表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/134

可愛い人形 エミリアside

アルベルト人形の作成話です。


◇◇◇


アルベルトのブローチを作りたいと言う、リチャード様の為に、私はその日、ロイド様から時間をもらった。


サロンにはリチャード様と、何故かやる気のロイド様が私を待ち受けていた。


・・・ロイド様、どうした?


まぁ、いいけど。


「えーっと、まずはブローチでなく、小さいお人形を作ってみましょう。ブローチにする程小さいのは、なかなか難しいですから、まずは練習ですね。・・・では、紙にデザインを書いてください。」


私はまず初めに、10センチ位のお人形を作ってみる事にした。二人とも針や糸を持った事すらないだろうし、その練習も兼ねてだ。


二人は真剣な顔で頷くと、紙にデザインを起こしていった。・・・良いデザインの方を、みんなで作ろう。

自分のデザインがお人形になったら楽しいが、各自バラバラでは見るのが大変だ。同じ方がやり易い。


「エミリアちゃん!出来た!・・・どうかな?」


そう言って、リチャード様が私に紙を手渡して来た。


・・・えーっと、どれどれ・・・。


・・・。

・・・。


・・・さすが、リチャード画伯。


全く馬に見えない、キリン?ブラキオサウルス?・・・なんだか首の長い生き物の落書きが書かれている。


こ、これは、ない。


「リチャード様・・・全くアルベルトに見えません。」


「え、えー???・・・何がダメ?」


・・・何って・・・。

全体にダメだろ。馬に見えない時点でアウトだ。

まぁ、リチャード様が画伯なのは、落書きの様子から薄々気が付いてましたが・・・酷いなコレ。


「エミリア、私も出来たぞ。」


私が返答に困っていると、すかさずロイド様も紙を渡して来た。


・・・えーっと、こっちはどんなだ・・・?


・・・。

・・・。


・・・ロイド様、凄いな。


そこには紙いっぱいに、力強く疾走する馬の様子がリアルに書かれていた。美しいタテガミが風になびき、しなやかな筋肉の動きまで表現されたその絵は・・・もはや、絵画であった。


・・・しかし。


これをどうやって、人形にしろと???

私たちは縫い物の初心者だ。

刺繍が得意なお母さまなら、刺繍するのは可能そうだが、つくりたいのは人形だ。二次元ではなく三次元。

・・・これを人形にできたら、もはやそれで生計を立てられるレベルだろう。


「・・・ロイド様、すごく素敵な絵ですが、これを人形にするのは、とても難しいです。」


「・・・そうか。私ではアルベルトの美しさを表現しきれなかったか・・・。」


・・・いや、いや、いや。そうではない。


全く違う。


作りたいのは、可愛いアルベルト人形だ。

そもそも、この劇画タッチから言って、なんだか方向性が違うのだ。


「えーっと、じゃあデザインは私がしますね?」


あまり、絵は得意ではないが、リチャード様以上、ロイド様未満の私がやってみよう・・・。


・・・可愛い、お馬さん。


・・・。


ふと、私の頭によぎったのは『ぐんうまたん(仮名)』だ。

北関東にある、G県のご当地キャラクター。

正式名称はここではやめておく。商標的な何かとか、著作権的な何かがあったらまずい。


・・・デザインも、丸パクリはよそう。


リチャード様みたいに、身近に転生者がいたんだ。

G県出身や、『ぐんうまたん(仮名)』の関係者が転生しているかも知れない。・・・何らかを侵害したとかで、賠償問題に発展したら大変だ。


えっと・・・そうだ、尻尾をデカくしよう。アルベルトの尻尾はフサフサだ。

あと、目だな。アルベルトの目はクリクリのキラキラだ。目もデカくしよう。


・・・うん。なかなか可愛いぞ。よし!


「こんなのは、どうでしょう?」


私はデザイン画を見せると、二人は覗き込んできた。


「うわぁ、可愛いー!エミリアちゃん、凄くイイね!」


リチャード様は気に入ってくれたらしい。とても褒めてくれた。

・・・ロイド様は、なぜか「?」と言う顔をしている。


「・・・ロイド様は、イマイチですか?」


「あ、いや。・・・馬、だよな?・・・可愛いが、二足歩行はしなくないか?」


・・・当たり前だ。これはキャラクターだもの。


「・・・ロイド、頭固すぎじゃない?・・・アルベルトは、立ってる方が良いって。これ、可愛いよ!・・・ね?エミリアちゃん。」


「・・・そ、そうだろうか?」


「・・・ロイド様、これはデフォルメされたキャラクターですから、二足歩行でも良くないですか?・・・アルベルトの可愛さが表現できてれば、問題ないと思うんですけど・・・?」


・・・騎士様って、頭が固いんだろうな。可愛いマスコットを作成するのに、あんな劇画タッチな馬を描いちゃうくらいだ。きっと、おじいちゃんみたいな頭の中なんだろう。・・・リチャード様より若いのに、お可哀想。


「???・・・そうなのか?」


「そうだよ!ロイド、くどいよ!・・・これ、可愛いよ?!」


「・・・可愛い・・・???・・・可愛い気も?する???」


なんだか、納得いかなそうだが、これは、なかなかの可愛さだと、自分でデザインしたが思う。

まぁ、元々の『ぐんうまたん(仮名)』が可愛いので、それを軽くいじっただけでは、変になりようがないのだ。


「ロイド様、これはなかなか可愛いくできてると、私も思いますけど・・・?」


「僕もそう思う!すっごく、可愛いよ!!!早く作ろう!」


「ですよねー!リチャード様ー!・・・まあ、お堅い騎士様には理解出来ないかもですが。」


「・・・。」


ロイド様は、デザイン画を見つめて、考え込んでしまった。


「ねー、エミリアちゃん、アルベルト、裸って可哀想じゃない?お洋服着せようよ!」


「あ、そうですね!」


リチャード様に言われ、そう言えばベストを着てる『ぐんうまたん(仮名)』もいたなぁと思い出し、ベストをデザイン画に書き足す。ベストは・・・やっぱり青かな?


「よし、これでどうでしょう!」


「あ、いーね!さらに可愛いー!」


「・・・!!!」


私とリチャード様が納得して、デザイン画を見ている横でロイド様が固まっている。


「え?なに?・・・ロイドは何か不満?」


「・・・何故ベストを着せたんだ?」


「え・・・裸じゃ可哀想じゃないですか?」


「そうだよ!裸じゃ可哀想だよ。・・・え、ロイド大丈夫?」


なんだか、ロイド様は変な顔で固まっている。


・・・え?どこが変なんだろう???

だって、少しアレンジしてるけど、ほぼ『ぐんうまたん(仮名)』だよ???・・・普通に可愛いだろ???

ベストだって色を変えただけだし、可愛く書けてるよね???


「私は・・・服が無い方が良いと思う。」


ロイド様は言いにくそうに、ぽそりと言った。

・・・はぁ???・・・まぁ、裸でも可愛いとは思うけど、なんか、書いたのを、わざわざ脱がせるとか・・・ないわー。


「・・・なんか、服無し希望とか・・・ロイド様・・・きもい・・・。」


「・・・僕もそう思う。・・・ロイドって、お人形を裸にしちゃうタイプなんじゃない?・・・きもいよ!」


「わ、私は!人形など持っていた事がない!!!」


私とリチャード様に、じっとりと睨まれ、ロイド様は真っ赤になった。


「・・・じゃあ、アルベルト人形のお洋服を、脱がせないで下さい!」


「・・・そうだよ!服を脱がすとか、エロいから!僕も絶対に許さないよ。アルベルト人形を、そう言う目で見るとか、ホント無いから!」


「ま、まて!!!何で私がアルベルト人形をそんな目で見ると思われているんだ?!!・・・そもそも普段、アルベルトは裸だろう???」


・・・馬は馬だろ。裸とか、裸じゃないとか、そう考えてる時点で、ロイド様・・・ヤバい。


「・・・ロイド様、アルベルトを裸とか言うの、おかしいですよ?」


「そうだよ、アルベルトはあの姿でアルベルトだよ?馬なんだからさ。裸とか考えてる時点で、ロイドは変態だよ。・・・僕のアルベルトにいかがわしい事したら、許さないからね!」


「待て、本当に待て。・・・アルベルトは可愛いとは思っているが、なぜそうなる!!!」


ロイド様は、必死で取り繕っているが、私とリチャード様は今後、二度とアルベルトとロイド様を二人っきりにはしないと、アイコンタクトで決めたのだった。


◇◇◇


翌日。


「聞いてくださいよー!リチャード様!・・・なんか、リカルドも馬は全裸派とか言って、アルベルト人形の服なしを希望してきました!」


「・・・まじで?・・・僕、育て方間違えちゃった?」


「うーん。・・・もしかすると、一定数、馬は全裸派が存在するのかもですね・・・。ほら、チェスのナイトみたいな感じの、馬モチーフは服を着てないですし。」


「あー、リアルなやつね・・・。そう言えば、あんまりリアルじゃない動物のデザインって見ないかも?リアル嗜好の人が多いなら、全裸派も納得かー・・・。」


・・・あ。


あー!!!


・・・この世界にはデフォルメキャラっていないかも!!!


人形と言うと、ビスク・ドールみたいなのを言うし、動物の人形は、リアルめで、目玉がガラスとかになってる、獣の毛を使った本格的なやつしか見た事ないかも・・・。


・・・なんとなく、昨夜のリカルドの反応や、昨日のロイド様の反応が変だった理由が分かった気がした。


あー・・・。


いないのか、二足歩行の動物キャラや上半身だけ服着てるキャラって・・・。だから変に引っかかるのかー。


リアルな感じの馬が二足歩行で上半身のみ服着てるとか、確かにないわ・・・変態感ハンパないわ。


そっか・・・そういう事ね。


リチャード様の援護射撃のせいで、こっちの常識に気づいてなかったのかー・・・。


やっちゃったかなー・・・。


「・・・でも、まぁ、アルベルト人形は可愛いから、アリですよね?」


「そうだね、アリだよ、アリ。このアルベルト人形、ほんと可愛くできたって、僕も思う!」


私とリチャード様は、そう言って微笑み合った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リチャード・エミリア・ロイドの
獣人転生IFストーリーの連載をはじめました!
「怠惰な猫獣人にも勤労と納税の義務はある」
よかったら、こちらもよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ