誓いの証 エミリアside
夕食会が終わると、私達はサロンへ移動した。
・・・いわゆる食後のまったりタイムね。
久しぶりの和食に満足したのか、マーガレットちゃんが幸せそうな顔をしている。
・・・良かった。リカルドは頑なに歓迎会だから豪華にと懐石料理を推してきた。でもね、きっと元・日本人のマーガレットちゃんが食べたいのはそれじゃない。もっと普通の・・・お家で食べてたようなヤツ・・・。
だって私もそうだもの。だから頑張って東方の家庭料理を推したんだけど・・・やっぱり満足してくれたみたい!本当に、良かった。
ふと、マーガレットちゃんと目が合うと、マーガレットちゃんがこちらに来てくれた。
男性陣はお酒でも飲むのだろう、テーブルにワイングラスを出している。・・・アルコール依存を疑われていたリチャード様の分はないみたいで、抗議したリチャード様は、お父様とリカルドを相手に揉めている。
「エミリアさん、夕食・・・ありがとうございます。」
「マーガレットちゃんが気に入ってくれたなら、良かったよ。歓迎会なのに普通っぽくってごめんね。でも、久々なら、ああいうお家で食べてた様なのがいいかなって思って。」
「・・・すごく嬉しかったです。」
二人で笑い合う。・・・マーガレットちゃんの髪で、お父様がさっきプレゼントした髪留めがキラリと光った。
「あ・・・付けてくれたんだ。お父様、喜ぶよ。」
「ええ・・・ユリア様が選んで下さったんですね?すごく可愛くて気に入りました。」
私は、マーガレットちゃんを上から下まで眺めて・・・やっぱりスゲー可愛いなと思い、ため息を吐いた。
「マーガレットちゃんは・・・いいな。なんか私なんて茶色いから・・・。お父様のセンスの無さもすごいけど・・・でも茶色って可愛くしようが無いよね・・・。」
そう。コレ、私の微妙な悩み。
リカルドとかリチャード様は金髪に青い目だから、金細工にサファイアなんかをあしらった貴金属を贈られたり贈ったりする。リカルドの誕生日にお兄様が渡したキーホルダーとかね。
お母さまとお兄様なら、淡い金髪に水色の目だから、シャンパンゴールドなんかにアクアマリンとかブルートパーズなんかを使ったものなんかになる訳で・・・。
じゃぁ、茶髪、茶目の私とお父様は何よ・・・って感じなのだ。
さっきの木じゃなけど・・・ホント、木とかそんな色。
まぁ、リカルドが雀ちゃんと言うのも納得のカラーリングなのだ。
・・・ちなみにお父様はお母様と結婚した時に、婚姻の証としてネックレスを贈る際に、自分の色だとどうしたって野暮ったくなると大そう悩んだらしい。お母様はオシャレだしね・・・。結局、リチャード様に「ダイヤにすれば?一番高い石だし透明な髪の人も透明な目の人もいないし、一番硬い鉱物だよ?エリオスとユリアの仲は傷がつかない程、硬く結ばれているって事で、ね?」とはげまされ、それはそれはご立派なダイヤの首飾りを贈ったそうだ。
ちなみに私は青いガラス玉を貰った。普段使えない豪華なネックレスなんか、いらないし。ワイブル家は貧乏だからね、賢い奥様の節約術、だよ。
「・・・でも、私は好きですよ、エミリアさんの髪も目も。温かみがあって、落ち着きます。」
美女にニッコリと微笑まれながらそう言われて、悪い気がする奴なんか居るわけない。・・・私の機嫌は急上昇した。
「それにしても、あのセンスないブローチ、やばかった。リチャード様に押し付けられて良かったよ。・・・お父様、結構しつこい男だからさ、『アレは付けないのか?』とか言ってきそうだし。無いよ、アレは無い。」
「・・・。」
マーガレットちゃんは突然、無言になってしまった。
あ、あれ?
「ご、ごめんね?もしかしてあのブローチ、気に入ってた?」
「あ、いえ。そうではなくて・・・。あのブローチ・・・エリオス様エンドのキーアイテムだと思うんです。」
「・・・は、い?」
あれか、またしても、お父様×リチャード様のお話系か。マーガレットちゃんの推しカップルだもんね。
「あの・・・ライトノベルなんで、実物がどんな物か分からないんですが・・・馬のブローチをエリオス様がリチャード様に渡すシーンがあって・・・。」
「はぁ。」
「でも確か、馬は黒い馬のブローチだった気がするんです。だから、微妙に違いはあるんですけど・・・まぁ、リチャード様は転生者だから、そのくらいは変化しちゃうのかも・・・。」
「・・・黒い馬?何で黒?・・・お父様、茶色いよね?」
「・・・さあ?そう言われれば、何で黒なんでしょう?うーん。カッコいいから?あ、チェスのナイトかも知れません!ライトノベルには、二人がチェスを楽しむシーンが割とありましたから。君のナイトだよ、的な?」
・・・あ、そうなんだ。そのお話でもお父様とリチャード様はチェスしてたんだね。なる程ねー。・・・でも、実際はリチャード様もお父様もナイトじゃないけどさ。
「・・・こっちの世界では、リチャード様がキングでそれを守る怖ろしい強さのクイーンがお父様らしいよ?」
自分で言ってなんだが、そのBLラノベなんかより、こっちの方がぶっ飛んでないか?『君のナイト』ならまだしも、キングとクイーンって・・・夫婦だし。
見るとマーガレットちゃんが身悶えていた。
「最っ高です。・・・公式が最大手・・・。」
マーガレットちゃんは、まだ言い争っているリチャード様とお父様を見つめて、妄想の世界に飛び立って行った・・・。
「コホンッ。と、ところでキーアイテムって、何?」
マーガレットちゃんを引き戻し、少し気になった事を聞いてみる。・・・お父様エンドのキーアイテムってさ、気になるじゃない?何のキーだって、ね?
「馬のブローチは・・・二人の誓いのアイテムなんです。・・・来世でも必ず一緒に居ようって。例えどちらかが馬になっても、側にいるよって。」
「・・・重っ。」
ウットリ呟くマーガレットちゃんには申し訳ないが、私は思わず吐き捨てる様に言ってしまった。
私だってリカルドが大好きだから、もし来世があるならまた出会いたいよ?だけど馬だったら・・・まあ、馬だしね・・・アルベルト扱いだな。大切にはするけど、厩にステイ・ホームだよ!
しかも、誓った相手がお父様とかさ・・・地獄の果てまで追ってくるやつだって・・・ウヘェ。
「あ、憧れたりしません?」
「まぁ、一度転生してるし、次もまたあるカモ?とは思うよ?その時に知り合いが居たら楽だよね。そんな感じ?」
「・・・エミリアさんて、結構ドライですよね?なんか、ユリウス様っぽい。」
マーガレットちゃんに感心した様に言われ、なんだかちょっとムズムズした気持ちになる。
「お兄様に似てるってのは良く言われる。・・・でも、リチャード様と双子はもーっと言われてるの。転生者だから似てるのかな?」
「・・・。た、確かに、リチャード様とエミリアさんって、雰囲気とか似てますよね?でも、転生者???・・・私も似てるって事ですか?」
そうマーガレットちゃんに言われ、私はハッとする。
・・・似てない。マーガレットちゃんには全く似てない。なんだろう・・・リチャード様と私の間では、転生は「二週目とか、マジだるい。」って認識だった。
・・・が。
マーガレットちゃんは・・・二週目なのに・・・努力して真面目に頑張ってる、よ、な。
しかも外交官から、今度はお兄様達と政界進出?!・・・正直、凄いとしか思えない。
「あ、あのー・・・。マーガレットちゃんは・・・人生2回目とか面倒くさいって思ったりは・・・しなかったの?2回目だし、楽できるトコは楽して、パスできる事はパスしたいー・・・みたいな?」
「えっ?」
「えっ???」
「・・・す、すいません。そんな事、考えつきませんでした・・・。そ、その。2回目だからこそ、スタートダッシュできる。1回目の反省を生かして、今回はこうしようとか・・・せっかく現代社会の知識があるのでそれを生かしてみようとか・・・そう言うのは思いましたけど・・・その、面倒くさいは・・・思いつきませんでした。」
・・・。
な、なる程。魂からデキが違う様だ。
そういえば、東方の昔の名領主様だっけ?その人もあの地方を日本文化で盛り上げたんだよね・・・マーガレットちゃんタイプだったんだろうか・・・。
多分、転生者は二種いる!
怠ける奴と、怠けない奴だ!!!
「・・・それはさておき、お兄様にこき使われるって、マシュー先生の活動は大丈夫なの?」
「ええ。『デジ甘』に関しては、最終巻である12巻目まで書き上げてますので、問題ありません。・・・それに少しネタ切れ感もあったので・・・。」
・・・!!!
さ、最終巻まで書いてある?!?!
全12巻・・・ですって?!確か今・・・5巻目が出たトコだよね。そろそろ折り返し地点か・・・!
後でリチャード様に教えてあげよう!・・・あ、ロイド様にも。
「あ、あの。私たちね・・・私とリチャード様とロイド様なんだけど・・・『デジ甘』の大ファンなの。だから、ネタバレはしないでね?すごく楽しみにしてるから。」
「ふふふ、勿論です。一応、半年おきに出版するお話しになってるんですよ。・・・発売より1日だけ早く、三人には私から本を贈らせて貰って良いですか?」
「ええっ!も、もちろんだよ!嬉しい、すんごく嬉しい!・・・あの、サインも入れて?」
私がそうお願いすると、マーガレットちゃんは笑顔で頷いてくれた。
「・・・でも、ネタ切れなの???」
「ええ・・・ちょっと行き詰まってしまってて。でも、こうして推しカップルを見られるだけで・・・なんか創作意欲が湧いてきます!」
・・・な、なる程。
「マーガレットちゃん的にはお父様とリチャード様なんでしょ?二番目の推しのロイド様は?その辺はどう思っているの?」
ふと、ロイド様と話すリチャード様が目に留まり、聞いてみる。・・・どうやら、少しだけと言う約束でリチャード様もお酒が貰えたらしく、ほんのちょっぴり入ったワインをちびちびと飲んでいる。
「・・・ロイド様とリチャード様も良いんですけど・・・エリオス様が居ないならって感じですかね?ロイド様は、本来はショタ枠なんですけど、育ち過ぎました・・・。悲劇です。」
・・・わーお。
立派に育ったのね、ロイド様ってば。
「ち、ちなみに・・・リチャード様って、お相手は何人いるの?」
「無限ですね。」
「はっ?!」
えっ?無限???
「ストーリーとして存在するのは、幼馴染枠のエリオス様に教え子ショタ枠のロイド様、それと夜会で知り合う、異国の王様と・・・後は学園での先輩と、先生になった時の同僚がいました。・・・それ以外も『総愛され』なので、モブからの求愛も凄いんですよ?なんてったって、傾国の美貌を持った魔性の男設定ですから。」
異国の王様・・・どこかで聞いたな、そんな話・・・。私は遠い目になった。リチャード様は先生になってないから同僚さんには出会ってないけど、学園の先輩とか、お父様が始末してたりして・・・ははは。
しかし・・・。
・・・アレで???
いや、リチャード様・・・見た目はそんなに悪くないけど・・・傾国とか、魔性とかは違くない?そういうのって、もっと妖艶な雰囲気で、その・・・。
「あ、あれで、なの?」
思わず突っ込む。
「そ、そうなんですよね?私もエッ?って思いました。・・・いや、その美形、ですよ?整ったお顔立ちだとは思うんですけど・・・なんだろう・・・滲み出る残念系ですよね。」
私たちは、リチャード様を見つめた。
リチャード様はチビチビ飲んだ微量のワインに酔ったのだろうか、赤い顔でご機嫌に笑っていた。
そして、私はある事にふと気付いてしまった。
・・・リチャード様と私は雰囲気が似ている。マーガレットちゃんもそう言っていた。
・・・つまり、私も滲み出る残念系なのだ、と。
酔っ払うリチャードに、男性陣はドキドキソワソワしてるという事を、ここにご報告いたします。




