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パートナー

 幼い頃に両親をモンスターに殺された。

 たった三匹の……、それも最弱とされるゼリルーにだ。

 きっとお父さん一人なら死なずに済んだと思う。


 その現場には僕もいて、足手まといの僕を庇ってしまったのが致命傷。

 親を失っただけじゃなく、その時に利き腕である右腕もなくした。


 騎士をしていたお父さんは保守派の『シンデレラ』に仕えていた。

 偶然通りかかった騎士見習いの方が加勢してくれなければ、一緒に命を落としていたと思う。


 あれから十年。


 俺は左腕に武器を持ち、お父さんの後を継いで、ようやく今日、姫に仕える事ができた。

 まだ駆け出しの騎士見習い。俺の騎士道はここから始まる。

 あの時助けてくれた青年の顔は覚えていない。それでも、姫が統治する『神聖都市ルヴェール』を拠点にしていたはず。


 最近の俺の日課はお父さんが亡くなったところで、黙祷をする事。

 都市からは半時ほどで着く。小高い丘を下った先にある川のもう少し向こう。二本の木が背を比べるように立っている場所だ。

 一本はお父さんのお墓。もう一本はお母さんのお墓。

 二人の加護がかかっているいるのか、周りの木はモンスターに倒されるのに、この二本の木だけは倒される事はなかった。


「やっと騎士になることができました」

 俺は両親に報告する。

「これからは任務があるため、毎日来れなくなりますが、土産話ができるように生きて帰ってきます」

 活躍してきます。とはまだ言えない。

 無理をして死んでしまっては、ここに来れなくなる。

 俺は視界に入ったゼリルーを一刀両断して、都市に戻った。



「おはようございます」

 いつも通っているのですでに顔馴染みになっている門番に声をかける。

「おう。おはよう。あの坊主が『騎士』になるとはな」

 俺は利き腕がなくても騎士になれた初めての人だ。

 腕が一本しかないため、盾が装備できない。

 そのハンデを帳消しにしてくれたのが、お父さんが鍛え上げた★が一つ付いているロングソード。

 今では体の一部のように手に馴染んでいる。

「たくさん稽古をつけて頂いて感謝しています」

 俺は昔からお世話になっている門番にお辞儀をして城に向かった。

 初出勤。遅刻をするわけにはいかない。


 顔合わせをする程度で、大した行事もなかった。拍子抜け……。

 子供の頃から浮いていたため、誰かに祝福される事がなかった。そんな俺としては物足りない。

 これが大人になるということなのか?


 ただ、パートナーができた。

 後衛の可愛い女の子。今度両親に紹介しよう。

「これからよろしくお願いします」

 俺は左手しかないので、握手の時は、みんなが一瞬戸惑う。しかし、この少女は流れるような動作で握手をしてきた。

「よろしくね。私は左利きだから、相性がいいかもね」

 なるほど。左手握手で相手と心が繋がった気がする。


「俺の名前はリッテ」

「私はミレッサよ」

 彼女のメインウェポンはメイス。回復職だ。

 後衛と後衛がペアにならないようには配慮されているとは思うが、職業としても相性がいい。

 俺は今までソロが中心で、誰かを守りながら戦うという事をしたことがない。

 お父さんは俺を守ろうとして失敗した……。

「私だって騎士なんだから、一人で戦おうとしないでね」

 どうやら、対人スキルの少ない俺は顔に出ていたようだ。

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