第九章「神環崩壊編」
神に抗うと決めたその日から、世界は“異音”を発し始めた。
それはまるで、構造そのものが軋んでいるかのように。
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◇
神環中枢・第七階層。
目の前に立ちはだかるのは、《神格兵 イザナギ-03》。
人型ながら、感情も体温もない“神の代理装置”。
その剣は、斬れば命を奪うのではない。
魂の構造を“書き換える”。
「避けろ、ヨモツ!」
レンが叫び、雷光を放つ。
だが、神格兵の斬撃がそれを裂いた。
空間が反転する。
「……くっそ……こいつ、コード干渉じゃなくて、“現実”に攻撃してきやがる!」
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ヨモツは、神環殺し《アンチコード装甲》を展開。
抜刀と同時に、**“雷の式神”**が現れる。
それはスサノオの荒御魂から生まれた、雷神の分身。
「行け……《雷閃・壱式──導影》!」
稲妻が通路を焼き、神格兵の右腕を切断する。
だが、すぐに再生される。
「再構成コード……再起ノ宮自体が、こいつの修復支援してやがるのかよ!」
「こいつは、この施設と“直結してる”」
レンの声が震える。
「じゃあ、こいつを止めるには──」
「再起ノ宮そのものを、止めるしかない」
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◇
一方その頃。
カナメの意識は、神環コア層の深部で揺れていた。
眠らされたままの魂──アマテラスの光が、内からうずく。
『君は、光でなければならない』
機械的な音声が告げる。
『人類を導く“再起の陽”として、
最も理想的な神格は“あなた”であると、私たちは定義しました』
「……誰が、“なれ”って言ったのよ」
カナメの意識が目を覚ます。
冷たい光。
でも、その中心に、静かな“熱”があった。
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◇
カナメの手が、ゆっくりと動いた。
神格制御装置に、ひびが入る。
やがてそれは破裂し、神環コア層全体が赤い警報を鳴らした。
《アマテラスコード、制御不能》
《再起ノ宮 第三層:再構築不可》
《警告──全域に波及の可能性あり》
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◇
ヨモツの前に現れる、眩い光。
そこには、ボロボロになった装甲の中から、
白く光る衣と黄金の輪を纏ったカナメが立っていた。
「……遅くなった」
「お前……!」
カナメは微笑まない。ただ、真っ直ぐに言う。
「もう、私……“照らすだけの存在”じゃない」
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◇
「──じゃあ、やるか?」
「うん。一緒に」
ヨモツとカナメ、二人の力が交差する。
雷と光が混ざり合い、空間を焼き切る。
「《交雷照爆──神環断罪》!!」
最後の一撃が、神格兵を貫いた。
その瞬間、再起ノ宮の中枢が“崩れ”始める。
《崩壊指数上昇──再起ノ宮、自己消滅処理へ移行》
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◇
警報が鳴り響く中、レンが呟く。
「……これが、俺たちの“やり直し”か」
「違うよ」
ヨモツが言う。
「これが、“始まり”だ」
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➤ つづく




