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トリトマ―『あなたを想うと胸が痛む』

ものすごく投稿遅れました。ようやく3話です。

 気づいてしまった気持ちは、胸の奥を締め付けていく。

 叶うはずのない恋心で、体が溢れそうなくらい、私は、邑先生のこと、好きになってしまっていた。

 

 邑先生と、初めて近くで出合ったときのことを思い出す。

 高校一年のとき、初めて生徒会選挙に出たとき。私は、緊張で毎日吐きそうなくらいだった。

 ご飯もあまり食べられなくて、夜も眠れなくて、毎日目の下にできるクマを取ろうと学校に遅刻するギリギリまで顔を洗ってた。

 ふらふらになりながら、寮から学校に歩く。足元しか見えてなくて、前から人が来るのに全然気がつかなかった。

「うわっ、あ、あの、ごめんなさい!」

「ん、いいけど……大丈夫か?」

その時見たのが、邑先生だった。いつも青いツナギを来て、私とそんなに変わらないのに、凛としてる姿に、一瞬心臓が高鳴ってしまってしまっていた。

 そっけない言い方なのに、そこには確かな優しさがあって。ずり落ちそうになった眼鏡を直してくれて、ついでに頭をぽんぽんと撫でてくれる。

「ちゃんと休みな、すっごく疲れてそうだし」

「あ、ありがとうございます……」

 邑先生の話は、ちょっとだけクラスでも聴いたことがあった。冷たくて、女の人らしくないとか、あんまりいい人とは思われていなかったみたいだけど。

 でも、本当は、優しい人なんだ。それれに気が付いたあの時がきっと、邑先生のこと、恋をし始めた瞬間。

 あんなふうに、優しくて、素敵な人になりたい。そんな憧れが、いつの間にか、今、胸の中に溢れそうなくらいの恋心になっていた。

 ……懐かしくて、ちょっと照れちゃいそうになる記憶。その蓋が開いたのは、胸の中で、邑先生が、私の胸のなかをどぎまぎさせるせい。

 熱くなった体を冷まそうと、窓を開ける。そこから外を見下ろすと、……さっきまで、ずっと想ってた人の姿が見えて、心臓が止まりそうになる。

 目が離せなくなっていると、窓を開けた音で気が付いたのか、邑先生が私のほうを見上げる。

「あ、江川、ちょっと来てくれるか?」

「は、はい!」

 服を整えて、二階にある部屋から慌てて玄関まで降りて外に出る。

「な、なんですか?」

 呼ばれた理由がわからず、訊いてしまう。なぜか紙袋を持ってるけど、どういうことなんだろう。

「あのさ……これ、貰ってくれないか?」

 その紙袋を渡される。中身を見ると、なんだか高級そうなチョコレートの箱が二つもある。

「い、……いいんですか!?」

「ああ、私あんま甘いもの好きじゃないし、……一箱食べかけのだけど、いいか?」

「は、はい!ありがとうございます!」

 邑先生から話しかけてくれて、私にこんなものをくれて、気分が上がって、もう、今心臓が止まってもいいような気になる。

 にやけてしまう顔を隠すように、足早に寮に戻る。ちょうどおやつ時だし、ちょっと食べようかな。食べかけのは早く消費しないといけないし、なんて誰にもわからない言い訳をして。

 小さなキッチンで、手を洗って、ホットミルクを作った。それをリビングの机に置いて、貰ったチョコを口に含む。

 まろやかで、甘くてほろ苦い。それで、体が、ちょっと熱くなって。

 ただのチョコじゃ絶対ありえない感覚に、慌ててパッケージを見ると、お酒が入ってるってことが書かれていた。

 お酒のせいなのか、邑先生にそれをもらったせいなのか、頭の中がグルグル回って、邑先生のことしか、もう考えられない。

 いつも夢に見てしまう光景が、また頭によぎる。邑先生ともっと一緒にいたいし、キスしたいし、その先の、誰にも言えないようなことも。

 こんな気持ちのままいたら、私は、一体何をしてしまうんだろう。一回寝て。忘れさせなきゃ。

 冷蔵庫にチョコをしまって、ホットミルクを飲んで、服もそのままにベッドに寝転がる。

 体が熱くて、布団なんて掛けるのもうっとおしい。そのまま抱き枕みたいにして、ふと思ってしまう。

 今抱いてるのが、邑先生ならいいのに。

 邑先生が、私のこと好きでいてくれたらいいのに。

 邑先生が、恋人でいてくれたらいいのに。

 邑先生が、キスしてくれたらいいのに。

 いつも見る夢の光景が、脳裏に浮かぶ。私のことを求めてくれる先生は、私が生み出した空想の中だけのもの。

 堪えられなくなりそうな衝動に、ぎゅっと布団を抱いて耐える。

 きつく閉じた瞼の間から、なぜか涙が零れた。

もう一顧の連載のほうはこれの2話が出来てから今日までで25話書いてるんですよね。おかしい

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