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きみおもふ  作者: 豆蔵。
1/13

いち、影だった男

 夏も終わりへと移る前、一層と蒸し暑くなる時期が来る。

 蝉は鳴き続け、草はこれ以上なく青々しく育ったその身を風にそよがせる。

じじじ、ざざざ。

夜と云うのに、それらの音は止む気配がなかった。

もう随分と月が高い所へ昇っている。

 淡く白い光が、僅かに開けられた襖の隙間から、ななめに差し込んでいた。

 残り香へと変わりだす夏の香りと、畳の匂いが濃く混じっている、いい夜だった。

 



膳を前に、神威(かむい)は頭を垂れていた。

 ふっくらと炊けたこわめしや、焼き色見事な、薫り高いきのこ。旬野菜の塩漬け、ざっくりと和えた山菜、ツミレの吸い物に添えてある香味の香りが、少し離れた所にいる神威にまで漂ってくる。果ては、瓶子に酒まであった。

 ちろちろと燃える炎が、室内を照らしている。神威と、彼の膳。それと(かね)(やす)。神威は面を上げると、舐めるような灯りが鉦靖の頬を染めるのを眺めた。

 本来ならば、お目通りを許されるのは日が差す間。夜訊ねるのは、女に会いに行く時か、忍ぶ話をする時だ。

 「時に。鉦靖様においては、お元気そうで何よりでございます」

 挨拶を述べた神威に鉦靖は笑って、

 「何を今更格式ばった事を」

 と、扇で膝を弾いた。

 「そちと違って、わしはあまり腹を探りあうのは得意でない。世辞などいらぬ」

 「左様でございますか」

 神威の頬が緩む。

 藤原鉦靖。

 今京都でもっとも栄えている一族に身を置きながらも、肩肘張らない、実直な男だ。些細な事を気にせぬ、子どものように大らかな心を持つ男だが、どこかに芯の強さをにおわせる。何より、潔い彼の性格を神威は好んでいた。

 彼はカラカラと声をあげて笑いながら、

 「それに本来ならば、そちの方が上の位よ」

 云いつつも、足を崩して片膝を立てる。

 そんな鉦靖の仕草に微笑すると、神威は小さく首を横に振った。

 「わたしのそれは、過去の功績を称えられての事で、今は名ばかりです。そもそも、位がどうのと云う話ほど無意味な事はございません。 ……鉦靖様は、わたしの命の恩人。礼儀を尽くすのが当然かと」

 「もったいないの。そちは賢いわりに、ちと生真面目過ぎる」

 「鉦靖様が、砕け過ぎているのです」

 「それは云えておる」

 あっさりと認めた彼はもう一笑いすると、繕うように、「さて」と声音を変えた。

 「今宵、こんな夜更けに出向いて貰ったのは他でもない」

神威も改めて姿勢を正すと、鉦靖は寄るようにして身を乗り出した。

 「そちは、我が娘茶々(ちゃちゃ)を覚えておるかえ?」

 「もちろんでございます」

 神威は答えた。

 艶やかな黒い髪に、ほんのりと朱色の頬。紅をひいたような赤い唇。長いまつげが彩る、可愛らしい目元の持ち主だった。

別れを惜しんで、彼女が好きだと云っていた鬼灯を贈った時に見せた笑顔は、華がほころぶように美しくて、どれだけ時を過ごしても、この笑顔だけは忘れずにおこうと何度も何度も胸に留めたものだ。

神威が会ったのは随分昔だが、幼女ながらに気品があった。

 だが、神威が今も茶々を鮮明に記憶する訳は、それだけでない。

 「茶々様はわたしにとって、鉦靖様にお並びする、命の恩人でございます故」

 「……傷は、癒えたかえ?」

 鉦靖が、手にしていた杯を置いた。

 神威は瞳を伏せる。

 「雨の日には痛みます」

 神威の背中には、肩から腰にかけて、一文字の刀傷が走っている。

 それは彼が帝の影をしていた折、謀反者によって付けられた物だ。神威を影とは知らずに事を起こした犯人はその場で臣下達によって取り押さえられたが、神威の傷は致命傷だった。

 燃えるような痛みを背に、その傷に倒れたまま、ざわめく内裏とは裏腹に、しとしとと静かに降る雨を見ていた。

 死はすぐ傍にあった。

 大丈夫か、と聞かれた覚えがある。

 その声に、彼は問い返した。

 



――帝は?




――ご存命だ。




 良かった、の一言は、おそらく言葉にはなってなかっただろう。




 ――もう彼は駄目だ。




神威は途切れる意識の中で、ひそひそと囁きあう人々の声を聞いていた。そんな中で、雷が落ちるような、覇気在る声が響き渡る。




 ――茶々を呼べ!




力強い腕が、神威の身体を抱き起こした。




 ――だが鉦靖。彼はもう…。




 ――ああ。医者の手でも無理だろう。だが茶々なら……我が娘なら、希望があるかもしれん。

 



そう云って、神威の身体を抱きしめる。




 ――死ぬなよ、若人! 影として終わるには、その命早すぎる!




 茶々が来るまでどれくらいの刻だったのか。鉦靖が呼ぶ声を聞き逃さないよう、神威は必死で意識を繋ぎとめていた。背中が痛む。いっそ意識が途切れた方が楽なのではないかと何度も思った。そのたびに、戒めるように鉦靖が強く抱いた。

 蜘蛛の糸を掴むほど頼りなく、神威を繋いでいた意識すら朦朧としはじめた時、リンと、耳元で鈴の音が鳴った。




 ――なんと、むごい。




 少女の声だった。

 神威を包んでいる霞がかかったような世界で、少女の声は、清い水のせせらぎのように心地よく響き渡った。

 ふと、自分が水辺にいるのではないかと思った。

 すると、たちまち霧が晴れて行くように景色が鮮明となっていく。気がつくと神威は、河辺に立っていた。

 背丈の低い青葉が茂り、さらさらと流れる水の河底には、色とりどりの花が咲いている。季節感なく咲き乱れている花々は、水面の動きにあわせて右に揺れ、左に揺れ、まるで風にそよいでいるようだった。

 不意に、背中に誰かの指先が触れた。

 あれほど痛みと熱を持っていたのに、今はまるでそれを感じない。

 すると、背後で少女の声が響いた。




 ――河に目を奪われてはいけませんよ、神威殿。




 振り返るが、誰もいない。けれども背中を伝う指の感触は確かにあった。




 ――目を閉じて、背に触れる指に意識を傾けてください。わたくしが書いている文字を、

言葉にするのです。




 それは、神威にはまるで分からない言葉だった。

が、不思議なことに、云おうと思えば口から出る。だのに、神威は自分が何と云っているのかがまったく理解が出来ない。

 同じ言葉を繰り返すうちにだんだんと覚えてきて、そのうち、指が示す文字を追わずとも唱えられるようになった頃、背中に触れていた指が突然手に変わり、直垂(ひたたれ)を掴んだ。

 さすがに驚いて瞳を開けると、そこは布団の上で、




 ――お目覚めになりましたか? 神威殿。




 神威を見下ろすようにして、一人の少女が微笑んでいた。

 それは紛れもなく神威を河で呼び止めた声で、彼を現世に連れ戻した人物である。

 ポカンと見上げていると、彼女は小首を傾げて、ああ、と何かを思いついたような声をあげた。




 ――三途の河の花々が惜しくなったのでしょう? ですが、ほら。




 そう云って指で示した先には、開け放たれた襖の先で、夏草が風に揺れていた。背が高く伸びた草の間に、ボタッと橙色の実を付けた鬼灯が咲いている。

ジジジ、と、やかましく蝉が鳴いている。




 ――現世も、いい所でございますよ。




 まことに、と、神威が云うと、彼女はふっくらとした唇を少し持ち上げ、




――お目覚めがよろしくて、何よりです。




改まったように、頭を下げた。




――申し送れました。わたくし、藤原鉦靖が娘、茶々でございます。このたびは帝を御守りしてのご負傷、立派でございました。神威様の傷が治るまで、精一杯ご尽力させていただきますゆえ、ゆるりとおくつろぎ下さい。




 歳のわりに、物腰の落ち着いた少女だった。

 それから傷が落ち着くまでの半年あまりの時を、茶々の住む、鉦靖の屋敷で過ごしたのだが、彼女は本当に良く彼の面倒をみた。

水を汲み、身体を拭き、飯を出し、神威の調子がよければ散歩の共もしてくれた。

 風を聞き、花を見、草の香りを嗅ぐ夏。

 あんなに心温まり穏やかな季節を、後にも先にも神威は知らない。

 あれから五年。

 茶々が小さい頃に亡くなった母親の後妻として若い妻を娶った後、神威が養生していた山荘を降りて、都で暮らし出したという話しを彼は人伝に聞いていた。

 が、帝の影武者役を退陣して以来、都を離れて暮らしていたため世上には疎い。

 「茶々様は?」

 探るような口調で訊ねた神威に、鉦靖は隠すことなくため息で返した。

「すっかり荒んでしまった」

「荒む?」

 鉦靖の云った意味がのみこめず、思わず聞き返す。

 それほどまでに、茶々と、荒むという単語が噛み合わなかった。

 「わしが嫁を取ったことは知っておるかの?」

 「風の噂で」

 「まだ若い嫁なのだが、これがどうも原因らしい」

 「つまり、後妻様が…」

 「うーむ…。馬が合わん、と、申せばいいか」

 家の事情を語るというのは、どうにも口が重くなる。言葉を濁すように喋っていた鉦靖だが、真剣な顔で見つめ返してくる神威を見ると、弾けるように笑った。

 腹をくくるように、太ももを叩く。

 「茶々には、茶々にしか理解できない世界がある。長年茶々と暮らして来たわしや、茶々によって命を救われたそちは、その片鱗を見たはずじゃ」

 一呼吸置いて、

 「だが、それを理解しようとせぬ者はごまんとおる」

 鉦靖は至極やるせなさ気に眉尻を下げた。

 「つまり、後妻様と茶々様の折り合いが悪かった、と?」

 「悪い所の話ではない。一之宮(いちのみや)は茶々の触れておる世界を物の怪、異形の物じゃと怖れ、受け入れ難いものだと決め付けておる。最初こそ、茶々を改めさせようと躍起になっておったようじゃが、茶々が縁を切れないと分かったきり、口も利かんようになった」

 「なんと」

 「初め茶々は、調子を悪くしたとわしに云っての。都に降りて来て二ヶ月目程の事じゃったが、山荘に帰りたいと申してきた。身体と心を養生するためにも、住み慣れた山に一度戻っていいか、と」

 「それで」

 「戻ったきり、引きこもった」

 「茶々様…」

 呆気に取られるとは、まさにこのこと。

 神威の記憶の中で、茶々は鈴の音のように可憐な少女であったが、母の根性の悪さに耐えかねたとはいえ、彼女も負けてはいない。

目には目を、歯には歯を。

茶々の篭城は、鉦靖もさぞ驚いたに違いない。

 話を聞けば、蝋の灯りに照らされている鉦靖の顔が、以前よりもずっと老けたような気がする。

 「茶々に付けたお供は、次から次へと追い返されて戻ってきてな。どうやって生活しているかも分からん。心配になって遣いの者を寄越せば、不思議なことに、山荘にまるで辿り着かんと云う」

 「……辿り着かない?」

 「ああ。目の前に家が見えているのに、歩けども、歩けども距離が縮まらない。気がつけば同じ場所に戻って堂々巡りだそうじゃ。おそらく茶々が何かしておるのだろう」

 「そんな、茶々様が…」

 有り得ない、と思う。

 だが、ほとほと困りきった鉦靖の姿が何よりの現実を物語っていた。

 「茶々は不思議な子での。小さな頃から、人が知らざる世界を知っていた。人が触れられぬ物と触れておうた。だがそんな事より何より、わしは、そんな世界を愛している茶々を、愛おしく思っておる」

 「ええ」

 愛しい我が子の姿を胸に描いたのだろう。皺の刻まれた鉦靖の目元が、優しく緩む。

 まだ神威が内裏にいた頃、囲われているような生活を送っていた彼でさえ、茶々の噂を聞いた事があった。

 藤原鉦靖の妻は物の怪で、娘は彼女の血を引き、異形の力を持っている、と。

 その時は自分に関係のない話だったし、興味も湧く話ではなかった。

 だが、実際自分が死の淵から救われたことといい、言葉では上手く語れぬも、彼女には不思議な力があるのを目の当たりにしている。皆が噂をしている全貌は定かではないが、茶々の力は本物だ。

 それでも茶々を知っている今、彼女が異形だと云う人がいれば、きっと神威は腹を立てるに違いない。

 それは、その不思議な力で神威を助けてくれた彼女に向ける恩義でもあり、共に過ごしている間に垣間見た彼女の世界が、恐ろしいとはちっとも思わなかった事にもある。

 茶々にとって、人が知る由もない世界と過ごす事は、綺麗な花が咲いているのを見れば美しいと云い、突然雷が鳴れば怖いと怯えることと大差ない。たったそれだけの事なのだ。

 鉦靖においても、神威と似たような気持ちなのだろう。むしろ親として、もっと強い感情だと神威は思う。

 鉦靖は、いつも茶々を堂々とさせていた。

 周りの者が何といおうと、愛を惜しむ事もなく、時には内裏に連れて来る事もあったと聞く。きっと彼の事だ。茶々が何もない所を指差して笑えば、共に声を上げて笑ったのであろう。

 また、茶々を誇りと思っていたからこそ、あの時、神威を救う術を茶々に託した。

 そんな彼が今、途方に暮れている。

 こんな夜更けに神威を呼びつけたのは、人目を忍んでではなく、一之宮の目を忍んだのだと気付いた。しんと静まり返った屋敷に、鉦靖と神威以外の人気がない。彼を迎えたのもまた、鉦靖であった。

 それほどまで事態は緊迫しているのだ。

 「折り合いが悪いのは仕方ない。じゃが、親として、あの子がどう暮らしておるのかが心配でならん」

 それに、と、鉦靖は瞳を伏せた。

 「茶々と一之宮の不仲に気づかなかったわしが、今更云うことでもないが……あの子が一人で傷を背負っているのかと思うと、残念でならんのじゃよ。あんなに素直に世界を見ていた子が、人を嫌い、遠ざけてしまうのが悲しくてならん。………そう思った折、安部清明が尋ねてきての」

 「安部清明…?」

 思わぬ人物の名前が挙がったことに、神威は驚きを隠せない。

 鉦靖もまた、まだ夢かどうかを疑っているような態で、訝しげな顔のまま腕を組んだ。

 「やはりそちの耳にも、安部の者の噂は届いておったか」

 「小耳に挟んだ程度ですが…。若くして陰陽道に通じ、賀茂殿の弟子を経て、陰陽寮に入った今は、かなり特筆した力を見せているとか。帝も重宝しておられるそうで」

 神威が云うと、鉦靖はうむと唸るような声をあげた。

 「賀茂忠行殿の紹介と申して、一人の童子が訪ねて来た。聞けば、安部清明だと名乗る」

 白い古着を纏った少年だった。

 ちょこんと頭を結っており、見た目は童子そのものだったが、威風というか、ただならぬ雰囲気を身にまとっている。

 彼は鉦靖のいる間まで通されると、丁度今、神威が座っているのと同じ位置で、しずしずと頭を下げた。



 ――安部清明と申します。



 「その清明が、次から次へと茶々の事を言い当てていく。果ては、山荘に篭っておる事もピシャリと言い当てた」

 狐に摘まれたような顔で、鉦靖は唇をひん曲げた。

 それ程に信じ難い光景だったのかと思うと、その場に立ち会えなかった事を少々残念に思う。

 神威が素直に驚くと、鉦靖はふと神妙な顔を繕い、声を潜めた。

 「して、本題じゃ。清明が申すに、そちと茶々を会わせればよいと云う」

 「……わたしですか?」

 「ああ。奴が申すに、茶々はそちの命を救った者。深い縁によって結ばれておるらしい。茶々の心を開くには、そちが一番に最適だと」

 「はあ」

 ぼんやりとした返事をしてしまったのは、

 「しかし鉦靖様。そもそも茶々様にお会いする事は出来ないという話ではございませんでしたか?」

 先ほどの鉦靖の話が引っかかっているからだ。

 すると、鉦靖は懐から一枚の紙切れを取り出した。ずいと寄せられたそれを手に取れば、符のようである。

 「符…で、ございますか」

 「ああ。これが、茶々の呪を破ると云う」

 蚯蚓が這ったような模様の中心に、門と一文字記されていた。よくよく見れば、それが模様でなく、小さな文字で書かれた真言だという事が分かる。

 紙を燃やさないよう注意しながら、灯火で照らして覗き込んでいると、鉦靖が畳みに両手を突いた。そのまま深く腰を曲げる。

 「鉦靖様!」

 あまりの驚きに、うっかり符を手放す所だった。

 慌てて握り締めたものの、つい大声を上げてしまう。

 「しっ」

 「も、申し訳ございません」

 長年帝を演じて来た賜物として、ちょっとやそっとでは動じぬ精神を身につけたつもりだったが、鉦靖の土下座は神威の度肝を抜くには十分であった。

 筋を通し、義を重んじる男だとは知っているが、そうやすやすと頭を下げる男でないという事も同時に知っている。彼の茶々に対する想いがいかに背中を押しているかを物語っていて、神威はその堂々たる生き様に感慨を覚えた。

 彼もまた、畳に手を添えると、額を付ける。

 「しかと承りました」

 「行ってくれるか! 神威!」

 「鉦靖様、茶々様は我が命の恩人。その鉦靖様の頼みとあり、茶々様の身の上とあれば、わたしの方からお申し出をしたいくらいでございます。是非にでも」

 「そうか」

 ゆらり、ゆうらり、と揺れる灯火の向こう側でホッと息を吐いた顔は、影がくぼみ、疲れ果てていた。その顔に、僅かな希望が浮かぶ。

 「じゃが。我が娘の事ながら、心して掛かれよ。そちの知っておる茶々とはもう随分と違うであろうし、あの頃よりも強い呪を使えるようになっておる。それに、あの子が一人で生活しているとはどうにも思えん。おそらく、何かが一緒におるのだろう。……それも、人ではない可能性が高い」

 まるで、妖の討伐にでも向かうかのような言い様だ。

 それ程茶々が変わってしまったという事なのか。

 神威は穏やかな笑顔で、そっと首を横に振る。

 「茶々様は、茶々様でございます」

 すると、鉦靖は仏を見たような顔付きになって、心を痛めていた憑き物がすっかり落ちてしまったかのように、一筋の涙を流した。

 「茶々を頼むぞ、神威」


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