ポインセチア―『私の心は燃えている』
今日で連載1周年です(もうすぐ終わるけど)
『せっかくの青春なんやし、楽しまな損やで?』
上の空になりかけながらも、なんとかしのげた5限の授業のあと、携帯を開くとマノン先輩からこんなメッセージが来ていた。
『ありがとうございます、頑張りますね?』
そう打ち込んで送信ボタンを押した、その瞬間にため息が零れる。
先輩たちに背中を押してもらったのに、いざ踏み出そうとすると、また足がすくむ。
邑先生のこと、知りたい。そう思って楓さんに訊きにいく前と、状況はそのときと全然変わってない。
溢れそうな感情が見せる、生々しいくらいに邑先生と溶け合う夢も、いつ爆発するか分からない衝動も、邑先生を想う度に、跳ね上がる鼓動も。
いっつも慎重になりすぎるのは、私だってよく分かってる。でも、それくらい、本気で好きになってるから。失ってしまったら、私の中が全部空っぽになって、私が丸ごと消えてしまいそうなくらいの気持ち。
誰かに恋するって、そんなものなのかな。そんなことを思案していると、帰りのホームルームはとっくに終わっていた。
恋について考えたまま、自然と足が図書室に向かう。きっと、そこの雰囲気も、他の誰かの人生を見れるってことも、好きだから。
一番好きな作家さんの棚には、まだ読んでない本が3冊もあった。最近、図書室に行けてなかったからな。生徒会の仕事も忙しかったし、何より邑先生のことが、頭の中に浮かんで片時も離れなかったから。
体育祭の準備も、中間試験も、もうちょっと先だから、このうちに読んでおこうかな。その三冊を持ってカウンターに向かうと、水藤さんの顔が見える。その顔は、ちょっとだけ明るいような気がする。かおりちゃんが水藤さんの部屋に泊まりにいくときみたいな、ふんわりした笑顔。
貸出手続きに使う学生証と、その本を渡すと、「お久しぶりね」って声を掛けられる。
「ちょっと忙しくて」
「生徒会ですもんね、大変ですね」
そんな風に笑いながら、あっという間に手続きを済ませてくれる水藤さん。
もし、恋が叶ったら。私はこんな風に、明るく笑えるようになるのかな。かおりちゃんや、水藤さんみたいに。
部屋に戻っても、どうせ邑先生で頭がいっぱいになってしまうだろうから、図書室で本を読むことにする。自習をしている生徒たちのいないスペースに荷物を置くと、目の前に、見知った顔を見つける。同じクラスの赤石さんと目が合って、なんとなく逸らす。
「あ、そうだ、……江川さん、面白いこと、教えてあげよっか?」
小声で言われたその言葉に、なぜかノーとは言えない自分がいた。
同じ1年かかったのは12万文字書いてるのにどうしてこんなに差が付いたか




