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世界王者は伊達じゃない エミリアside

あれから、ロイド様に将棋の駒に文字を入れてもらい、私たちは将棋で遊ぶ様になった。みるみるうちに、私たちは将棋にハマってしまい、今や暇さえあれば三人で将棋を指している。


リチャード様が、お父様から貰ったお小遣いで作った将棋セットは、文字こそ入っていなかったが、硬い木で作られており、本物と違わなかった。あの、将棋の駒の独特な形や厚みも再現されており、指してみるとパチリと小気味良い音が出る。・・・私は感動に震えた。


どうやらリチャード様は、何度か将棋を指した事があったそうで・・・私と対戦した事で思い出した将棋を、やってみたくなったらしかった。「前世でチェスはやりきったつもりだし、今世は、将棋もしてみようと思って。」と笑って言った。


そんな将棋経験者かつ、チェスの世界王者は・・・あっと言うまにデタラメな強さへと進化した。ちなみに、ロイド様もなかなかチェスがお上手だったらしく、駒の動きやルールを理解すると、私を軽く超えていった・・・。今や私は、二人から駒落とし(駒を減らして対戦する事。いわゆるハンデ。)でお相手してもらっている・・・まぁ、そんなモンだよね、私だもん・・・。


だけどね、譲れない事もある。


・・・将棋でいうキングは王将と玉将だ。格上の人が王将を使う。・・・だがね、私はどんなに負けても王将を二人には使わせない。だって二人に将棋を教えてやったのは私だし。・・・いわば師匠だもん。

どんなに手加減されてても、私が王将だ!


リチャード様とロイド様でやる時は、リチャード様が王将を使っているけどね。


・・・今やリチャード様やロイド様に勝てる事は・・・駒を打つ時の音くらいしかない。

あの、パチリとした小気味良い音は二人には上手く出せないらしく、やたらとそこを褒めてくれる。・・・もしかすると、ものすごく気を使ってくれているのかも知れない。


・・・昔、子供の頃、お兄様があまりにも可愛らしい顔すぎて周りがベタ褒めした時に、いじけた私に向かってお父様が「エミリアの旋毛は世界一可愛い」と言い出した事があった。お父様曰く、私の旋毛はど真ん中にあり綺麗に渦巻いているそうだ。お兄様もお母さまもど真ん中じゃないし、こんなに綺麗な巻き方じゃないらしい。


・・・すげーフォローされてるけど・・・あんまフォローになってないよ・・・。私は子供ながらに、心の中でそう思った。・・・だって、まず旋毛に美醜を気にする人なんていないし・・・。それより、そこしか褒めるトコないの?!って思ったのもある。


・・・でもまぁ、それも今となっては良い思い出だ。今や私には『余裕』があるからね!


だって、お兄様に関してはどんなに可愛いお顔でも・・・あと何年かすれば、加齢臭漂うオッサンだ。

オジサンにしては美形だし、割に頑張ってるリチャード様ですら臭うのだ・・・あの枕、ホントすごかった。完全に爺さんの臭いだったもんな。・・・とにかく、お兄様ごときあっという間に臭くなってしまうだろう。男性って可哀想・・・。

その上お兄様は、そのうちに旋毛自体が無くなってしまうだろう・・・。あの柔らかく儚い御髪は・・・いつまでお兄様の頭皮に留まっていてくれるのだろうか・・・。本当に・・・男性ってお可哀想だ・・・。


だから、最近の私は、お父様に旋毛の可愛さを褒められる度に・・・幼い私が感じたあの屈辱を、お兄様も近いうちに感じるであろう事に・・・仄暗い喜びを覚えているのだ・・・!!!



「ねぇ、エミリアちゃん、ちゃんと記録してるっ?!」


リチャード様の言葉にハッと意識を戻す。


・・・あ。

しまった。いつもの妄想モードに入っていた。


「すいません、えっとロイド様が飛車を進めたトコまでしか記録してません・・・。」


「エミリア、ずいぶんボンヤリしてたが、疲れたか?・・・リチャードと私で少しショーギに夢中になりすぎた様だ。・・・そろそろ休憩しよう。」


「んー・・・そうだよね。ごめんね、楽しくってつい・・・。お茶にしよっか。」


リチャード様はそう言って立ち上がり、ティーセットの置かれているソファーに移動する。


・・・ニンジンジュースを飲んで赤くなったロイド様を見て、恐ろしくなった私は、シェフにお願いして、人参茶に変更してもらったのだ。乾燥した人参を煎じたお茶だ・・・ニンジンジュースよりお腹に溜まらず、サッパリして飲みやすい。まぁ、ニンジンの存在感はあるのだけれど・・・。


ちなみに、お茶受けもニンジンスイーツが並んでいる。


「・・・やっとニンジンが届かなくなったそうです。」


「そっかぁ。良かった・・・。もう僕、下手な投資はやめとくよ。・・・まぁ、エリオスから貰ってたお小遣いも無くなっちゃったしね。」


私たちはソファーに座り、お茶を飲みつつ話をしていると、ふいにロイド様が言った。


「そう言えば、リチャードはエリオス様たちと、温泉旅行に行くのだろう?・・・いつだ?」


・・・そうだ。そう言えば、お兄様が仮装コンテストで頂いた景品の温泉旅行に、お父様たちと行くと話していたな。


「うーん・・・それがさ、どうも行けなくなりそうなんだって。エリオス、忙しいらしくてさ。」


・・・お父様、忙しいんだ。


その割に、リチャード様が呼び出すと、チョイチョイ将棋をやりに来てたけどな・・・。まぁ、旅行となると別か・・・。何日か滞在するだろうし、東方にある温泉は、ここから馬車でも1日はかかる。


「もったいないですね、チケット。」


「そーなんだよ。ユリアも残念がっててさ。だけど、仕事だし、仕方ないよねー。」


リチャード様はため息を吐いた。


「お母さまも、さぞガッカリされたのでしょうね。」


「んー・・・?それがさぁ、ユリアの奴、酷いんだよ!『楽しみにしてた、温泉に行けないなんて!』って、エリオスにメソメソ泣きついて、代わりに南方にある、お友達の別荘に遊びに行く許可を貰ったらしいよ?むしろラッキーくらいのお手紙を貰ったよ。」


「・・・お母さまが、お友達の別荘に旅行に行きたがる、なんて珍しいですね?」


「あの『北の騎士団』のお芝居がさ、すごい人気出たじゃん?それで南方では『南の騎士団バージョン』が公演されてるらしくてね・・・。しかも、ユリア一推しのイケメン俳優さんがバード役なんだってさ。南国バージョンはルイド役も美形俳優らしいよ。それで、舞台好きなお友達に誘われてて、ずっと行きたかったらしいんだよね。でも、嫉妬深いエリオスに言い出せないでいたらしいんだ・・・。分厚い手紙に、いかにユリアがその芝居を楽しみにしているかが延々と書かれていたよ・・・。」


・・・なるほどね。


それは、お芝居大好きなお母さまにとっては、愛が重いお父様と、ひたすらウザいリチャード様と行く温泉旅行より、そりゃーワクワクしちゃうだろう。


「はー・・・温泉、行きたかったなぁ。東方では、珍しい川魚が食べられるらしいんだよね。ワカサギって言ったかな?氷に穴をあけて釣るんだって・・・。僕、ちょっと楽しみにしてたんだよねー。」


・・・ワ、ワカサギっ?!

東方ではワカサギ釣りができるの・・・?!


温泉旅館が有ったり、何となくだが、東方は日本ぽさが強い。きっと転生者がいるんだろーなーって思ってはいたが、ワカサギ釣りまで出来るとは・・・。


「東方は、少し変わった地方だからな。なんでも、あちらはパンよりライスを好んで食べているらしいぞ。料理も美味いらしいが、少し変わっているらしい。お茶の名産地でもあるしな・・・。」


「・・・そう???・・・なんですね???」


「おい?!・・・学園の授業で習うだろう?!エミリア???・・・あそこの、だいぶ前の名領主だった奴が、『ジャパン』とか言う国を再現したいとか言って、変わった観光地や食べ物で、何もないあの地方を盛り上げたんだ・・・。おい、常識だろ?」


・・・マジか。聞いとくべきだったな、学園の地理。もはや二回目の地理とか・・・うげぇー・・・って思って爆睡一択でしたよ。


『ジャパン』か・・・。その領主様は、やっぱり日本人の転生者だったんだろーな。

・・・うん、きっと内政チートウェェーーーイ!って感じで、やってたんだろう。凄いな。・・・ラノベで読んでた時は、ただただワクワクしていただけだが、転生してみて分かる・・・その凄さ。しかも後世の教科書に載る程の名領主とか・・・。同じ元・日本人として尊敬しかありません!


あー・・・いいな、行ってみたい。


そう言えば、東方への旅行は、仮装コンテストの景品だよな。・・・日本人だったマーガレットちゃんも、お気に入りの場所なのかもなぁ・・・。ロイド様は『料理は美味いが少し変わっている』とか言ってたし・・・もしかすると、日本食っぽいのが食べられるのかもなぁ・・・。うーん・・・。


・・・ワイブル家のシェフは、とても探求心が旺盛なのもあり、色々な地方や色々な国の料理に手を出している。その為、たまに和食っぽい味付けが出て来る事も有り、私はそこまで和食には飢えてない。・・・変わったメニューが出て来る事もあり、我が家の食材は格安ながらも、お客様にはいつも好評だ。

・・・東方で料理本や調味料を購入したら・・・うちのシェフなら・・・喜ぶし、もっと本格的な和食を頻繁に出してくれそうだ・・・。


「いいなぁ、行ってみたいな。」


私がボソリと呟くと、リチャード様は待ってましたとばかりに微笑んだ。


「じゃあさ、行こうよ!リカルドにおねだりしてみよう?・・・エミリアちゃんと僕とロイドとリカルドで、丁度四人だし!・・・ね、ロイドも協力して?!三人でお願いしたら、きっと頷いてくれると思わない?!ワイブル家の家族旅行しようよ!」


自分たちが行く事がまるで頭に無かった、私とロイド様は、顔を見合わせた。


・・・そうか。そうだよね!

たまには家族旅行もアリだよねっ!





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