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衣装合わせ エミリアside

ハッキリ言って、衣装を着てロイド様と並んだお兄様は良かった。


お兄様は、ロバートやバード役の役者さんよりも可愛らしい顔立ちだったが、私としてはむしろコッチの方がアリだな・・・と思えた。ムサイ男同士より、可愛い男とムサイ男の方が・・・私的にはまだ受け入れやすい。


ただ・・・問題は・・・お兄様の機嫌が悪すぎるのだ。

衣装に着替え、尊大な態度で眉間にシワを寄せて睨みをきかすお兄様は、可愛い顔なのに半端ない威圧感を出している。


・・・バードには程遠い。バードは愛嬌がありちょっとあざといキャラなはず・・・。ロバートだって、こんな怖いキャラじゃない。


いくら見た目が良くても、こんな恐ろしい空気を纏っていては優勝するのは難しいのでは無いだろうか。


「えっと・・・お兄様?」


「なんだ。」


「外見はともかく・・・中身がバードでは無い気が・・・。」


「エミリア・・・何故、衣装合わせ如きで、バードの素振りをする必要がある?・・・当日は文句なしに成り切ってやる。・・・まぁ、楽しみにしておくんだな。」


お兄様は馬鹿にした笑みを浮かべると、衣装をチェックし始めた。


「・・・母上。私のは幾分袖が長い。それから、ロイド様のはココをもう少し絞れる。」


お兄様は、そう言ってロイド様のジャケットの横腹辺りを摘む。


「ユリウス殿?ココを絞ると動きにくいのだが?」


「ロイド様、これは騎士服ではない。衣装だ。見た目が映える方が良い。・・・母上はどこか有るか。」


「・・・そうね、ユリウスのズボンも絞って、もう少し細身にしましょうか。それにロイド様はジャケットの丈があと少し短くても良さそうね。」


「そうだな。・・・母上、私のこの後ろの飾りはもう少し長い方が良くないか?」


「確かにそうね。あと数センチ長い方が綺麗に見えるわね。・・・それからロイド様の肩口の飾り紐・・・色が悪いわ。ロイド様ならもう少し落ち着いた色合の方が良いわね。」


お兄様は不機嫌ながらもお母さまと、自分たちが着て映える様に衣装の調整点を挙げ始める。


『童顔』の『女顔』を普段から誤魔化すのに必死なお兄様は、自分の見え方や見せ方に詳しい。自分を落ち着いて男らしい印象に見せる為、洋服や髪型の研究に余念がないのだ。その為、お洒落でセンスの良いお母さまと妙に話が合う。


「母上、このロイド様の安っぽいボタンはダメだ。仮装とはいえ、団長の威厳がない。それにロイド様が着ると小さく見える。」


「そうね・・・着てみると、光すぎで安っぽく見えるわね・・・。ロイド様は体格が良いから、ボタンももう少し大きくしましょう。・・・お揃いを意識しすぎてユリウスのと同じボタンにしたのだけれど、白地には光すぎて良くなかったわね。」


マネキンと化したロイド様は、お兄様とお母さまに指示されて、色々な角度から確認されている。


「・・・ねー・・・エミリアちゃん、僕たちはお茶でも飲まない?あのモードに入ったら、ユリアは長いよ。」


リチャード様がウンザリした顔で言う。

確かに・・・暫くお兄様とミリ単位までの調整が入りそうだ。


「そうですね。・・・お茶にしますか。」


私はリチャード様とリカルドとソファーセットでお茶を頂く事にした。


「優勝・・・出来るかな?」


リチャード様がポソリと呟く。


「見た感じは良さそうですよね?・・・あとは当日のお兄様の演技力次第でしょうか。」


「・・・それ、想像できる?」


リチャード様に真剣な顔で言われ、私もリカルドもハッと息を飲む。


・・・そ、想像できない。

お兄様は人前では静かな笑みをたたえているが、『愛嬌がある』とか『あざとい』とはベクトルが違う。


「・・・でも、やると決めたらユリウス様はやりますよ。大丈夫ですよ、父上。」


リカルドは、そう言って衣装合わせを余念なく行うお兄様たちを眺める。・・・まぁ、お兄様だ、やると決めたらきっとやる。


「そうですよ。私にもさっき、『当日を楽しみにしとけ』的な事を言ってました。」


「そっか・・・じゃあ、きっとマシュー先生に会えるね!」


・・・うん。きっと会える。

優勝はきっと、私たちのものだ!!!


◇◇◇


「では、お直しを頼んでおくわ。・・・修正点が多いから、ロイド様はこれが最終確認になってしまいそうね。」


お母さまは、着替えたお兄様とロイド様から衣装を受け取ると、箱にしまいながら言った。


「そうだな・・・だが、ロイド様と父上ならサイズ的には似ているのではないか?」


「そうね、後はエリオスで調整しましょう。・・・では、ユリウスそろそろ私たちも帰りましょうか?」


お母さまにそう促されると、お兄様は衣装の入った箱を重ねた。


「えっ、お母さま、お兄様、もう帰ってしまうの?」


お母さまがお泊りになる事は少ない。愛の重いお父様が、お母さまだけでのお泊まりを渋るからだ。・・・だが、夕食くらいご一緒できるのではないかと思っていた・・・。いくら心配とはいえ、今日はお兄様もご一緒なのだ。少し遅くなるくらい、構わないはず。


私が残念そうに言うと、お母さまとお兄様は何となく目を逸らした。


・・・ん?・・・何かある?


「・・・仕立て屋に早くお願いしたいのよ。ごめんなさいね、エミリア。」


「母上、他に荷物はあるか?・・・早く戻ろう。」


そそくさと帰宅準備を始めるお母さまとお兄様。

・・・なんか、あやしい。


私はグイッとお兄様の腕を掴んだ。


「何かありますの、お兄様っ?!」


私が睨むと、お兄様はコソリと小さい声で答えた。


「・・・。さっき聞いたのだが、どうも父上が、風邪で休まれているらしいのだ。」


・・・やっぱり。


なんだか嫌な予感がしていたのだが、そういう事ね。


・・・体を鍛えてもウイルスに勝てるとは限らない。あれだけ体調の悪いリチャード様にへばりついていたのだ・・・リチャード様ウイルスにやられてしまったのか。


「・・・自業自得ですわね。」


「ああ。だが放置も出来まい。・・・リチャード様には言うなよ。気に病まれる。」


お兄様はそう言うと、手早くお母さまの荷物を纏めてて、自分も帰り支度をはじめた。

私は何となく、俯いてしまった。


「・・・父上の事だ。丈夫な方だし、すぐに良くなる。仮装イベントには来るつもりらしいぞ。・・・エミリア、大丈夫だよ。兄さまも母上も付いているんだ。そんな顔をするな。」


お兄様は私の頭に手を置いて、安心させる様に笑う。


・・・そんなに、お父様を心配してるの、顔に出ちゃってたかな。『自業自得』って素っ気なく言ってやったつもりなのに・・・。


「・・・お父様によろしくお伝えして?」


「ああ、もちろん。・・・さあ、母上、おいとましよう。」


お兄様は、お母さまをエスコートすると、屋敷を後にした。





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