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えいけん! -問題ばっかの私の映画撮影記!-  作者: コウ
第一章「えいけん分裂」
4/5

第4話「は?」


ため息をつきながら、私は香織と一緒にバス停まで歩いている。

いやもうため息をやめろと言われても、今はやめることができないだろうな。

つい数十分前の出来事を思い返すと

あの気持ち悪さがこみ上げてきそうで、考えるのも嫌になる。




ーーーーーーー




「んじゃさっそく分けようと思うんだけどいい?」


「ああ、やりたいようにやれ」


「どーも」



鏑木君は完全に止める気がないようだ。

このまま前芝の思うままにやっていき、これで本当にいいのだろうか。

でも誰も止めはしない、止める理由が見つからないからだ。



「じゃあ今から一人一人に紙配るから

その紙にどっちに就きたいか書いといて。白紙はなしで」


言い終えると、列ごとに紙を人数分に配り始めた前芝君は

顔がニヤニヤしてて、気持ち悪いという言葉がまさにぴったりだ。


というより、この空間がもう気持ち悪すぎる。

支部長でも、副支部長でもない人が部活を思うがままに操っている。

なのに部活の私物化の他ならない行為に対して、誰も文句を言わない。

ありえない光景に私は唖然するしかない。


「んじゃ、時間取るんで書き終えた人から前に持ってきて。

あ、ちなみに周りで相談してもいいけど、自分のことだから

自分で決めた方がいいと思うよ、以上」


事が思うように進んで満足な前芝君は席に戻っていく。

ちゃんと釘も刺して。


あ、この後のことを説明するまでもないが紙を回収し終えた前芝君は

嬉しそうに笑い、「じゃあ次の部活までに集計しとくねー」と言って、

帰ってしまった。

んで、色々ツッコみたいけど今日は疲れたからいいやってことで

お開きに。




ーーーーーーー


「ねえ、香織」


「何?」


「聞いてもいい?」


「どっちにしたかはなしだよ」


あ、バレてました。てへっ。

まあ可愛げに舌を出してウィンクしたりはしないよ?女子大生だし。

香織は一向に寂しそうな顔を変えず、ちらりと私の方を見た。


「有紗は....嫌?」


「うーん、嫌っていうかなんかさ、気持ち悪かった」


「気持ち悪い?」


「うん、だって前芝君の思うがままになんか進んでいったじゃん」


「まあ、そうだね。けど気持ち悪いまでは思わなかったな」


香織は目線を私の方から空に変えて考え込むように呟いた。

自意識過剰なのかな、うーん。

と、まあ考えこむのはここまで。バス停が見えてきて、学バスも止まっている。

私達は駆け込むかのようにバスに乗り込み、運転手にお願いしますと一言言って

席に座る。私達が乗ったのを確認したかのように、ドアが閉まり、バスは動き出した。


「香織はその..部活に残りたいの?」


「私?うーん..内緒。来週まで待ってて」


「いじわる」


「そのほうが色々納得いくでしょ?」



楽しげに語る香織が何を考えているかなんて誰にもわからない。

私だって、こういうふうに相手を面白がっていじれる性格なら

きっと色々考えることができるようになったと思う。

けれど、昔からどうにも人に対して遠慮がちになったり、

あんまり自己主張しない性格だから、人に嫌われたりもしてきた。

そんな私の考えをよそに隣に座っている香織はすでに楽しそうな表情から

真面目な顔でスマホをいじっていた。切り替え早。




×××






「じゃあまたね」


「うん、また明日」


一人暮らしの私は実家に帰る香織に手を振って、いなくなるのを確認して

ようやく家に向かって歩き始める。

駅から一人暮らししているアパートまで徒歩5分。

昔から撮影にもよく使われたり、クラスのみんなでお泊り会やパーティーするにも

私の家が必ず候補にあがることが多かった。

しかしその度に私は困ることがある。


「ただいま」


鍵を開けて家に入り、電気をつける。

普通なら殺風景な部屋とかぬいぐるみがたくさんの女の子らしい部屋を

想像するのが大正解。

ところが、私の部屋全然違いまーす。

明かりをつけた部屋には、至る所にイラストの絵を書いた用紙や同人誌の原稿。

そしてパソコンの周りに散らばる課題のプリントや親から来た仕送りのダンボール。

はい、実は私、同人作家なのでーす!

なーんて偉そうに語るけど、特に仕事と呼べることをしてるわけではなく

ネットのサイトにアップしたりとかするぐらいのもの。

単純な趣味としてやっているのだ。

んで、こんな部屋が散らかっているのは、私、掃除、下手です、はい。

香織や由紀が来た時はいつも、引かれるくらいで何故か遊び来ているのに

いつも、掃除になっている。

私は、さすがに今日は次のイベント用に向けての原稿を進む気にもなれず、

ご飯を食べるのもだるいので、適当に横になる。



はあ..なーんかせっかく楽しかったのに

おかしくなっちゃった、前芝君のせいで。

別に私は今の部活の体制に対して、不満は一つもない。

けれど、映画を作りたい人からすればやる気がないこの状況には

苛立ちしか覚えないのだろう。

あーだめだ、もう眠い。お風呂に入りたいし、化粧落とさなきゃ。

でも、眠い...眠い...Zzz...





×××






「は?」



朝一起きたばかりの身体を起こして、一限の教室に来た私は

教室についた途端に来たメッセージを見て、驚いた。

いやそんな表現どころじゃない、本当は絶叫したいけど

さすがに教室では絶叫できない。

改めて目を擦って、もう一度見る。



『お疲れ様です、昨日の集計結果ですが

以下のようになりました。


部活を本気でやる人

・前芝 勝也(二年)

・地引 洸希(二年)

・舞川 梓(二年)

・鏑木 洋介(二年)

・多井 有紗(二年)

・田所 健(一年)

・信濃 良平(一年)

・駈道田 麗華(一年)

・片桐 理沙(一年)

・二宮 浩一郎(一年)

・柴宮 真二(一年)


以上が本気でやりたい人です。

残りは今まで通りがいいということらしいので

好きにやってください。部活に来るも来ないも

自由ですので、よろしく。

ちなみに三、四年生は事前に報告したら

全員、今まで通りがいいそうです、以上です』










は?







さて、いよいよ部活としての活動スタートです。

本格的に分裂したえいけんですが

ここから本気でやる人達による

撮影活動がスタートです。


今後ともよろしくお願いします、では

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