お金、お金、お金
俺たちのような駆け出しの騎士の任務は都市周辺のモンスターの数を減らす事。
「リッテの腕は都市に戻っても治らなかったの?」
この世界は町や都市に入ると傷が治り、HPやSPが回復する。
しかし、そんな力があっても、部位欠損までは回復しなかった。
「無理だ。出血が止まって、HPが回復したおかげでこうして生きていられる」
「そう……」
「それよりもミレッサは戦えるのか?」
騎士になるには試験がある。弱いものは騎士にはなれない。
「前衛次第ね」
メイスをフリフリして笑われた。
「試しにゼリルーから倒すか?」
「それがいいわね。あなたの腕前が見たいわ」
俺たちはカップルのように仲良く、森へと続く道へ向かった。
「向こうに二匹、あっちに三匹いるな……」
「この距離でモンスターが捕捉できるの?」
なぜか、ミレッサは驚きの表情になる。
「普通は無理なのか?」
俺はいつもソロだ。片腕の剣士に運命を預ける馬鹿はいない。
「無理よ……。その才能がもったいないわね……」
「才能?」
「右腕が残っていれば優秀な弓使いになれたのに……」
「ないものは仕方ないさ」
さっそく俺たちは二匹の方に向かった。
話し合っているうちに三匹の方は他の連中に狩られてしまった。ただ、遠くで見ていた感じ、そうとう接近するまでモンスターの存在に気が付いていなかったようだ。
【シャープスラッシュ】
剣を持つ者なら誰でも使えるスキル。(HP五パーセント消費)
ゼリルーが向かって来た動きに合わせて、スキルを発動させた。
ジャンプして回転斬り!
「一撃……?」
本当はスキルを使わなくても一撃なのだが、守りながら戦うという意味をまだ理解できていない以上、初撃で一匹を倒しておきたかった。
続いて敵の攻撃を食らう。
普通の剣士ならここで、盾が登場するのだが、俺は身を守るしかない。
【クイックヒール】
すぐにミレッサが回復してくれた。
ある程度ダメージを食らうと、都市に戻るかアイテムを使っていたが、パーティもいいものだ。
俺は二匹目のゼリルーをスキルなしの横凪ぎで葬る。
「お疲れ様」
ミレッサが後ろから声をかけてきた。
「お疲れ様。回復って温かいんだな」
「初めてなの?」
「あぁ……」
「ドンドン使ってあげるよ」
ミレッサが急に悪魔のような微笑みを見せる。
たくさん戦ってくれってことだ。
初日から上下関係が決まってしまった気分。
「ドロップはどうすればいいんだ?」
今までは騎士じゃなかったから、全てが自分の物で済んだが、今は雇われの身だ。
「そういえば、何も言ってなかったわね……」
「俺が代表で管理しておく」
「あっ! 誤魔化す気でしょ?」
「そんな事はしないって」
ミレッサが疑いの目で見てくる。何でこんなにお金に執着してるんだ?
ドロップアイテムは専用の『導きのランタン』にしまう。
お金も別にしてしまった。
その後、俺の索敵スキルで、敵を発見しては先制を奪う。
「あなた……、強いわね……」
俺が不意打ちを食らわないから、ミレッサの仕事は少ない。
「他の人を誘って四人で行動すればよかったか?」
「利益が減るわ……」
この女にとっては、騎士道よりもお金が大事。
俺としてはソロの方が気楽だけど、これは任務だ。
せっかく可愛いのに、もったいない。
『MP』→『SP』に修正。