フレンド・泉の女神
「俺は修行中の身。弟子はとら……」
「なに、格好つけてるのよ!」
勢いをつけるためにローブを少し持ち上げたミレッサに蹴りを食らった。
「痛い! 狼より強いな!」
「エリアボスの化け物と一緒にするなあああああ」
またまた蹴りを食らった。
「乱暴な女だな……」
「弟子にはしてもらえませんか……」
拒否されて、ションボリする双剣の少女カイナ。
「フレンド登録をすればいいわよ。何かあったら連絡がとれるでしょ?」
俺にとって、初めてのフレンドは『カイナ』だ。
いい友達関係を築けるといいな。
「どうしてそんなにお強いのに、マナガルムを?」
フレンド登録を終えると質問が飛んできた。
「クエストよ」
空中に出現した報酬を受け取って、ウハウハ顔のミレッサ。
「それ以外にも『青い石』のも受けたぞ」
「私も『青い石』を受けましたが、『青い石』が見つかりませんでした……」
カイナが寂しそうに俯く。
「あんたが集めたヘンテコな石をあげなさいよ」
肘でコンコンしてきながら、ミレッサに耳打ちをされた。
どうせただの石だと思っている顔だ。
俺はランタンから『青い石』を取り出して少女にあげる。
「ほら、これが『青い石』だ」
「えーっと。もらってしまって、いいんですか?」
「普通、青くないでしょ! って突っ込みをするところよ!」
「え? 青いですけど……? あ、クエストをクリアできました。ありがとうございます」
「うそ……。本当だったの?」
「だから言っただろ? 人を信用しないからだ」
ピコーンと新クエストが表示された。
〈愛する武器『ロングソード』を進化させよ〉
「何これ?」
「何か出たんですか?」
カイナをパートに加える。
「うーん。初めて見ますね……」
「矢印は南だな……」
俺は矢印が指す先を見るが……。
「森の中だわ……。こんな胡散臭いクエスト破棄しましょ!」
チャリン……。
「ちょっと! 私の大切なお金が百ピスラもなくなったわよ!」
「お前が変な事を言ったから、罰が当たったんだろ?」
俺は素直に矢印の方へ歩き出す。
「お供致します」
カイナも俺の隣に立って歩く。
「もう~。モンスターがいるんだから、置いていかれたら死んじゃうじゃない!」
プンプンしながら俺たちの後を歩くミレッサの顔が青ざめていく……。
「私の所持金が一秒毎に一ピスラずつ減っていくんだけど……」
二人でランタンをチェックする。
「俺は変わらないぞ?」
「私も変わりませんね……」
「もう嫌っ! ヒィィ……」
「どうした?」
「一気に百ピスラ減った……。こうなったら走るわよ!」
お金大好きピスラさん。じゃなかった。ミレッサに置いていかれないように走ることになる。
途中モンスターを倒しながら進んだので、損失はそこまでなかった。
道なき道を矢印を頼りに進むと、開けた空間に出る。
「綺麗な泉ですね」
幅は三十メートルと言ったところか。
「そうだな……。でも、何をするんだ?」
俺はクエストの詳細を押すとメッセージが表示される。
『ロングソードを泉に投げ入れる』
メッセージ通りに持っていたロングソードを泉に投げ入れた。
泉全体が光り輝き、中央に綺麗な女神が現れる。
「あなたが投げ入れたのは、この★が一つの『ロングソード』ですか? この★が二つの『ロングソード』ですか? この★が三つの『ロングソード』ですか?」
「★が一つの『ロングソード』だ」
「あなたは正直に答えました。★が一つの『ロングソード』をお返しします」
俺は女神から★が一つの『ロングソード』を受け取った。
すると、何事もなかったように女神の姿が消えて、辺りは静かになる。
「何があったんだ?」
「その『ロングソード』を見せなさい」
俺から無理やり奪い取ろうとしたミレッサは、剣に拒まれた。
「痛いっ! 何いまの……?」
刃とは関係ないところで武器に攻撃を食らうとは……。
「おっ? 強化ができるようになった」
俺はさっそく『新ロングソード』を三十五→五十まで強化した。
どうやら、この武器は俺専用になった代わりに、限界突破をしたようだ。
「不思議な泉ね……」
ミレッサがこっそり百ピスラを投げ入れた。
シーン。