『魔の翼達の追憶ーー』
紺碧の空と海が拡がる南大西洋上空に差し掛かる。
程よい揺れを感じつつこじんまりとしたシート脇からある極秘事項の書類に目を通すガンナーの表情は何時になく真剣だ。
無理も無いーーほんの数日前に消息を絶つ商船だけじゃなく、我が英国海軍が誇る1934年竣工したばかりの最新鋭”E級”駆逐艦数隻からなるUボート殲滅部隊もここ”バミューダ”諸島東から250海里付近で消息を絶ったのだから。
H17エスカベイド。H15エスク。そして、標準型軽巡洋艦マイグレイ・バードを含む艦隊はけして旧来での対潜対策を疎かにした艦では無い。
度重なるナチスでの商船撃沈に痺れを切らした海軍上層部が対潜探知装置アスディックソナーを装備させた対Uボート用に特化した艦隊を派遣。
しかし、その作戦も何故か奴等の策にまんまと乗せられていたのか。未だ行方不明…多分奴等に食われたのだろう。
「間も無く問題の海域に突入します」
「ああ、今回の作戦の要にもなるここバミューダ海域に潜伏するネズミ共を一匹残らず駆逐するんだ!」
助手に当たる士官が手に持つ資料を再び胸ポケットにしまい。今現在操縦士に当たる俺に気合いの入る一言を浴びせる。
機体のキャノピー越しに後続に続く空からの作戦に参道する我がモスキート部隊を風防脇にあるミラーで辞任。
その内の俺が操縦するデ・ハビランドモスキート。木製の軽い機体に強力なマーリンエンジン2機をぶち込んだ双発戦闘爆撃機。その対潜探知に特化したNF Mk-XⅢからは逃れられないであろう。
時速620キロから、後続機に軽くバンクを促し更に300フィートまで海面にダイブ。
この海域に、じっと潜めている獲物達を探索。
「おい!あれは一体?」
「対潜レーダーに艦影を捉えた…のか!?」
しかし、俺は助手に当たる士官の乾いた声に自分の目を疑う。”あれ”は一体?どう説明がつくのか?
そう。俺は…対潜レーダー及び高度計やジャイロがまるで生き物のように跳ね返る様を皮切りに信じられない物が視界に?
その後。俺を含む空母イラストリアスから飛び立ったUボート殲滅部隊も又……