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第5話 凄烈なる解放者

 部屋で行われている光景は余りにも一方的かつ無慈悲なものだった。


 右手を砕かれたアンドレはなす術もなく茶髪の騎士に暴行を受けている。


 アンドレは苦し紛れにタックルをかますも騎士は涼しい顔で片手だけでアンドレの身体を軽々と地面に捻じ伏せ、部屋に置かれていた大型のテーブルを掴んだかと思うとそのまま振り回してアンドレの背中に勢いよく叩き付ける。


 そしてアンドレを強引に引き起こすと、腹目がけて拳を打ち込んだ。


 「ゲボォォ!!??」


 吐しゃ物を勢いよく吐き出したアンドレは悶絶して床に蹲る。


 オリヴィエは自分の今みている光景が現実のものとは思えなかった。一人の人間が素手でドワーフを一方的に嬲るということがどれだけ異常なのかオリヴィエ自身はよく知っていた。


 単純な筋肉、骨格のどれを取っても人間とドワーフとでは作りが違う。大人が五人がかりで一人のドワーフに挑んだとしても、ドワーフの腕力の前では大人と子供以上の力の差があるので、一方的な展開になってしまう。二年前の反乱でも、ドワーフに立ち向かった多くの大人達がドワーフ達の獰猛なパワーの犠牲になった。


 ドワーフの腕力の恐ろしさは誰よりもオリヴィエは理解している。だからこそ応接室で起きている光景が信じられなかったのだ。


 もしや自分は夢でも見ているのではないかとオリヴィエは思った。自分のドワーフ族に対する怒りと憎悪が夢の中で具現化いるのではないか?


 ドワーフ達に対して思い知らせてやりたいという願望がそのまま夢に反映されているのではないか?


 それともこれは夢ではなく……。


 「嘘だ……、夢に決まってる……、こんなの……」


 騎士の圧倒的な暴力に蹂躙されたアンドレが地面に横たわりながら苦しそうに言う。


 「とりあえず俺達のことは噂だけでも耳にしていたみたいだな」


 「こんなことをして……、ただで済むと思っているのかぁ!?」


 目を血走らせたアンドレが騎士目がけて飛び掛かる。


 「ただで済まないのはお前等の方だ、醜い筋肉の塊共が」


 騎士は飛び掛かってきたアンドレの首を掴むとそのまま高く上げる。


 「ぐ、苦じい……」


 「この国の『掃除係』の仕事が甘いモンじゃないのは理解してるな? そういうわけだ、炭鉱で働いている村民を全員解放しろ」


 「い……や……だ……!」


 足をバタつかせながら必死に抵抗するアンドレだが、ドワーフすらも楽々と捻じ伏せる騎士の腕力の前では無力だった。


 「そう言うと思った」


 騎士はアンドレを持ったまま、部屋の窓の所に行くと、そのままアンドレを勢いよく窓から外に投げ捨てた。


 「う? うわぁぁぁぁぁ!!??」


 ここは屋敷の三階だ。勢いよく地面に叩き付けられたアンドレは地面でのたうち回っている。


 「信じられない……」


 部屋でのやりとりをただ茫然と見ているしかなかったオリヴィエ。今日の出来事は夢なのかと本気で信じたくなる。


 それ程までに非現実的なことが起こりすぎだ。


 「あの……」


 「何だ?」


 「貴方は……、一体……?」


 オリヴィエが尋ねると騎士は答える。


 「俺はフレデリック。フレデリック・ヴァルゲント。ロゼッタ王国特別治安維持遊撃騎士団『浄化騎士団(ベーレイニガンオルデン)』の団長だ」

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