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第八章「神殺し戦線」

これは、神になることを拒んだ者たちが、

 神のシステムに“戦争”を仕掛けた記録である。




 午前6時、再起ノ宮の中枢端末ルーム。

 メインディスプレイから、静かに“ひとつの名前”が削除された。


《五十鈴カナメ──転送完了》

《神格適合度:58.9%──不安定》

《保管先:神環コア 第三層》


 それは、“生きたままコード保存”を意味する。

 肉体も魂も意識も、そのまま“封じられた”。




「……なんでだよ」


 中枢室を破り、データコンソールを睨みつけたヨモツの声は、怒りと絶望に満ちていた。


 目の前にあるのは、神の論理で組まれた巨大な転送スクリプト。


 カナメが“神になりきれなかった”という理由で、

 実験体として保存された。


「それが、神になるってことかよ……」


 拳を握ったその手から、雷が漏れた。




「ヨモツ、お前──」


 レンが駆けつける。

 しかし、彼はもう知っていた。カナメがいないことも、その理由も。


「神格適合率が基準以下の者は、順に“コア送り”だ。

 適合者名簿を見ろ。削除対象は、あと17人」


「……これ以上、誰も連れてかせねぇ」


 ヨモツの目が、鋭く光る。


 レンが一瞬たじろぐ。


「俺は、神になりたくてここに来たわけじゃない。

 けど──“誰かが勝手に決めた神の基準”で、

 誰かが消されるのを黙って見てるのは、もっと違う」


 その言葉に、レンは目を伏せた。

 そして、ゆっくりと頷いた。


「……お前に、ひとつ渡したいものがある」




 レンが持ち出してきたのは、旧データ層の“封印スーツ”──

 《神環殺し(アンチコード)装甲》


「昔、一度だけ使われかけた装備だ。

 神格コードを干渉・拒絶する“対神兵装”。

 本来は、“暴走神格適合者”の処理に使われるはずだったらしい」


「皮肉なもんだな。

 神になるための兵器が、神をぶっ壊すために使われるとは」




 その夜。


 再起ノ宮の地下通路、

 “神環コア層”へ繋がる最下階段に、3人の影が揃った。


 天海ヨモツ。

 大伴レン。

 そして、拒絶された名前の者──第零層で出会った“名無し”。


「お前ら、何を壊す気だ?」


「決まってんだろ」


 ヨモツが刀を抜く。

 《なぎつは》の刀身に、コードではない“現実の雷”が走る。


「この神環ってやつの、“絶対”って言葉だよ」




 一歩踏み出す。

 その瞬間、神格センサーが作動。


《不適合コード接近──警戒レベル:S》

《神環防衛装置 起動──神格兵《イザナギ-03》、展開》


 巨大な神装甲兵が通路を塞ぐ。


 それは人の姿をしていながら、顔に感情はなかった。

 動き出す瞬間、光がすべての色を奪う。


「来いよ、“完成された神”ってやつ──」


 ヨモツは叫ぶ。


「俺の雷で、ぶち壊してやる」



➤ つづく


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