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存続するという恐怖
私は、積みあがるものを見るたびに、恐怖を感じる事がある。積み重ねてきたものに「罪」を見出すし、何より自分が薄まっていくのを感じるからだ。
もし、この感覚が他者にとっても十分な形を持つ感覚であったならば、もう少し自信を持って話をすることが出来るのだろうか。物を書く出発点と言うのは、様々なのだろうが、私が最近物を書くようになった理由は、苦しい思いを吐き出す場所が欲しかったからだ。
しかし、苦しい思いは物語を積み上げるよりもなおはやい速度で積みあがっていく。日々積みあがる罪を、吐き出すよりもずっと重くなっていく頃、ふと、筆をおろしてしまう事がある。
今が丁度その時で、そうした時には自分がとても空虚な存在なのだという思いに苛まれる。
続くのは労働、労働、労働……。目に見えない敵との戦いも、ゴム付きの紙切れを巻き上げる、蔓延る狂乱のにおいも全てが、私を取り残して進んでいく。
遅くなっていく世界で、重く苦しい、重石だけが積みあがっては、喘ぐ声さえ空虚に響く。一枚の紙切れだ、紙切れが命を救う。




