第4話
怖いよー、まじで怖いよー。
ユウター、お願いだから早く、起きてきてよー。
絶対、この人、アル中だよー。
でも・・・
両手で大事そうにマグカップを包み込んで、
オレの淹れた紅茶を、本当に美味しそうに飲んでくれてる。
アル中なのに。
ギラギラして、刺す様な視線だったのに、
今じゃほら、ビックリするくらい優しい色の瞳に変わった。
アル中なのかな?
「あのさー。」
「は、ハイ!」
ビクっ。
身体が無意識に硬直してしまう。
やっぱり、怖い。
「あー、オレの服、まだ乾かないかな?」
「今、みてきます!」
弾かれたように立ち上がって、洗濯機へと飛んでいった。
けど、無情。
乾燥終了まで1時間強。
今、取り出しても、着れるわけないし。
あと、1時間の辛抱、7時までの辛抱かよ。
一人じゃ、絶対、耐え切れない。
寝ているユウタの様子を見にいったら、その無防備な顔に段々と腹が立ってくる。
・・・チッ! ガスッ!!
『だっ!!いってなーぁ、何すんのよぉもー。』
気持ちよさげに惰眠をむさぼる、
このノーテンキヤローの空っぽの頭を思い切り蹴飛ばしてやった。
マジ、腹立ってきたし。
「いつまで寝てんだ、さっさと起きろよ。」
「何時ーー?」
「6時前」
ユウタは大きく伸びをして、『ブッ!』っと一発大きいオナラまで付けて。
あーあー、コレが女子に1番人気の真の姿、女子に見せたいよ、ホント。
「あの人は?」
「まだ居る。」
だらしなく胸元が開いた、ユウタのシャツの下、
褐色に焼けた肌が、白いシャツに際立っている。
いいな、その体。
「なんで?」
「服が乾いてないから。」
ユウタに向けてしまった視線に、なんだかちょっと気恥ずかしくなる。
バカから顔を背けるように部屋を出て、オレはリビングに戻った。
「すみません、服、あと1時間ぐらい掛かるみたいで。」
「別にいいよ、乾いてなくても。着て帰っちゃうから。」
そんなの、ダメにきまってる。
オレ的に、許せないし。
人道に反してる。
雨だって、まだ、嵐みたい。
風だって、ほら、ビュービューいってるのに。
「嵐みたいだな。」
「そ、そうですね。」
二人とも、窓ガラスに打ち付ける雨だれを見つめた。
その時・・・
『ぐ〜〜〜っ』
オレとハルキさんは、音のした方を同時に振り返った。
頭をかきながら腹を擦って、ニヤリと笑うユウタが立っていた。