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第四章「外部侵食者《シビラント》」

昼。再起ノ宮、南エリア。

 その訓練場の外れで、小規模な爆発が起きた。


 煙。雷。崩れる外壁。


 けれどそれは、訓練ではなかった。




「なあ、カナメ……これ、やばくね?」


「コード反応が“人間型”じゃない。侵入体だわ」


二人が立つのは、南区の監視塔。

突如、周囲の結界が軋み、空間にヒビが入る。


その裂け目から、**黒い粘膜のような“何か”がにじみ出てきた。


一瞬、空気が重くなる。


「……気持ち悪っ」


ヨモツが呟いた瞬間、その“影”が跳んだ。

人の形を模した粘体──だが、顔がない。腕が複数。足はなかった。


その存在は、空中にコード文字のような“記号”を走らせながら、加速度的に膨張した。




《シビラント──コード捕食体(Code Predator)》

《任務:人類転生体の魂コードを破壊・吸収せよ》


それは、“転生者の魂”そのものをエネルギー源として食う外宇宙生命体。

神話やコードなど通じない、“物理”でも“精神”でもない侵食存在。


再起ノ宮の監視が破られた。




「アレ、ヤベェぞ。

 ……オレの雷が通らねえ。神格コードが食われる……!」


レンの目に、恐怖が走った。


彼の技──タケミカヅチの神雷が、シビラントの体に触れた瞬間、

逆に“雷属性の神コード”だけが吸収されていた。


「……マジかよ。能力を“喰われる”?!」


ヨモツも応戦する。


「嵐神、展開!」


スサノオコードが爆発的に放出され、なぎつはが雷光を帯びる。


斬る──


が、斬った感触がない。

刀身が、影の粘膜に“ズブズブ”と沈み込み、コードそのものが溶かされていく。




「ッ……ぐ、うぁあああ!!」


コード過負荷。

ヨモツの視界が赤に染まる。


その隙をついて、シビラントの触手が、ある人物に襲いかかった。


「──え……?」


その子は、まだ転生して間もない新人だった。

名前も、知らない。

けれど、彼女の魂コードが“引きちぎられる”瞬間を、ヨモツは確かに見た。


叫び声も出ない。

少女の身体が、砂のように“崩れていく”。


──魂ごと、消えた。




目の前で、人が消えた。


神を持った、同じ“死者”が。何の抵抗もなく。


怒りでも、恐怖でもなかった。

ただ、空虚だった。


「……なんだよ、これ」


「俺たちは……神ですらないのかよ」




その瞬間、五十鈴カナメが飛び込んできた。


彼女の手には、太陽を象った装甲。

アマテラスコードが、全身から光を放つ。


――焼き払え。

存在そのものを、認識できないように。


「《天照反転てんしょうはんてん》──発動」


カナメの放った光線が、影の侵食体を包み込んだ。


その光は、物理ではなく、“記憶”を焼いた。


──シビラントは、一時的に消滅した。




戦闘は終わった。


だが、残ったのは虚無だった。


人は死ぬ。

神になっても、守れない。


ヨモツは、崩れかけた訓練場の片隅にしゃがみ込む。

拳が、微かに震えていた。


「……オレは、何のために生き返ったんだよ」



➤ つづく


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