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咲いた恋の花の名は。  作者: しっちぃ


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アンズ―『臆病な恋』

結局、邑先生のことなんて何一つわからなくて、倉田さんにも怪我させてしまって。そのことばかり頭でぐるぐる回る。

結局、かおりちゃんに電話をする前に逆戻り。邑先生の事以外、何も考えられなくなる。

邑先生のこと、もっと知りたい。本人に聞く勇気を持てなくて、結局倉田さんにも聞けなくてかなわなくなった想いのせいで、一度は落ち着いた恋の病をぶり返してしまったみたいだ。

胸の奥が、締め付けられるように痛む。倉田さんへの罪悪感もあるけど、それ以上に私の恋心が胸の奥で暴れてるから。


休み時間、自販機のスポーツドリンクを買って、倉田さんのいる保健室に向かう。

先生に容体を聞くと、ちょっとたんこぶが出来たくらいだけど、何かないか念のために保健室で寝かせているらしい。

とりあえず、冷蔵庫に買ってきた飲み物を入れてもらう。好きな風に使ってほしいって言って、また授業まで戻る。そうしたって、結局上の空になるから意味ないのかもしれないけれど。


邑先生のことなら、邑先生が一番よくわかってるんだから、邑先生に直接聞いたほうが早いなんてこと、頭ではとっくに分かっている。でも、それができないのは、今の微妙な関係を揺らがせて、もしかしたらそんなことを知ったってもう届かない場所に行ってしまうのが怖いから。

近づきたいのに、近づくのが怖い。相反する心は、いつもそこで立ち止まってしまう。結局、まだ私は、臆病なまま。かおりちゃんからもらった勇気も、いつのまにかしぼんでいて。


胸の奥の痛みは、結局何も進められなかった私への罰なのかもしれない。身勝手な私の恋心で、倉田さんにも迷惑をかけたのだし、授業だって、まともに聞けなくなってしまったのだから。

その罪は、甘んじて受け入れなければならないのだろう。でも、この状況をどうにかする方法なんて、思いつかないし、思いついたとしても、それを実行に移せるほどの勇気を、私は多分持ち合わせていない。それに、相談する相手も、誰もいない。周りから浮いてしまっているし、生徒会の先輩たちは人気があるから恋の相手を射止めるなんて簡単にできるだろうし。

私は、この恋の病と、一人で戦わないといけない。ただ、それに気づいたからって、どうすればいいか、わかるはずがない。

まだ、その相手、……邑先生のこと、全然つかめないから。それを知る方法だって、分からないのに。


自然に、ため息が漏れる。幸せが逃げるとかなんとか言われてるけれど、今、私が幸せになる方法もないのに、そんなこと、どうだっていいように思える。

いっそ、恋なんてしなきゃよかったのかな。こんな、届かないまま膨らんでいった、行き場もなく私の心を埋め尽くす恋なんて。


セリフなしは初めてかもしれない

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