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火葬場のファウスト 絶え間ないピグマリオンに関して  作者: 民間人。
煉獄のナルキッソス
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「ヒロアカ」問題に見る創作の危険性

 情報化が加速し、グローバルな世界が拡大しつつある昨今、日本のサブカルチャー文化は国際的な評価を得るようになってきている。

 一般の人々が創作を楽しむ余地が拡大し、教養とは異なる領域にも新たな知見が生まれていく中で、漫画という芸術は今後も拡大していくことだろう。

 そんな中、最近、著名な作品「僕のヒーローアカデミア」(堀越耕平著/集英社)において、あるキャラクターの名前が問題になっていることをご存知だろうか。

 詳細は私にも分からないが、キャラクターの名前は「志賀丸太」と言い、この名称が日本帝国時代の人体実験等で悪名が高い「731部隊」を連想させるとして、批判を浴びたという問題のようである。これについて、週刊少年ジャンプ編集部は、「他意はないが、無関係な歴史的事実を連想させることも相応しくないため」当該キャラクターの名前を変更する事に決めたという。

 主人公とのキャラクター名の対比として丸太の名を用いたという主張、また、能力の特徴が命名則となるため無関係という主張には一定の合理性があるものの、私見としては、医者、「被験者」マルタ、など、意図しないで命名をする事は実際にはやや難しいと考えられる。本人たちにしか真相は分からないが、ある程度意図していたと疑われる余地もあるだろう。

 いずれにせよ、こうした主張に対して(毅然とした態度をとるにせよ、ひとまず騒動を収める決断をするにせよ)即座に対応をした編集部及び著者であらせられる堀越耕平氏の判断については、一定の評価がされるべきだろう。

 そのため、この問題について深く言及する事は敢えて出来ない。何故なら、この問題の真相を、私は知る由がないからである。


 寧ろ、私が注目したいのは、この問題に対する周辺部の反応から、創作者に特有の危険性が見出される事である。

 私達物書きというのは、基本的にある種のモチーフを鏤める事によって、作品やキャラクターを比喩的に表現することが往往にしてある。特に、新たな知識を得るたびに得られる新鮮なモチーフは魅力的であり、物語を書く原動力にさえなる。

 しかし、一方で、これらの表現を表現者自身の意図とは異なる形で解釈する読者というのは必ず存在する。まして、読者は作品の全体を把握しているわけでもない。どのように解釈するかなど、作者には把握しきれないであろう。それ故に、創作者には常に、言葉を使う事による危険性が存在する。

 世界が縮小している現代ならば尚更である。私達の言葉は、一つでも危険性を有するのである。このような危険性が私達の中に備わっている事を自覚したとしても、この問題を避ける事は困難だろう。しかし、この危険性を自覚した上で、創作活動を行う事によって、トラブルの拡大を避ける事は不可能ではない。

 自由には責任が伴う。この息苦しい責任こそ、私が自由な風潮を簡単に良しとできない理由であると同時に、自由に対する一定の秩序維持機能でもあるのだ。私達創作者に求められるのは、そうした曖昧な秩序に対応する為の柔軟性なのかもしれない。



いろいろ思うところがあるのは当然だと思います。だからこそ、いろいろな意見を聞く事には意味があると思います。

この問題については、決して軽んじて論じられるべきものではないので、表現は敢えて濁す事で「逃げる」形を取った事を、ご容赦ください。

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