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侯爵様は品も良くてマナーも完璧 リカルドside

夕刻になり、仮装の試着の為に屋敷に戻って来た俺たちは、エミリアたちが居るという応接室へ向かった。

この応接室には控えの間がある為、試着で着替える際にそこを利用しているのだろう。


俺たちが、応接室までやって来ると、ドアが半分ほど開いていた。

・・・全く、どうせ父上かエミリアだろう。キチンと閉めないなど、だらしがない。


イライラした気持ちで、ドアに近づくと、中から父上とロイド様の言い争う声が聞こえてきた。思わずユリウス様と顔を見合わせてしまう。・・・またやってるのか!!!


俺たちは半分空いたドアから、そっと中に踏み入った。


「・・・な、な、な。何だって?品性って・・・ぼ、僕は侯爵だぞ?」


父上が興奮気味にロイド様に喰ってかかる。・・・父上は侯爵をご自分から辞めたのではないか。俺に侯爵家を押し付け、面倒事を放棄し、さっさとエリオス様の所に行ってしまったくせに、今さら侯爵を名乗るとは、どうしたというのだ。


「元、侯爵な。今はリカルド殿が侯爵だろ?・・・それに品位と爵位には何の関係もない。まぁ、我が国の侯爵がリチャードの様に下品なのは恥ずべき事だ。さっさと爵位を譲って正解だったな。・・・その点、リカルド殿は素晴らしい侯爵だ。品もマナーも完璧だ。」


全く持ってロイド様の言う通りだ。・・・本当に父上のマナーはひどい。・・・まぁエミリアもだけど。

しかし、辺境伯のご子息であり、礼儀に厳しい騎士団の団長であるロイド様に、品やマナーやについてお褒め頂いたのは光栄だ。


「まぁ、リカルドを褒めて下さるの?!・・・リカルドにマナーを教えたのは、私ですのよ!」


ユリア様が、嬉しそうに声を上げた。


「リカルドを褒めて頂けるなんて、嬉しいわ。・・・いずれリカルドは侯爵家を継ぐ身。私ごときが教えるので、本当に大丈夫なのかしらと、常に不安でしたの。時には厳しくしてしまう事もありましたのよ・・・良かった、本当に良かったわ・・・。」


感極まった様に語るユリア様に、俺は思わず泣きそうになる。・・・いつだって、ユリア様は俺を丁寧に指導し、導いて下さった。厳しいなど思った事も無かった。そして、それが俺の将来を案じての事だったとなると、万感胸に迫る思いだ・・・。


俺が、感動に染まる一方で、ユリアス様がしらけた声を上げた。


「・・・エミリアのマナーは放置したけどな、母上は。」


・・・このユリウス様のイメチェンを手掛けたのは、ユリア様だ。その為、今のユリウス様はとうに終わったはずの反抗期がぶり返している。・・・つまりは荒れているのだ。


「まぁ、ユリウス。酷い言い方ね!」


「リカルドにばかりマナーを仕込んで、エミリアを放置したのは、母上だろ・・・おかげでこんなだ。」


ユリウス様はエミリアを見つめ、鼻で笑う。


・・・いや、エミリアを好きにさせていたのは、ユリア様だけでは無い。エリオス様もユリウス様も、ひいてはスチューデント家の使用人すら、エミリアには甘々だったでは無いか・・・。

まぁ、ぶりかえした反抗期のユリウス様にとっては、何だってユリア様のせいなのだろう。


「問題ないわ。・・・だってエミリアはリカルドのお嫁さんになると決まっていたのだもの。それに、窮屈なのは向かないのよね、エミリア?」


「はっ、それでリカルドが苦労している!」


「そんな事ないわ。リカルドはそのまんまのエミリアが好きなのよ、ねー、リカルド?」


ユリアさまに笑いかけられ、思わずコクコクと頷いてしまう。

・・・まぁ俺も、エミリアを甘やかしているので、やはり同罪だ。事実、慣れない貴族社会の中で、ガサツだが、気安くて腹芸の出来ないエミリアに癒されていたのは本当だ。


「ふん、まあ良い。母上、早く衣装を出して下さい。・・・時間が無駄だ。」


「ほーんと、ユリウスは可愛くないわ。・・・これが衣装よ。細かい飾りが多いから、分からなかったら言って?」


ユリア様から衣装が入った箱を受け取ると、ユリウス様は、さっさと隣の部屋に着替えに入って行ってしまった。


ユリア様は、それをちょっと寂しそうに眺めている。・・・ユリウス様は、優しいユリア様に少し甘えすぎだ。母上がもういない俺には、そんな態度がちょっと腹立たしい。


「ユリア様・・・。」


思わず声をかけると、ユリア様はゆったりと笑う。


「リカルド・・・貴方を褒められたわ。・・・嬉しいものね。」


「ユリア様のおかげですよ。」


俺も微笑み返す。


「・・・エミリアの事・・・ごめんなさいね?マナーの無い子で迷惑かけてるのかしら?・・・別に、リカルドにエミリアを押し付けるつもりで、何も教えなかった訳では無かったのよ?・・・あの子は形に捕らわれない子だから・・・。エリオスとね、エミリアがエミリアらしく居られる方に嫁がせよう、無理ならずっと手元に置いておこうと話していたの。・・・確かに、エリオスとリチャードは子供同士を結婚させようと約束していたらしいわ。でもね、エミリアを受け入れられない方なら、婚約させる気すら、無かったのよ・・・。」


「・・・え。」


それは初耳だった。俺はてっきり父上とエリオス様が約束していたから、婚約者になったのだとばかり思っていた。


「・・・エミリアは我が家にとっては特別な子なの。家って、ユリウスもだけど、エリオスもとても頭が回るのよね。・・・何をしても簡単に出来てしまうし、思い通りになってしまうらしくって、いつも退屈というか、満たされないというか・・・そんな感じなのよ・・・。そこに生まれてきたのが、何をやっても規格外なエミリアでしょ?それはもう、毎日が大騒ぎで・・・エミリアが生まれるまで、静まり返っていたつまらない屋敷が、花が咲いたみたいになったのよ。・・・だから私達もなのだけど、使用人もみんな、どうしてもエミリアには甘くなってしまってね・・・。ふふふ、言い訳よね・・・。」


「いえ・・・。」


ユリア様は、嬉しそうに目を細めた。


・・・そうだったのか。


・・・何となくエミリアのいないスチューデント家を想像してみる。エミリアと出会わなかったユリウス様や、エリオス様・・・ユリア様はどんなだっただろう?

今のように仲睦まじいご家族だったろうか・・・?


「リカルドが・・・エミリアを好きになってくれて、本当に良かったわ。・・・ありがとう。エミリアはああ見えて、ずっとリカルドが好きだったのよ?子供の頃から、いつもリカルドを気にかけていたわ。・・・私、貴方たちが思い合って結婚出来たことを、とても嬉しく思っているのよ。」


「・・・。ユリア様・・・。」


俺は、スチューデント家の本当に大切な宝物を任せて頂いたのだな・・・。


「それにね、私、リカルドの事は・・・本当に息子の様に思っているのよ。・・・ロイド様にお褒め頂けるなんて、立派になったわ、リカルド。本当に・・・良く頑張ったわね・・・。あなたは立派な侯爵様だわ。」


ユリア様はそう言うと、そっと俺を抱きしめる。俺も泣きそうになりながら、ユリア様に腕を回し、しばし抱き合った。・・・胸がいっぱいになってしまい、言葉が出ない。


「ねー、ちょっと!」


そんな感動的なシーンを台無しにする様に、不機嫌そうに父上が声を上げた。


「なぁに?リチャード?」


俺から離れ、ユリア様は父上に尋ねる。 


「僕は?ねー・・・僕とも!はい、どーぞ。」


父上は抱きとめてやるとばかりに腕を広げたが、ユリア様は父上の手をパシッと軽く叩いて、あしらう。


「リチャードは、エリオスにでも、お願いして?」


「ユリアー・・・冷たいよー。ねぇ、何でダメ?さっきはエミリアちゃん、次はリカルド・・・そうしたら、今度は僕の番、だよね?」


「それはどうかしら?次はロイド様って手もあるわ。」


「ダメ!それはダメ。絶対にダメだよ!・・・ねー?僕とハグしよ?ね?ユリアー!ねー???」


しつこく食い下がる父上をユリア様が苦笑いしながら、抱きしめようとしたその時・・・着替えを終えた、ユリウス様が戻ってきた。


「母上!!!飾りが多くて、意味が分からない!なんとかして下さい!」


イライラしながら、ドアをバンと開けて入って来たユリウス様に、ユリア様は「仕方ないわね」とでも言いたげな表情で近づき、飾りを取り付けたり、間違えてた飾りを直したりし始めた。


今一歩のところで、ハグしてもらえなかった父上は、寂しそうにすり寄って来たので、俺が仕方なしに抱きしめてやる。


「ユリアが冷たい。」


「そうでしょうか?いつもユリア様はお優しいですよ・・・。」


父上は俺の肩に顎を乗せてため息を吐いた。・・・同じ身長で抱き合うと、なんか変な感じだ。


「さあ、これで完成よ。」


ユリア様はそう言うと、黒いやたらと飾りの付いた王子様みたいな格好にされた、ユリウス様をロイド様の隣に並べる。


・・・?


「どう、バードとルイドよね?」


ユリア様は、自信たっぷりにそう言ったが・・・芝居の間、ぐっすりと眠ってしまった俺には・・・全く分からなかった。





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