第八章「神殺し戦線」
これは、神になることを拒んだ者たちが、
神のシステムに“戦争”を仕掛けた記録である。
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午前6時、再起ノ宮の中枢端末ルーム。
メインディスプレイから、静かに“ひとつの名前”が削除された。
《五十鈴カナメ──転送完了》
《神格適合度:58.9%──不安定》
《保管先:神環コア 第三層》
それは、“生きたままコード保存”を意味する。
肉体も魂も意識も、そのまま“封じられた”。
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◇
「……なんでだよ」
中枢室を破り、データコンソールを睨みつけたヨモツの声は、怒りと絶望に満ちていた。
目の前にあるのは、神の論理で組まれた巨大な転送スクリプト。
カナメが“神になりきれなかった”という理由で、
実験体として保存された。
「それが、神になるってことかよ……」
拳を握ったその手から、雷が漏れた。
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◇
「ヨモツ、お前──」
レンが駆けつける。
しかし、彼はもう知っていた。カナメがいないことも、その理由も。
「神格適合率が基準以下の者は、順に“コア送り”だ。
適合者名簿を見ろ。削除対象は、あと17人」
「……これ以上、誰も連れてかせねぇ」
ヨモツの目が、鋭く光る。
レンが一瞬たじろぐ。
「俺は、神になりたくてここに来たわけじゃない。
けど──“誰かが勝手に決めた神の基準”で、
誰かが消されるのを黙って見てるのは、もっと違う」
その言葉に、レンは目を伏せた。
そして、ゆっくりと頷いた。
「……お前に、ひとつ渡したいものがある」
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◇
レンが持ち出してきたのは、旧データ層の“封印スーツ”──
《神環殺し(アンチコード)装甲》
「昔、一度だけ使われかけた装備だ。
神格コードを干渉・拒絶する“対神兵装”。
本来は、“暴走神格適合者”の処理に使われるはずだったらしい」
「皮肉なもんだな。
神になるための兵器が、神をぶっ壊すために使われるとは」
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◇
その夜。
再起ノ宮の地下通路、
“神環コア層”へ繋がる最下階段に、3人の影が揃った。
天海ヨモツ。
大伴レン。
そして、拒絶された名前の者──第零層で出会った“名無し”。
「お前ら、何を壊す気だ?」
「決まってんだろ」
ヨモツが刀を抜く。
《なぎつは》の刀身に、コードではない“現実の雷”が走る。
「この神環ってやつの、“絶対”って言葉だよ」
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◇
一歩踏み出す。
その瞬間、神格センサーが作動。
《不適合コード接近──警戒レベル:S》
《神環防衛装置 起動──神格兵《イザナギ-03》、展開》
巨大な神装甲兵が通路を塞ぐ。
それは人の姿をしていながら、顔に感情はなかった。
動き出す瞬間、光がすべての色を奪う。
「来いよ、“完成された神”ってやつ──」
ヨモツは叫ぶ。
「俺の雷で、ぶち壊してやる」
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➤ つづく




