31 魔界を穿つ弾丸
北部の廃村は、ひどい有様だった。
魔人たちの村が、異界の者たちによって無惨に蹂躙されていた。
家々は焼け落ち、焦げた木材の臭いが鼻を突く。
血の臭いも混ざり合い、空気は生温い重さを持って肌にまとわりついてきた。
俺は黒炎の霊刃を軽く握り、慎重に村の中心へと歩を進めた。
地面には死骸が散乱している。魔人たちの肉体には、穴がいくつも空いていた。
「何かおかしい」
俺は膝をついて、近くの魔人の遺体に手を伸ばした。
固まった血を指でなぞりながら、胸に空いた傷を観察する。
傷口は丸く、綺麗に貫通している。
力強く突かれた跡とは違う。
「魔法か?」
神威の低い声が頭の中に響く。
「いや、魔法の痕跡はない…物理的な攻撃だろうな。」
俺は目を細め、さらに周囲を見回した。
壁には無数の穴が開き、何かが高速で通り抜けたような痕がある。
近くに転がる光る金属片が目に留まった。
俺はそれを拾い上げ、じっと見つめる。
「これは…銃弾?」
脳裏に浮かぶのは、地球で見た映像の断片だ。
金属の筒から飛び出す高速の弾丸、標的を貫通し、力尽きたように地面に転がる弾丸。
「地球の武器…異界って地球なのか?少なくとも地球の武器を使う連中だってのは確かだな。」
俺の呟きに、周囲の魔人たちが不安そうに顔を見合わせる。
「修羅様、それは…何なのですか?」
「金属の弾丸だ。」
俺は無造作に銃弾を空中に投げてキャッチしながら説明した。
「魔法じゃない。これに対抗するには、魔法結界じゃ無意味だ。物理攻撃に対処する防御結界が必要だ。」
魔人たちは呆然としながらも、俺の言葉に耳を傾ける。
「そんなものが…」
「考えろ。対策を練らないと、ただやられるだけだ。」
俺の声に、魔人たちの緊張がさらに高まる。
俺は手に持った銃弾をもう一度見つめ、静かに笑みを浮かべた。
「面白い」
その時、風がざわりと動いた。
焼け跡の間から、ひときわ大きな魔獣の遺骸が転がっているのが目に入った。
その近くには、奇妙な形の機械の破片が散らばっていた。
俺は破片を拾い上げ、じっと観察した。
俺は霊刃を腰に戻し、魔人たちを振り返った。
「銃が相手か…軍隊なら…このままじゃ勝てないが、勝つ方法はいくらでもあるだろう」
魔人たちは不安と希望が混じる表情で頷き、俺の指導を仰ぐ。
その瞬間、俺の中で新たな戦いへの期待が燃え上がった。
「地球の武器だろうと何だろうと、対処してやる」
俺は静かに村を後にし、次の戦いへの準備を進めた。