺って帰って来たんだ。


エリオスは僕のクイーンだ。いつも盤面を走り回って、(キング)を守ってくれる。それを悪く言われてたら、僕だって我慢できないよ。僕だってさ、いざとなったらエリオス(クイーン)を守る覚悟はあるんだからね!


◇◇◇


「・・・と、まぁ、そんな事があったんだよねー。なんだろうね、これが美人の王女様ならホイホイ付いてったんだけどねー。贅沢三昧したかったしさー・・・でも、男はムリっしょ!」


カラリと笑って話すリチャード様に、私もロイド様もツッコミが追いつかない。色々・・・色々とおかしい!


それに・・・それ・・・お父様は「ああ見えて実は女」って思われたんじゃない・・・かな・・・?


ま、まぁ、別にいいけどさ。




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