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火葬場のファウスト 絶え間ないピグマリオンに関して  作者: 民間人。
煉獄のナルキッソス
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「下手くそ」というスパイス

 突然だが、皆様は、アクションゲームというものをプレイしたことがあるだろうか。

 アクションゲーム……。コマンドの入力によってキャラクターを操作し、随時変化する状況を突破していくゲームだ。多くの場合、反射神経など、運動神経に通ずる能力が問われることの多いこのゲームは、人気のジャンルでありながら、得手不得手を残酷に示すゲームとなっている。


 その残酷さは、私にも容赦のない所だ。私も、この上なく苦手なジャンルであるアクションゲームというものは、どうしても、プレイを敬遠しがちだし、マルチプレイなどあれば絶対にそれをしない。周囲に迷惑がかかると分かっている事を、わざわざする必要はないからだ。


 さて、アクションゲームを楽しむ事が出来る人々は、基本的に高度な技術を持っている……とは限らない。アクションゲームを好んでプレイする層の中には、アクションゲームが苦手な層が一定数いる。それは何故かと常々疑問に感じていたところだったが、最近一つ気づいたことがあったため、こんなものを書くことにした。


 アクションゲームというのは、技術的に劣る人が行うほど、難易度が倍増していく。熟練したプレイヤーや元からアクションゲームが得意なプレイヤーにとってはできて当然のことが、苦手な層にとっては高度な技術であることがしばしばある。例えば、コマンド入力。フレーム単位で入力することが苦手で、焦って全く異なる技を暴発させるなどは、頻繁に起こってしまう。こうした人々は、単純なコマンド入力以外が苦手で、一種の縛りプレイを余儀なくされる事もある。


 冷静な判断も苦手な場合が多いだろう。私などは即死攻撃が一等苦手で、避けられれば良いと分かっていても、避けられないことを考えて焦ってしまうことがある。


 こうした、苦手な層にとって、アクションゲームは非常に難しい。しかし、それだけに、ゲームをクリアした時の感動は言葉にできない。

 しかもそれは、誰かが「クリアできて当たり前だ」と鼻で笑うようなことであっても、この上ない達成感を感じることができる。私は最近になってやっと、この「下手くそ」というスパイスの方に気がついたのである。

 マルチプレイであれば、一層ではないだろうか。私はあまり貢献できないし、場合によっては足を引っ張るが、それでも、彼らは私を一端の人間として扱ってくれる。それを少々大袈裟にいうならば、彼らとの「絆」と、そして物語へと繋がっていく。


 何度も負けて、負け続けた過去を消し去らないシナリオなら尚更だろう。異なる世界線の自分さえ抱えて立ち向かうことができるのは、プレイヤーしかいない。そして、それは、「下手くそ」であればあるほど、強い悲願となっていく。英雄たちが敗れる悲しい哀悼歌を語り継ぎ、次の自分へと託すことができるのである。この極上のカタルシスを感じられるのは、他ならぬ弱さの特権なのだろう。


 敢えて誤解を恐れずに言おう。アクションゲームを楽しみ尽くせるのは、「下手くそ」というスパイスを持っている私達なのだ。大いなるカタルシスと、この上ない救済を感じられるのだから。

 

ゲームを楽しむのに、上手い下手は関係ない、という事です。

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