クエスト・共闘
翌日。
騎士と言っても、やってる事はソロの時と同じだった。自分のためにするのか、都市のためにするのか、姫のためにするのか。
「クエストをしてお金を稼ぐわよ!」
お金のためにするのか……。
「へーい。昨日死にかけたのに、すごいな……」
「私には、寝たきりの両親がいるの。二人のためにも稼がなくちゃ……」
ミレッサは目に手を当ててポロポロと泣き出した。
「ミレッサが取り込み中だったから、ミレッサのお母さんって人から忘れ物のお弁当を受け取っておいたぞ。コレうまいな」
モグモグ……。
「なんで、人のお弁当を勝手に食べてるのよ!」
パーーーーンと軽快な平手打ちが入った。
都市の中だから怪我をしても一瞬で治る。
「暇だったからつい……」
俺はお弁当の残りをミレッサに渡す。お袋の味なんて、もうすっかり忘れてた。
「普通『ごめんなさい』でしょ! それにほどいたら縛る……もので……しょ?」
ミレッサが激怒するが、俺の腕が一本ないことを思い出して尻窄みになる。
俺は片腕がないので、綺麗に縛れない。
「ごめん。でも、久しぶりにうまかった!」
俺は左手を立てて謝る。
「もういいわよ……。クエストを受けに行くわよ!」
許してくれた割りには、まだプリプリしているミレッサを先頭にして進む。
「ところでクエストってなんだ?」
ミレッサがその場で歩くのをやめて、振り返った。その表情は信じられない生き物を目撃した時のようなひいた顔をしている。
「よく今まで生きてこれたわね……」
「そんなにすごいのか? うまいのか?」
「はぁ? お金よ! お金! 報酬がいいのよ」
「え~~~~」
「逆に『え~~~~』よ!」
クエストとは、様々な依頼内容をこなす事。
依頼者は都市からだったり、市民からだったり。
報酬はお金だけではなく、信頼やアイテムももらえるそうだ。
道端で説明と言う名の説教をされた。
「なんで、私がクエストも知らない奴とパーティを組まされてるのよ……」
〈『ゼリルー』を十匹討伐せよ〉
〈『青い石』を十個採取せよ〉
「こんなの誰でもできるだろ?」
「あんたやっぱり馬鹿なんだ……。いい? 誰でもできないからクエストになってるのよ!」
「そうなのか?」
「コレも受けるわよ」
〈『マナガルム』を一匹討伐せよ〉
「マナガルム? って誰だ?」
「信じられない。昨日倒した狼よ! なんで、モンスターの名前も覚えられないのに騎士になれたかな……」
「あの犬コロか。また戦えるって楽しみだ」
「それより胸当ては?」
「まだ買ってないぞ」
「私なんて★が二つの司祭のローブを買ったのに……」
「一度倒せたなら倒せるだろ?」
「あー、嫌だ。もうパートナーを変えて欲しい……」
「『青い石』ってこれか?」
俺は地面に無造作に落ちていた石を拾う。
「そうよ」
「こんなのこの森にあったか?」
「クエストを受けていないと見えないの」
「面倒なんだな」
「面倒ってあんた……」
「いい事考えた。一気に二十個を集めて二つこなそう」
「できるわけないでしょ!」
「よしっ! 十個って……急に青い石が見えなくなったぞ? 俺の目がおかしくなった?」
「クエストをクリアしたから見えなくなったのよ。本当にど素人ね……」
俺はその後、ゼリルーを探しながら、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ歩き回った。
「さっきから、石なんて拾ってどうするのよ……」
「青い石を拾ってるんだぞ?」
「はぁ? 馬鹿言わないで、わかるわけないじゃない!」
「さっきまで青かった石ならわかるだろ?」
「……あんた……何を言ってるかわかってるの?」
「……?」
「噴水にガラス玉を落として、ピンセットで拾うよりも難しいわよ!」
「うーん。例えがよくわからんが……」
俺は構わず十個集めたので、メインディッシュに向かう。
「おっ? 誰かが一人で戦ってるぞ?」
「加勢するわよ!」
「人が戦ってるのにいいのか?」
「ドロップは全員分あるし、経験値もお金も普通に出るから大丈夫よ!」
「お金の部分だけ強調したな!」
ブレない女だ。
「俺たちも混ぜてくれっ!」
【シャープスラッシュ】
「からの!」
【ディミニッシュブレイド】
「あれ……? スキル二回で終わったぞ?」
昨日はもっと苦戦したんだけど。レベルアップでもしたのか?
「「……」」
双剣使いの少女とミレッサが呆気にとられている。
「とうとう化け物の仲間入りをしちゃったわね……」
「いや~それほどでも……」
俺は剣をしまって、頭に手を当てて照れた。
「嫌味が全く通じない」
「弟子に……して下さいっ!」
双剣使いの少女が声を裏返しながら言う。