モモ―『私はあなたの虜』
ようやくまともな間隔で更新できた。
邑先生のことを思い詰めてるの、早く寝て忘れようかな。
寝間着とタオルと、シャンプーの類を持って、お風呂場に向かおうとして。
「あっ、ちえちゃん!」
この声は、中等部のかおりちゃんの。かおりちゃんが入学したてのとき、猫を追っかけて迷子になってるのを見かけて。それから、ちょっと話をするようになったんだっけ。
「かおりちゃん、なんでここに?」
「へへへぇ、これから、かなみちゃんのとこにお泊りするんだぁっ」
そう言うかおりちゃんは、大き目のリュックを背負っていて。
私と同じ階にいる水藤さんのことか。最近、図書室のカウンターで見たとき、ちょっとだけ様子が変わったような気がしたけど、そういう事だったのか。かおりちゃんの顔も、満面の笑みって感じで、私まで笑顔になりそうな。
「行ってらっしゃい、水藤さんと仲良くね」
「うんっ!」
とてとて、って足音を残して、水藤さんの部屋に走ってくかおりちゃん。
……恋が叶ったとき、こんな顔になるのかな。今の、かおりちゃんみたいな。だとしたら、ちょっと羨ましいな。
かおりちゃんの笑顔に癒されたのも一瞬で、また、私は邑先生のことばかり想いつめてしまう。
今、何してるんだろう。邑先生の住んでるとこも、電話番号も知らないから、答えなんて見つかるわけもないのに。
お風呂に入ってるときも、髪を洗ってるときも、やっぱり、あの凛としか姿しか頭に浮かばない。
飾らないし、化粧とかにも興味なさそうなのに、どうしてあんなにきれいなんだろう。もしかしたら、そう思ってるのも私だけで、ただの惚れた弱みというものなのかもしれないけど。
お風呂から上がってから、部屋に戻って、寝る支度を済ます。
早く寝ようとベッドに入っても、まだ、全然眠れない。普段はまだ起きてる時間だからとかじゃなくて、邑先生の顔が、まだ頭から離れてくれないから。
頭の中を全部満たしていきそうな気持ちに、体ごと、狂わされていって。
布団に頭も潜り込ませて、グルグル回る頭の中を止めようとする。けど、そんなの、全然意味なんてなくて。
いつのまにか、また夢の中。
その中で私は、また邑先生の腕の中で抱かれていて。
「智恵……かわいいっ」
「もう、邑先生……、あっ」
夢の中の邑先生は、こうやっていつも私を求めてくれていて。これが本当のことじゃないってわかっていても、つい頭の奥が蕩けていきそうな気持ち。
もっと先のこと、知りたい。夢の中だっていうのは分かってるけど、邑先生に愛された先のこと、知りたい。
でも、その先に行こうとすると、いつも目覚ましのアラームが邪魔をする。
また、今日も、同じ夢。その夢は、ずっとずっと叶わない。
ご飯、食べなきゃ。トーストをつくって、いちごジャムを塗って食べる。制服に着替えて、……なぜか、今までより制服がゆるく感じる。
洗顔も歯磨きも済ませて、スカートのポケットに、ラッピングしてもらった、邑先生にあげたいものを入れる。
邑先生に、逢いたい。渡したいものもあるし、……これ以上こんな状態になってたら、私が壊れちゃいそうだから。
ただ教室に歩くだけなのに、どうしても辺りを見回してしまう。
でも、そんなに思い焦がれても、邑先生の姿を見ることなく、教室まで無事に着いてしまった。
星花女子プロジェクトに出したもう一人のうちの子であるかおりちゃんを登場させてみた。
一応矛盾点はないように仕上げたはずだけど大丈夫だろうか。