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奥様とお義父様は監禁されたくない エミリアside

お父様が、一足先に帰宅すると、リチャード様が私に文句をつけてきた。


お兄様とリカルドはお茶を飲みながら、私たちをスチューデント家に送る為の打ち合わせを始めた。

・・・マジかよー。リチャード様を生贄にして、逃れられるかと思ってたのに!


「エミリアちゃん、裏切ったよね・・・。」


リチャード様は、お綺麗な顔を歪ませて、私に詰めよってくる。


「そ、それは・・・。・・・裏切りました、スイマセン。・・・で、でも・・・ですね。『もしかすると、お父様から逃げられるかもです。』」


私は最後の部分を、コソッとリチャード様に耳打ちした。


「えっ・・・???『に、逃げられるって、どういう事?』」


「えっっと・・・。『リカルドとお兄様が、あやしいんです。探って弱みを握ったら、ここに残れるようにしてくれるかも・・・!』」


リチャード様は目を見開き、打ち合わせを進める二人をチラリと確認した。二人はコチラの様子は気にせずに話し込んでいる。

・・・私とリチャード様は、二人ですり寄ってコソコソ話す事にした。


「うーん・・・それ、僕たちには手ごわくない?」


「そ、そうなんですけど・・・。お父様のあの状態、やばいんですよ!・・・あれって、自分が家に居ない間は、私たちを部屋に監禁する気です!安全の為だとかって言って!おトイレも部屋でしろって!!!」


「ふーん。・・・それで僕を生贄にしようとしたの?エミリアちゃん酷くない?・・・でもさ、さすがにエリオスでも、そこまで本気の監禁はしないんじゃない?『お庭にでるなよー』くらいじゃないの?・・・まぁ、エリオスに、しつこくはされそうだけどさ・・・。」


「・・・監禁、されるんです!前例があるんですよ!・・・お兄様がやられたんです!!!」


「へ?・・・ユリウス君???」


私は、チラチラとお兄様とリカルドを確認しつつ、話を始めた。・・・これはお兄様にバレたら、多分『切り落とされる』やつ。だから、慎重にいかねば!!!


「・・・お兄様って、女顔ですよね。子供の頃は、本当に女の子みたいで可愛らしかったの覚えてます?」


「そうだったね・・・。確かに、ユリアが子供の頃にそっくりだったな。・・・学園に入るくらいまで、女の子と良く間違えられてたくらい、可愛かったね。」


「そうなんです。でも、お兄様は、頭が良くって、めっちゃ強かったから、好き勝手にお屋敷を抜けだしたりしてたんですよ。・・・で、可愛い女の子だと思われて、変質者に誘拐されかけたんです。もちろん、お兄様は女の子じゃないし、強いから自分で逃げ戻ってきたんですけど・・・。結局は、お父様に知れて。・・・監禁されました。」


「そ、そんな事が?・・・だ、大丈夫だったの?ユリウス君。トラウマになったりは・・・。」


「してませんよ。そんな可愛い性格なら、魔王なんて言われてません。・・・変質者は半殺しにしちゃってたし、ケロッとしてました。・・・でも、監禁はトラウマになったと思います。」


「え???」


「お父様がお仕事の間は、ずーーーっとお部屋に閉じ込められてて、おトイレさえ出して貰えず、バケツですよ、バケツ!で、お父様が帰ってきたら、もうずーーーっとお父様に付きまとわれ、もちろんご飯だって、お風呂だって、寝るときだって、ずーーーっと離してもらえなかったんですよ?・・・たしか、お兄様はその時はもう10歳か11歳くらいでしたのに、お父様はお兄様を赤ちゃんみたいに抱いて歩いてましたから!」


「・・・えええ・・・。さ、さすがに、僕たちは大人だし、そこまでは・・・され、ない、よ?ね???」


「ええ、そう思いたいですけど・・・お父様、ですからね。」

「ああ、・・・エリオスだものね・・・。」


私たちは顔を見合わせた。・・・これは、やるしかないのだ!なんとしても!お父様に監禁なんかされたくはない!!!私たちには尊厳がある!!!


「・・・エミリアちゃん。僕、人生二回目、だから、ある意味、人生のスペシャリストだからね。君の良きアドバイザーになってあげよう。・・・ユリウス君は隙がない。狙うなら、リカルドだ!」


・・・ええと。

それ、言われなくても分かってますけど。・・・リチャード様、めっちゃドヤ顔になってますけどさ。


「と、とにかく、カマかけてきます!リチャード様は、ちょっと出てて下さい!」


私がそう言うとリチャード様は、頷いて、部屋を出て行った。


リチャード様が出て行った音に気付いた、お兄様とリカルドは、何も言わずにそれを見ていた。


・・・やっぱり、なんかあやしい。


「リカルド、お兄様、どうしたんですか?」


「どうもしないよ、エミリア?」


お兄様は通常通りだ。リカルドも無言で頷く。


「・・・私、お兄様とリカルドが何か隠してるって、知ってます。」


「エミリア、どうしたの?何もないよ?」


リカルドがほんの少し慌てた声になっている。

お兄様は、いつものアルカイックスマイル。


「・・・別に良いんですけど。でも、お兄様がこの結果に満足してるのは確かですよね?何だろう・・・お父様が怒った事なのか、リチャード様と私が帰る事なのか、それとも別の事なのかは分かりませんけど・・・。」


私がそう言うと、お兄様は相変わらずの貼り付けた笑顔のままだ。・・・でも、私には動揺してるのが分かる。


「エミリアは少し怖い思いをしすぎて、疑い深くなっている様だね。スチューデント家に戻るまでは、リカルドを早く帰そう。リカルドに全力で甘えたら良い。・・・さぁて、今日は昨日の後処理がある。すまないが、今日は少しリカルドを連れていくよ。」


「ま、待ってよ!お兄様っ!」


そう言うと、お兄様は、リカルドを連れてササっと行ってしまった。


クッソ・・・。アイツら、やっぱり何かあるっ!


なら、やはりリカルドを問い詰めるしかないだろう!・・・それに、暫くは早く帰ってくるんだよ、ね?


・・・覚悟しときなさいよ、リカルド!お兄様!

二人の弱みを暴いて、ここに残れる様にしてやるわっ!!!


監禁なんて、絶対に嫌よーーー!!!


私が二人が出て行ったドアを睨みながら、決心を固めていると、そのドアがゆるゆると開き、リチャード様が戻ってきた。


「ねぇ!エミリアちゃん。・・・逃げられちゃったんじゃない?」


「・・・大丈夫です。私の作戦どおりですわ!」


「え?・・・作戦?」


「お兄様は、私たちがスチューデント家に帰るまでの間は、リカルドを早く帰すと言ってました。・・・つまり、今夜からは、リカルドは早く帰ってきます。お兄様は居ません。・・・リカルドだけを追い詰める事が可能なんです。」


「そ、それは・・・天才なの!エミリアちゃん!!!リカルドだけなら、余裕だよね!!!」


「そうです!だから帰ってきたら、私たちでリカルドから、サクッと秘密を聞き出しましょう!!!」


そう張り切って言うと、リチャード様はふと「ん?」と首を傾げた。


「ねぇ・・・自分の息子を自慢する訳じゃないんだけどさ・・・。リカルドって、かなり優秀だよ?」


「もちろんです!・・・私も自分の旦那様を自慢する訳ではありませんけど、リカルドはしっかりしてて、抜け目もありません!それでいて、優しくって、ちょーっと可愛いとこもあって、たまには甘かやしてくれたりもして、それから・・・。」


「エミリアちゃん!!!いいから、それっ!お話進まないからっ!・・・あのさ、リカルドって、ユリウス君と比べたらマシなだけで・・・そんなに、簡単に秘密をバラしてくれたりは・・・しないんじゃないかな?」


「!!!」


・・・そ、そうかも!お兄様と比べたらチョロく感じたけど、全然チョロくないわ、リカルド。

・・・そもそも、秘密を聞き出すって、どーするんだ?『何か隠してますね。』『隠してないよ。』・・・これじゃ、ラチが開かないよね?!!


「ど、どうしましょう?リチャード様!・・・『デジ甘』の発売日は来週なんですよ?・・・一週間でどーやってリカルドから秘密を聞き出せば・・・?」


リチャード様は、暫く考え込んだ。

・・・頼むよ、人生経験豊富なリチャード様!・・・って、私もだけどさ・・・!


「よし、飲ませよう。」


「はい?・・・またお得意の睡眠薬ですか?」


「エミリアちゃん!やめて!睡眠薬を飲ませるの、お得意じゃないしっ!・・・お酒だよ。」


「お酒?」


「そう!リカルドをベロンベロンに酔わせて、秘密を聞き出そう!!!」


「え・・・リチャード様、マジ天才。」


リチャード様が輝いて見える。・・・これは、すごい良いアイデアなのではないか?・・・酔っ払って前後不覚になってるリカルドなら、簡単に秘密を明かしてくれそうではないか!


・・・確か、リカルドはお酒が割と好きだった!!!用意してあれば、飲んでくれるだろう!


私とリチャード様は、美味しいお酒(ちょっと高価)を用意してもらう為に、家令のマックさんに、お願いしに行った。

マックさんは、少し不思議そうな顔をしていたが、多分いつも節約ばかりの私が、高価なお酒を手配して欲しいなどと言い出したから、驚いたのかも知れない。


「・・・ところで、リチャード様って、お酒強いんですか?」


「えっ?・・・そんなに強くないよ?・・・まぁ、一杯も飲めば気分良く酔える省エネボディだからね、僕は!」


リチャード様は、何故か誇らしげに言った。


「え、えっ?・・・リカルドは一人じゃ、あんまり飲まないですよ?嗜む程度で。・・・誰かがお付き合いしないと、ベロベロになる程は飲まないのでは???」


「あっ!!!そ、そっか。・・・エ、エミリアちゃんは、飲めるの???」


「・・・結婚式の日に、浮かれてワインを数杯飲んで、その晩に寝ゲロして以来・・・飲んでないです。・・・多分、そんなに強くないですね・・・。」


「!!!・・・色々、衝撃的なんだけど。・・・えっ???寝ゲロって???・・・結婚式の夜って事だよね???えっ?えっ?夫婦になって、初めての夜だよね???・・・えっー!?リカルド、可哀想すぎない???」


あ・・・余計な事を口走った気がする・・・。


「そ、それ以上、言わないで下さい!!!」


「うわぁ・・・。花嫁・・・ならぬ、ゲロ嫁・・・。」


「リチャード様!!!・・・ひ、酷いです!本当の事だけど!!!で、でも、これ笑えないんですから!・・・吐いたものが喉に詰まって死にかけて、リカルドが口に指を入れて掻き出してくれなきゃ、本当に私、ヤバかったんですよっ?」


「・・・ぶ、無事で良かったね?」


リチャード様の哀れむ様な目が・・・つらい。なんだか、恥ずかしくて死にそうだ。


「そ、それはさておき、リチャード様、この計画ですが・・・。」


「・・・うん、破綻してるよね・・・。」


なんとなく、さっきマックさんが不思議そうな顔をしていた訳が理解できた・・・下戸が何で酒を欲しがるんだ?ってトコだったのだろうな・・・。


「エミリアちゃん・・・とりあえずさ、飲もう?」


「・・・え?」


「特訓だよ、特訓!飲めば強くなるらしーよ?」


そ、そうかな?飲めるか飲めないかなんて、アルコールを分解できるかどうかで決まる気がするけど・・・。


ま、いっか!


「せっかくお願いした高いお酒ですもんねー!飲んでみましょうか、リチャード様!」


そう言って、私たちはリカルドの帰りを待たずに、夕食へ向かった。





この世界での成人は16歳なので、エミリア達はお酒を飲んでいますが、現実世界ではお酒は20歳になってから!

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