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えいけん! -問題ばっかの私の映画撮影記!-  作者: コウ
第一章「えいけん分裂」
1/5

第一話「日常」

「とりあえずこのシーンは正面のアングルから撮るから

声だけ張ってくれれば」


「うーん..どれくらい声張ればいいの?」


「そうだなぁ..」





大学の教室棟から離れて特別棟裏にある大学敷地内の森。

今日も映画研究会の撮影は順調である。

私、多井有紗はそんな撮影している部員の荷物を持って

ベンチに座りながら

まじまじと彼らを見つめている。

にしても撮影スケが押してるとはいえまさか朝6時から呼び出しくらうとは

思わなかった..てかさーみんなの荷物持ちとか機材の準備とか

どう考えても誰もやりたくないから私に押し付けた感じだし...


「そんじゃシーン5いきまーす」


「はーい」


監督とカメラの声が聞こえる。

今日の撮影班は同じ二年生だ。

この撮影班、まあ監督の名前が地引なので地引班と呼ぼう。

撮影班によってそれぞれ撮影に特色が出る。

この地引班の特徴といえば監督自らもキャストとして出演していることだ。

キャストの気持ちや演出の上でより完成度をあげていきたいと

言っていたがまあ正直...多少は私欲が入っていると思う。

だって地引君彼女いないし告ってもフラれてばっかだし..

まあカッコよくないけどその分優しいし気配りはまあまあできるほうだけど

あれだよね。女子大生の男子付けランキングにある

「彼氏にはできないけどとりあえずいい人」止まりである。

まあわかりやすく言えばキープにできそうでできない人のことだね。


「3,2,1」


カメラの録音ボタンが押される音が聞こえた。


キャストの二年がシーンの会話をしているのをじーっと見つめる。

いやー普通学生映画ってなんかまあ..わざとらしさが出るよね。普通は。

ところが地引君はどうしてもそのわざとらしさを消したいから

とにかく自然に。いつも通りの話し方で自然にシーンのセリフっぽく

会話をして少しでもクオリティあげたいとのこと。


まあふーん..としか感想言えないのでなんともいえん。


「はい、カット!確認しまーす」


地引君がカメラの映像見ながらうーんとした唸っている。

あ、これ駄目だ。もう1回だ。


「すいませーん。もう1回お願いしまーす」


「「えー」」


ため息とキャストの文句の声があちらこちらから聞こえる。

まあ地引君その辺結構細かいから..



演じているキャストのほうに視線を変える。

今回主役を演じている間宮龍誠君にヒロインの由紀。あ、本名足川由紀様。

なぜ様付けなのかは特に意味ない、なんとなく。

でもお嬢様感はあるんだよねーあの子。

気品があって男子理想のロングに白い肌に上品な言葉づかい。

まあ女子大生にその説明は少しオーバーだけど

要は高嶺の花だ。

まあそれも男子には...ね。



「有紗ごめーん、そこのお茶いい?」


「はいよ」


男子には必ず君付けでいつも笑顔な由紀だが

実際女子の前では結構ラフなしゃべり方だし

フレンドリーというーか。

つまり素を出してくるのだ。


「ありがと」

私からお茶を受け取って由紀はそのまま横に座ってきた。


「地引君長すぎー。今日まだ撮影工程三分の一しか終わってないらしいよ」


「あーじゃあ明日もだね」


「もうなんであの人私を抜擢するんかなー。

もっと可愛い子いたでしょ」


「いやいや..由紀より可愛い子ってなかなかいないよ..」


そりゃまあ言いたくないけど隣に座っているだけで

嫉妬すらしそうな可愛さですから。

くりっとした感じのその瞳に見つめられたらなかなか好きにならない男は

いないですよ、これ。



「有紗もなんかごめんねー朝から付き合ってもらって」


「私は暇だからいーよ。それに由紀が悪いわけじゃないし」


「そりゃあね。けど地引君次の夏の定期は必ず最優秀賞取るって

意気込んでたからねーまあ私は監督もカメラもできないし

脚本も書けない。演じることしかできないから」


「それだけできれば十分よ。私なんて大道具だから役に立つかどうか..」


ははと笑うと由紀はニコっと笑って返してきた。


「有紗みたいに影から支える人いないとこういうのってどこかで

崩れるもんじゃん。ましてや大学の部活動だから顧問とかもいないし。

だからなんだかんだ有紗には感謝してるよみんな」


「そうかなぁ...」


大道具も元々演じたくないし監督もできないし特に暇そうだから入っただけだし。




まあ元々は大道具じゃないんだけどね..




「あ、地引君呼んでるから戻るね」


「うん、がんばって」


ベンチから立ち上がり由紀は呼んでいる監督のもとに小走りで走っていく。


ふーと私は快晴の青い空を見る。





湘華大学映画研究部二年多井有紗。


私の日常はこんな感じです。



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