マッチ売り
夜の寒空の下、少女がマッチを売っていた。
「マッチはいりませんか? マッチは…、マッチはいりませんか?」
今にも消え入りそうな、か細い少女の声に、足を止める者は誰もいない。しかし、少女はマッチを売る事をやめない。それが自身の生活の為であり、生きる術だからだ。
「お願いします…。どなたか、マッチを買ってください。どなたか、マッチはいりませんか?」
雪がちらつき始めたその時、少女の前を通りかかった一人の紳士が言った。
「お嬢さんの売っているマッチは、よく火がつくのだなとわかるよ。こんな寒空でも、あなたのくわえタバコには火がついているのだから…」