幻想鏡
*人間道
わたしはなぜ生きているの
誰も答えない
誰もいないからね
頭のなかで早口な
あの子がいつまでも私の悪口言っているね
あの子のせいで言葉の羅列が一つ一つ刃物に見える
何でもわかってるような口調で
未完成の思いこみを語る
思い出したくないんだ
忘れたいんだ
人間がこんなに利己的なのを
汚い欲の固まりなのを
いやなんだ
死にたいんだ
私も人間だから
いつかこうなるんじゃないかと思って
あの子を悪く言って逃げているから
もう始まっているんだろうけど
*幻想鏡
君は何度も繰り返す
関係ないなどと
そんなこと言うなよ
私の大切な人を傷つけておきながら
愉快な話ね
君が見透かした心はすでに穴だらけ
君の狭い心に張り付いた幻想鏡では
自分以外のこと見えているのかい?
敷かれたレール 少ない選択肢
トラウマを自慢する人生で
君はつまらなくないのかい?
まぁそれこそ関係ない
私は目が悪いから
君の墜ちていく姿は見られないけれど
今眼鏡をかけてみたら見えるかしら
自己のみを信じ歩く孤独な君を
*辞書の世
たくさんの言葉
恐ろしいほどにたくさん
絶え間なく生み出される言葉は
人々を恐怖の底に落としていく
言葉があれば
傷つくのなんて当たり前じゃないか
だから世間は辞書に溢れているのだろうか
人を追いつめるために生まれた言葉
平気で使えるようになれたら
わたしもきっと人間の仲間入りなんだろう
人を傷つけたら自分も傷つくのに
平気で人を傷つけられるようになれば
わたしもあの人たちと仲間になるのだろう
言葉は 武器じゃない
人と関わるのに武器なんていらない
わたしはあの人と違う
あの人が好きだ
だから優しい言葉で
幻想鏡を壊してあげる