ヘタレの起こした奇跡
脳筋辺境伯令嬢の追放を読んでから、こちらを読むのをおすすめします。
アクアマリンを追放した後の彼女の父親の話です。
娘であるアクアマリンが追放された。
いや、私が追放してしまった。
まだ産まれたばかりの娘を人質にとられた。
我が家に王家の者が紛れていたのだ。
当時妻の侍女で、助産師を務めたものだった。
私は娘を抱いてやることすら出来なかった。
原因は私だ。
私はヘタレだ。
よくそう言われる。
妻に。
息子に。
追放してしまった娘に。
「これで辺境伯ができるのか?」
と、言われたこともあった。
自覚はしている。
でも、私がヘタレであるが故に今回の事が起きた。
第二王子には、「娘を返して欲しければ言うことを聞け」
と、脅された。
妻に言えなかった。
言えるはず無かった。
だって、助産師を雇ったのは私だった。
娘は「病」ということにされた。
今は病院にいるのだと妻には説明した。
逆らえば娘の命はない。
それは、自分の死刑宣告より苦しいものだった。
今、アクアマリンを国外へと追放するために国境に向かっている。
いくら、アクアマリンが強いとはいえこんなことをしたのだ。
許してもらおうとは思ってもいない。
けれど、アクアマリンに辛い思いをさせてしまった。
私のせいで。
私の…せいで。
そう思うと、言葉が上手く言えなかった。
今、何を言っているかさえ分からなくなってきた。
まさか、人質を使ってまてまで、追放したいとおもっているなんて思ってもみなかった。
アレだって王族だ。
その辺は分前ているかと思っていた。
現在、王太子はおらず病弱な第一王子と健康な第二王子の王太子争いがおきている。
圧倒的に第二王子派の方が多い。
当然だ。
第一王子殿下には失礼だが、いつ死ぬか分からない王子より、健康な王子のほうが後継を残しやすい。
だから、この国の繁栄のためにも第二王子を押していたのにこのザマだ。
徹底的に第二王子を潰してやる。
私のお姫様たちをあんな目に合わせておいてタダで済むと思うなよ…!
この時私は第二王子に復讐することを決意した。
私はきずいていていなかった。
第二王子の方に気を取られすぎて。
娘が――
笑っていたことに。
☆
第二王子復讐にむけ、私はまず産まれたばかりの娘を取り返そうと思った。
アクアマリンには半年は生きていけそうなくらいの物資は渡した。
アクアマリンには悪いが人質に取られているほうを優先させてもらおう。
まず、噂を広めようと思う。
アクアマリンが追放されたのは冤罪で辺境伯はまだ産まれたばかりの娘を人質に取られていた。
と。
最初からおしゃべりさんに話させるのではなく、侍女長などの格式の高いものから。
それがおしゃべりさんに繋がって噂に信憑性が生まれる。
噂が広まれば国王の耳にも届くはず。
そうすれば、娘を人質に取っていることがわかるはずだ。
それに、この作戦には自信がある。
パーティに参加していたものの大半がこう思っていただろう。
こんな事で国外追放か。
なぜ、辺境伯は第二王子の肩を持つのか。
と、思っただろう。
そして、この噂を聞けば容易に信じるはずだ。
自分もそう感じていたから。
まず、侍女長に話をつけた。
快く受けてくれたが内心穏やかではかなったであろう。
アクアマリンはみんなに愛されていた。
無論、侍女長からも。
そうだ。
私には仲間がいる。
ひとりじゃない。
家族を集めなくては。
この事件の起きた理由を説明しなくては。
☆
「…。アクアマリンが国外追放された。」
あぁ。やっぱりダメだ。
こんなので、人質の事を話せるはずがな…
「知ってます!そんなこと!で?なぜ?何故起こったのです!父上!!」
長男で、あるアルフレートだった。
妹のことを心配しているのであろう。
そして、私のことを軽蔑しているのであろう。
なぜなら、あのパーティーに息子は参加していたのだ。
現場を見ていて、疑問が浮かんだだろう。
‘‘何故父上が第二王子の肩を持つのだ?なぜ、アクアマリンを守らないのか?’’
と。
あれを見てアルフレートは私を刺したくなっただろう。
…アルフレートは重度のシスコンだったのだ。
アクアマリンは鬱陶しいそうだったが。
「アクアちゃんは!?何処にいるのですか?お父様!アクアちゃんは?アクア…ちゃんは…?」
今度は長女のアルメリアだった。
…アルメリアもシスコンだ…。
なんでうちの子は…。
と、今はどうでもいい。
私は人質のこと、アクアマリンの追放理由などを洗いざらい話した。
… もちろん軽蔑の目でした…。
ずっと、沈黙だった妻が声を荒らげた。
「あなた!!!何をしているのです!助産師が王家の者だったですって?そんなのきずいておりました!娘が…アンリーナ(産まれたばかりの娘)が病弱ではないのは分かっていました!私たちを守るためだと…!でも!でも…!なぜなのです…!アンリーナも人質にされて、アクアマリンも国外追放にされて…。王家であろうと、喧嘩を売る他ありません!これだから、ヘタレ野郎は…。」
妻は泣いていた。
当然だろう。
泣かないはずない。
娘二人に二度と会えないかもしれないのだ。
やはり…私のせいだな…。
噂が上手くいくかは分からない。
でも、アクアマリンは確実に生きている。
なんとなく分かる。
あとは、結果を待つのみだ。
☆
結論から言うと――
大成功だった。
目論通り、というかそれ以上に噂は広まった。
なんと、国外まで広まったのだ。
まさか、ここまでとは思ってもみなかった。
そんな噂はもちろん国王まで伝わった。
そして、調査が入った。
結果は黒。
第二王子は娘を誘拐し、私を脅したことを素直に認めた。
別にこんなことは自分が国王になる上でなんにも関係ないとでも思ったのだろうか。
しかし、この事件をキッカケに第二王子派がどんどん第一王子派に寝返って行った。
無論、家も。
近い未来、第二王子派は消えるかもしれない。
元々第二王子は問題行動が多かった。
それに、第一王子の病は治ると、専門家は言ったという噂が広がっている。
このことはアクアマリンに届いただろうか。
最近、リーン王国の冒険者に‘‘アクア’’という名前の新人がいるという。
‘‘アクア’’はものすごく強く史上最速でCランクに昇格した期待の新人だとか。
今度、会いに行ってみよう。
もしかしたら、アクアマリンかもしれない。
そんなことを思いながらアンリーナを抱いて妻と笑っていた。
第二王子編も描きたいなー!




