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奥様とお義父様は護衛から逃げたい エミリアside

「リチャード様!・・・護衛さんと仲良くしましょうよ!た、確かに顔は怖めでしたけど・・・良い方かも知れないじゃないですか!」


リカルドが連れて来た護衛のロイド様に不躾な態度をとり、私たちを連れて逃げたリチャード様に文句を言った。私の横で、可愛いアルベルトがブルルっと鳴いた。


「エミリアちゃん!・・・あいつ、ヤバイって。・・・僕たちを甘やかす気、ゼロだもの!」


「・・・は?」


「僕には分かる!・・・いい?人は二種類いる。甘やかしてくれる人と、甘やかしてくれない人だ!・・・あのロイドって人は、絶対に僕たちを甘やかさないって!」


「そ、そうなんですか・・・?・・・そんな事を言ったら、お兄様もマナーの先生も厳しいですよ?あ、あとリカルドも!ほら、お礼状やれって押し付けられたし!」


「・・・はぁー。分かってないなぁ。ユリウス君なんか、厳しいフリだけで、甘々だよ。なんだかんだでエミリアちゃんが困ってると、甘やかしてくれるだろ?・・・マナーの先生だって厳しいけど、最後は勘弁してくれるしさぁ。・・・リカルドは・・・お礼状は僕も嫌だけどさ・・・あいつはエリオスの次くらいには甘いって。ああ見えて、僕たちが困った事になると、すぐ泣いちゃうし。」


「さ、さっきの護衛さんは、そうじゃないと?」


「うん。アイツは甘やかしてなんかくれない。僕たちを厳しく躾てやるって位の気持ちでいるよ。」


ええっ・・・。それは嫌だなぁ。

護衛って、横に控えてて、危なくなったら助けてくれる感じじゃないの?・・・躾るとか意味わかんない。


「そ、それは嫌ですね・・・。そもそも、私たち大人ですし!・・・そんな、躾られるほど、悪くないですよね?」


「・・・でしょ?・・・ついでに断言しとくとさ、僕は人生二回目だから、今世は楽してやるって決めてんの。だから、甘えられる人に全力で甘えて、寄っかかって生きるの!・・・僕は頑張ったりしない!この人生は、楽しい事しかしないって決めてる!」


・・・うわぁ。クズい。

さすがリチャード様だ・・・。


でも・・・。

わかる。わかります。リチャード様。

私も、全く共感しかないっす。そう、今世は楽、したいですよねー!


頑張るとかさ、人生一回目の人がやったらいいよねぇ・・・。私たち、どっちかって言ったら、ボーナストラック的なものだし『生きてくれてありがとう』くらいの気持ちで、優しい目で見てて欲しいわ・・・。


「・・・クズいとは思いますが、わかります。」


「・・・エミリアちゃん、君も大概だよね・・・。・・・でも、分かってくれてありがとう!・・・とにかく、あの護衛はチェーーーンジなのっ!嫌でしょ?あんな怖いやつに、いっぱい怒られるの!!!」


「い、嫌です!!!」


「だから、エミリアちゃんは僕に協力して!・・・いい?あいつを追い払おう!」


「はい!!!」


◇◇◇


そんな訳で、私とリチャード様のロイド様追い払い作戦が始まったのだが・・・全然上手く行かなかった。


護身術の時間をサボったり、護衛をまいたりと色々やったが、ロイド様は私たちを直ぐに見つけて、捕まえてしまう。


そして、それから罰として、筋トレさせられたり、お屋敷のお庭を走らせられたり、挙句にはお礼状書きや生活態度までロイド様に命令されるのだ。


「はぁ、はぁ、はぁ。・・・リチャード様、はぁ、もう、ダメ。もう、走れない・・・。」


私は薔薇の茂みの側にへたり込んだ。

リチャード様は、前世でランニングを趣味にしていたというだけあり、早くはないが割と長く走れる。

・・・今は、ロイド様の護身術の講習からバックレて、薔薇園の奥へと逃げている所だ。


・・・ロイド様は、リチャード様が言った様に、全く甘やかしてはくれなかった。


常に、ベストを尽くせ!

常に、努力あるのみ!

やって当然。やらないヤツはダメなヤツ・・・そんな感じの、超鬼教官だった。


そのうえ、頑張ったって、褒めてくれたりはしない。さらに上を目指せ!みたいな感じで、常に厳しく睨んでくる。・・・私もリチャード様も、絶対に褒められてのびるタイプなのに。分かってない!!!


しかも、ロイド様は、おふざけや冗談もお嫌いらしく、ちーっとも楽しくないのだ!


「エミリアちゃん、大丈夫?」


「走りすぎて、吐きそうです。」


「茂みに隠れてみる???」


「さすがに、薔薇は怪我しちゃいますって。」


私がそう言うと、リチャード様は苦笑して私の隣りにドサッと座った。・・・また、こんなお庭に二人で座り込んでいたら、怒られるのかなぁ。ま、いいけど。


「はー。アイツ、なんとかならないかな?リカルドにいくら嫌だって言っても、替えてくれないんだよね。」


「私もお兄様に、泣きついてみましたが、『それならスチューデント家に帰るんだな。』って・・・。護衛さんが来たら、少しは遊びに行けるって言ってたのに、最近じゃマナーやって、護身術やって、お礼状書いて・・・まったりすら、できてないですよね。」


「・・・サロンの安楽椅子も撤去されちゃったし、僕はそれも不満だよ!」


「・・・お父様のとこ、行きます?」


「えっ・・・それもなぁ。・・・でも、こんな厳しいの嫌だしなぁ・・・うーん・・・。エリオスの方が甘やかしてくれるだけマシかも?」


私たちは顔を見合わせた。


・・・監禁も溺愛も嫌だが、お父様は怒鳴ったりしないし、安楽椅子も出してくれるだろう。嫌だと思っていた監禁も、部屋で存分にまったりできるって事ではないだろうか?

溺愛は色々と嫌だけど、リチャード様もいるし、お兄様みたいにガッツリは喰らわなない気がする。リチャード様と私で半分こ・・・多分、リチャード様が捕まってる間は私はフリーだ。そして、その逆もしかり。


リチャード様も同じ様に考えたのだろう。顔を合わせ、肯き合う。


「リチャード様・・・私、お父様に会いたい!」

「エミリアちゃん、僕もエリオスに会いたいよ!」


私たちは、打算的にそう口にした・・・。


ガサガサガサ。


その時、奥の薔薇の茂みのが揺れた。


と、思うと・・・何故かお父様がこっちに満面の笑顔で向かってくる。


「リチャード!エミリア!・・・私もだよ!」


・・・なんだろう。感極まった声で叫びながら、お父様は、こちらにドンドン近づいて来る。


「!!!」

「!!!」


・・・色々・・・ヤバい。

私とリチャード様は逃走する為に、少し腰を浮かした。


・・・が。


次の瞬間、お父様にリチャード様ごと抱きしめられていた。・・・ものすごい力で。


「痛い、痛い、痛いって!やめてエリオス!」

「お父様っ!く、苦しいっ!」


「・・・やめない。はぁ、私の天使・・・。」


お父様は、うっとりとそう呟くと、更に腕に力を込めた。・・・だから、痛いんだってば!


・・・うーん。・・・やっぱりお父様の愛は重いなぁ。隣りのリチャード様は諦めたのか、目から光を消し力を抜いて、されるがままになっている。・・・流石です。長年お父様からしつこくされてませんな、リチャード先輩。


「お、お父様、今日は何でこちらに?」


私は、とりあえず開放されたくて、そう尋ねた。


お父様は、ハッとして、私たちを離すと、「今夜は本の発売日だろ?・・・あんなに欲しがっていたのに、忘れたのか?」と少し心配そうに言った。


・・・あ。


忘れてました。

・・・毎日、毎日、毎日・・・ロイド様に怒られて、ビシビシと指導され、気がついたら・・・もう、そんな日になっていたのか。


リチャード様も、思うところがあったのだろう、ため息を吐いた。


「エリオス、僕たちは今ね・・・すごく辛いんだ。新しい護衛の方と、あまり合わなくて・・・。それで、毎日を悲しい気持ちで過ごしている。・・・どんなに、僕がエリオスに会いたかったか・・・分かる?」


リチャード様は、儚げに笑いながら雰囲気たっぷりにお父様に語りかけた。目を見開いて真摯に聞き入るお父様。


・・・ナイスでーす。リチャード様。


「・・・リチャード。」


「お父様・・・私もです。私もお父様にお会いしたかった。毎日が・・・辛すぎて。大好きなお父様に・・・お会いしたかった・・・。」


私もノッてみる。

自分で自分の手をギュッと捻り、少し涙目になった状態からの上目遣い。・・・どうよ、お父様?


「エミリア・・・。」


お父様はやや屈む様にして、私たちに手をそっと伸ばしてきた。その手は少し、震えている。


・・・ニヤリ。


これで、お父様は私とリチャード様のお持ち帰りを決定しただろう。


やはり、チョロい。

やっぱり、一回目の奴らはチョロいぜーーー!

ハッヒャー!!!ハハハハハー!!!


グッバイ、ロイド様ーーーー!!!


・・・そう私たちがロイド様からの逃亡を確信した時。


ガサガサ。


また奥の薔薇の茂みのが揺れたと思うと、大きな人影が近づいてきた。


・・・ロ、ロイド様。


ロイド様は相変わらずの引きつった様な顔・・・どうやら、これは彼の中では笑顔らしい・・・を浮かべつつ、こちらへと近づいてくる。


「こんにちは、エリオス様。・・・その二人に騙されてはいけません。二人は貴方を利用する気なのだ。」


「・・・貴方は・・・?!・・・ん?・・・ロイド殿、ロイド殿ではないか?・・・ああ、お会い出来て光栄だ!お噂はかねがね・・・。・・・ん???何故、貴方が此処に?」


「私は今、エミリアとリチャードの護衛と指導をしている。・・・二人は悪鬼みたいなものだ。」


「ロイド殿が二人の護衛を?・・・しかし悪鬼とは・・・?ロイド殿、二人は私の天使だ。」


「・・・見た目は確かに。特にリチャードは美しいな。エミリアはまぁ普通だが、親から見れば天使なのだろう。・・・エリオス様、私に二人をお任せ頂けないかな?きっと正しく導いて差し上げよう。」


ロイド様は、引きつった顔をさらに引きつらせて、お父様にそう言った。


はっ、普通で悪かったな。普通で。

確かにリチャード様と比べてたら普通かもだけど、わたしだって、可愛い・・・気がする。

す、少なくともリカルドは「可愛い」って言ってくれるもん!!!・・・ごくたまにだけどさ!!!


・・・ロイド様は、護衛になると直ぐに、私とリチャード様に敬称を付けなくなった。リチャード様は何度も抗議したが、敬称とは紳士淑女に付けるもので、躾られてない猫の様な私たちには必要ないと、冷笑された。


・・・てか、猫って躾られるの?

躾ても犬みたいに忠実に言う事を聞く様にならないと思うけど!


「・・・ロイド殿、二人は私が連れて帰り守る。」


お父様は、私たちを隠すように前に立つと、ロイド様にキッパリと言い切った。


「エリオス様・・・貴方では、二人をずっとお守り出来ません。お仕事がおありでしょう?・・・私と手合わせ願います。いかに私がお二人を守るに相応しいか、お見せしましょう。」


ロイド様は不敵に笑い、お父様を促した。

・・・お父様は面白そうに笑うと「では、お手並拝見と行こうか。」・・・そう言って、ジャケットを脱ぎ捨て、首元のタイを緩めた。


あーあ、これ・・・ダメなやつ。

脳筋が拳で語り合ったら、分かり合っちゃう、そんなヤツ・・・。


私にはもう、嫌な予感しかなかった。






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リチャード・エミリア・ロイドの
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