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第三章「神々の学級裁判」

翌日、教室の空気は、妙に重かった。


 机の並びは和式。畳の上に木製の長机。

 そこに座る“死者たち”の表情は、いずれも無言で張り詰めていた。


「……マジで、あの暴走……ヤバかったろ」


「神格適合者って、ああいう奴も含まれてるのかよ……」


「てか、スサノオって“破壊神”だろ? 不吉すぎんだよ……」


 聞こえる声は、すべてヨモツへの警戒だった。




 ヨモツは、教室の一番後ろに座っていた。


 周囲の視線。

 壁に貼られた「適合者リスト」には、**“スサノオ ─ 危険度A”**の赤い文字。


(……チッ)


 舌打ちしたくなるのを抑える。

 実際、昨夜の暴走は抑えきれなかった。


 剣を振った瞬間、意識が途切れ、気づいたときには演習場が一部崩壊していた。


「自覚はあるのか、天海ヨモツ」


 響いた声は、冷たく硬質だった。


 現れたのは、生徒会のような存在=“八神審議会”。

 神格適合者の中でも、高い精神制御力と戦績を持つ者だけが所属できる、内部組織。


 その筆頭が、大伴レン──タケミカヅチのコードを継いだ、雷の使い手。

 ヨモツのかつての親友だった。




【レン】「暴走したお前のせいで、演習場は封鎖、再起ノ宮の管理コードも一時停止。

 “神”を宿す覚悟もないくせに、チカラだけ持ってんじゃねえよ」


【ヨモツ】「……ああ? こっちは好きで宿されたわけじゃねぇ」


【レン】「言い訳は聞いてねえ。

 オレたちは“人類の代表”として、ここで魂を進化させる義務があるんだ。

 暴走する奴は──いらねえ」


 教室にざわめきが広がる。


「処分すべきだ」

「せめて、一時的に拘束すべき」

「コードの剥奪も……」


 神々の学級裁判が、始まった。




 だがその中で、一人だけ、真っ直ぐな声を放った者がいた。


「待ってください」


 それは――五十鈴カナメだった。


「彼は“抑えた”。本当に暴走したなら、死人が出ていたはず」


 ヨモツが目を見開く。

 意外だった。誰よりも冷たいと思っていた彼女が、擁護するとは。


「コードは“自我”を試すもの。制御できるかどうかは、これからよ。

 それを試す前に、切り捨てるのは――ただの恐怖でしょ?」


 静かな教室に、言葉が刺さる。


【レン】「……カナメ、お前、アイツの味方すんのか」


【カナメ】「味方じゃない。ただ、見てるだけ。

 彼が壊すのか、変えるのか。見届ける価値はあると思うから」




 結局、ヨモツは「条件付き」で放免された。

•神格使用制限付きの監視対象

•再構成訓練プログラムへの強制参加

•今後の暴走時は“魂コード削除”の可能性あり


 まるで仮釈放された囚人のようだった。




 その夜、再起ノ宮の最上階。


 誰もいないはずの“観測室”で、異変が起きていた。


 モニターに浮かぶ「スサノオコード」の波形に、ノイズが混じる。

 そこに現れた影は、人ではなかった。


 人の姿を模した何か。

 その顔には、目も口もない。ただ、“記号”が刻まれている。


《観測開始。文明捕食体シビラント、起動準備完了》

《再起ノ宮の“神格体”──適合率99%以上、捕食価値あり》


 記録されることのない、“神ならざるモノ”の接近が始まっていた。



➤ つづく

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