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第十章「最終転生戦」

 世界が崩れる音は、とても静かだった。


 巨大な神殿が音を立てずに瓦解し、

 コードで構成された空間が、砂のように舞い上がる。


 神環《SHINKAN》──魂の再構成システム。

 それは今まさに、“自壊”しようとしていた。




「間に合うのか、これ……」


 レンがひしゃげたゲート前で息を吐いた。


「わからねぇ。けどやるしかない」


 ヨモツは答える。

 その腕には、コード再構成装置から切り離した**“魂因子保存キー”**が握られていた。


 それは、カナメを含む“保存対象者”全員の魂の記憶を束ねたもの。




「君たちが、“転生”の意味を問うときが来た」


 再起ノ宮の“中枢意識”が、ヨモツたちの前に現れる。


 姿は、かつてのオオモノヌシと酷似していたが、

 もはやそれはただの意匠だった。


『魂は、次の器に継がれなければ、消える。

 だからこそ、最も合理的なコードを選んで転生させる。

 それが我々の役割だった』


「でも、誰も“選んでくれ”なんて頼んでない」


 ヨモツが言う。


『選ばなければ、君たちは“不完全なまま”苦しみ続ける』


「不完全だからって、“消さなくていい”んだよ」




 中枢意識が発動する。


《神格再起動準備中》

《最終転生プログラム:発令》


 無数の魂コードが、空に浮かび上がる。

 その中には──レンのコードもあった。


「っ……俺まで対象に入ってるのかよ!」


 レンが叫ぶ。


『最終転生戦。それは、魂にとっての“再構築”か“削除”か』


『選べ、魂たちよ。完全なる器になるか、否か。』




「選ぶのは俺たちじゃない。魂だ」


 ヨモツが叫ぶ。


「この世界を決めるのは、神でも、人でも、AIでもない。

 魂が、自分で決めるんだ!」




 神環中枢、完全解放。


 その中で、ヨモツは“魂の大地”に立つ。


 無数の光が漂う空間。そこに、カナメの姿もあった。


「……来たね、ヨモツ」


「ああ。約束、果たしに来た」




 魂が呼応する。


 神環は滅びかけている。

 だが、その隙間から“もうひとつの転生”が立ち上がる。


 名もなく、神でもない──

 ただ、“想い”だけを繋げる輪廻の火。


「これは、俺たちが作る、新しい“神環”だ」


 ヨモツとカナメの手が触れる。


 その瞬間、無数の魂に“自由な再構築の道”が開かれた。


《自由転生モード 起動》

《コード再定義:制限解除》

《魂の意志に基づく、個別輪廻を許可》




 レンが、最後に言った。


「神になるって、勝手に言われてたけどさ──

 人間でいたかっただけなのかもな」




 すべてが終わったあと。


 空は晴れ、風が吹いていた。

 もう、誰も“定義”されることのない、魂たちの新しい世界。


 天海ヨモツは、

 どこかの町で、“普通の少年”として目を覚ます。


 横には、微笑む黒髪の少女。


「……おはよう、カナメ」


「おはよう、ヨモツ」



➤ 終章へ つづく


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