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壱話

2033年6月22日

「主さま。ご飯のお時間ですよ。」

「はーい。」

「それと、御薬です。」

「わかってるよ。匙ちょうだい。」

「はい。どうぞ。」

「いただきます。」

 主さまは御薬を飲むとき渋い顔をする。しかし、御薬を飲むことを嫌がったことはない。他の子がいたとき、御薬を飲むのが嫌だと言って聞かない人が多く、苦労した記憶がある。主さまは優しいから、きっと僕を困らせないためにそうしているのだろう。

 でも、やはりおいしくはないらしい。飲んだ人に聞いたところ、臭いがきつく、舌に残るほろ苦さがあるそうだ。僕は主さまが見つかったことで御薬を飲む必要がなくなったため、御薬を飲んだことは一度もない。主さまは今回も御薬を口に入れた後、すぐにコップをつかみ、水を飲んで流し込んだ。

「・・・。ご馳走様。じゃあご飯食べよう。」

「はい。」

「いただきます。」

「・・・いただきます。」

 元々広間で食べていたご飯。今はすべて主さまと一緒に食べている。前に主さまが僕とご飯を食べたいと言って食堂へ来て駄々を捏ねたことがあった。食堂でのご飯は、お掃除の関係でそそっかしく、主さまがゆっくり食べることができないと判断され、主さまの要望で僕は主さまの部屋でご飯を食べることになった。おかげで食べるのが遅い僕は時間を気にせずにゆっくりとご飯を食べることができている。きっと、主さまの気遣いだったのだろう。

「君今日なんかやることあるの?」

「いえ、特にないです。」

「じゃ、折り紙しよう。花毬作り。」

「いいですよ。」

「やった。あ、ご馳走様。」

「早いですよ。僕まだ全然食べ終わってないです。」

「君はゆっくりでいいから。終わったら一緒に片しに行こう。」

「え、僕だけでいいですよ。」

「いーの。ほら、食べて食べて。」

 主さまはずいぶんと子供っぽいところがある。実際に七つなのだから当たり前かもしれない。楽しそうに押し入れの中から折り紙を取り出して、今日使う折り紙を決めているみたいだ。

 ようやく、量の多い朝食を食べきって主さまに声を掛ける。主さまは嬉しそうに自分のお盆を持って廊下に出た。きっといつもと違うことができてうれしいのだろう。後を追うようにして自分のお盆を持っていく。結局台所の場所が分からなかったようで、途中で主さまを台所へ案内する形になった。

「失礼します。お片付けに来ました。」

「はーい。って伊吹様!?」

「伊吹様。なぜこちらに?」

「ついてきたの。ご馳走様。」

「お片付けは衛の仕事ですのでなさらなくても大丈夫なのですよ。」

「お手伝いさせてってお願いしたの。だめだった?」

「いえいえ、滅相もない。」

「お手伝いありがとうございます。」

「あとお願いがあってね。夜ご飯にほっけが食べたい。」

「ほっけですか。わかりました。準備させていただきます。」

「ありがとう。早く行こう!」

「あ、はい。ご馳走様でした。待ってください!」

 主さまに手を引っ張られて急いで台所を後にした。ずいぶんと驚かせてしまった。主さまは楽しかったようでにこにことしている。お部屋についたところで主さまは声を上げて笑い出した。

「あーあ。びっくりしてたね。台所の人。」

「そうでしたね。」

「面白かった。今度から君についていこうかな。」

「驚かせてしまうのでほどほどにしましょうよ。」

「えー。まあいっか。折り紙しよ。のりってあったっけ?」

「貰ってきますね。」

「ありがと。」


現在の主さまの変化 特になし

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